25年もの永き付き合いとなる1980年式FXGW ワイドグライドを愛機とする飯塚 記一。純正の通称「火の玉タンク」は同じく純正のソリッドな5ガロンタンクに換装し、エイプバーにホットドックのダブルシート、社外のテーパーマフラー、S&S製ティアドロップエアクリーナーに交換されている以外は純正スタイルを維持したワイドグライドである。
「火の玉タンクは大事に保管しています。特に純正スタイルをリスペクトしているというわけではないんですが、このカタチが好きなんですよね、きっと。ウイリーGの名作ですから(笑)」
ワイドグライドの以前は1989年式のスプリンガーソフテイル、さらに10代のころからSRやXL250などの国産モデルを乗り継ぎ、40年以上もバイクに乗り続ける生粋のモーターヘッドである。
「二十歳のときに限定解除したんですが、クールスに憧れていたこともありハーレーを意識するようになったんです。アメリカンロックなんかにもすごく影響を受けています」
そんな氏の生業は、1913年にニューヨークで創業されたライダースジャケットの代名詞ともいえるSchottでのディレクター職であったが、最近その30年以上ものキャリアに終止符を打ち、現在は次なるプロジェクトに向けて準備中だという。
「Schottではアメリカとの契約関連の業務や直営店のディレクションなども手掛けていました。現在は今までの経験をいかしたビンテージレザーショップのオープンを企画中です。東京近郊で2023年にはオープンに漕ぎ着けたいと考えています。レザージャケットを中心に、アメリカンカルチャーを発信するこじんまりとしたショップを目指しています。もう40年、革ジャンとバイクのある生活を送っていますね。今日履いてるウエスコのジョブマスターは、たしか1995年くらいに手に入れたものです。これも30年近い付き合いになりましたね」
実はこのジョブマスターについて忘れられないエピソードがあるとのことで、さらに詳しく伺った。
「2021年のことです。アメリカにレザージャケットの買い付けに行っていたとき、向こうにショベルのローライダーが置いてあるのですが、それに乗って6人ほどでデスバレーをツーリングしていたんです。そこで峠を走っているときに対向車と衝突し、大ケガを負いました。左大腿骨と足首を骨折したのですが、このジョブマスターを履いていたおかげで足部は足首の骨折だけで済みました。ウエスコは決してファッションブーツなどではなく、ヘビーデューティーなライディングギアだと実感しました。このジョブマスターには体を助けられた思い出の一足です。ウエスコはSchottと同じでアメリカンクラフツマンシップが宿った本物のワークブーツで、メイドインUSAに囲まれて過ごしてきた自分の人生の中では相棒のような存在です。今までも、そしてこれからも……」