台風の影響の残る日本列島全国からカスタムマニアが集結
今年のニューオーダーチョッパーショーは観客動員記録を更新
８月後半に太平洋沖のマリアナ諸島で発生し、日本の南をジョギング並みのゆっくりとしたスピードで進み、各地に甚大な被害をもたらせた台風10号（サンサン）の記憶も新しいのだが、そんな影響が強く残る2024年9月1日に兵庫県神戸市の神戸国際展示場3号館で開催されたニューオーダーチョッパーショー2024。
この週は東海道新幹線も3日以上、計画運休が発表され、高速道路各地でも豪雨による通行止めが発生し、ショー自体の開催も危ぶまれたのだが、フタを開けてみれば当日の神戸は晴天となり、会場は大盛況。肌感覚でもかなりの動員が予想されたのだが、主催者によるとこの日の来場者数は4,000名オーバーとのこと。昨年も観客数の記録を更新した同ショーであるが、今年は更なる盛り上がりを見せるに至った。
そのショーの中で全国津々浦々からカスタムバイクがエントリーし、出展されたのだが、九州や四国、中国地方や関東方面の参加者は道路交通情報と雨雲レーダーを睨めつつ、ショーへの経路を決め、それぞれが大変な状況だったのだが、当日の会場の様子は疲れも忘れさせるような盛り上がりぶり。多くの人の苦労が報われたのではないかと思う。
また苦労が報われるといえば、このニューオーダーチョッパーショーは昨年より厳格な基準のジャッジペーパーを導入し、参加ビルダーが互いに車両を審査するという『ビルダーズチョイス』という方式がとられ、明確に順位を決定するコンペティションという側面を持っているのだが、今年は埼玉県のインフィニティがベスト・オブ・ショーを受賞。2位のフェイテックは東京、3位のカルガ商店が山梨からの参加となったのだが、悪天候の中、高速道路を大きく迂回し、遠方から神戸に辿り着いた甲斐もあった結果となった。こうした厳格なジャッジペーパーの導入は、忖度抜きに新たなショップが評価される側面を持っているゆえ、このまま継続していただきたいところだ。
もちろん、技術とアイデア、オリジナリティを駆使すれば、ベテランだろうが新ショップだろうが、正しく評価されるのが真っ当なコンペティションというものだが、こうした動きはきっと更なるショーの盛り上がりにつながるハズ。ここ数年は多くのビルダーが、年末に開催される日本最大のアメリカン・カスタムカルチャーの祭典であるYOKOHAMA HOTROD CUSTOM SHOWにエントリーしたカスタムを他のショーでも出展し、全国をサーキットするという流れとなっているが、来年20周年を迎えるニューオーダーチョッパーショーも入魂のカスタムを披露する場所として、きっと相応しいものになるだろう。ちなみに来年はすでに8月31日（日）で同会場での開催が決定しているニューオーダーチョッパーショーだが、ますますの盛り上がりに期待するばかりだ。
ここからは速報として写真と共にニューオーダーチョッパーショーの会場の様子やアワードバイクを紹介させていただくのだが、ぜひ来年の傾向と対策に役立ててみて欲しい。
会場となった神戸国際展示場3号館はご覧のような盛況ぶり。例年は午前中に観客が集中し、午後はゆったりとしたムードとなるニューオーダーだが、今年はショー閉会まで会場の喧騒が続くこととなった。
ここからはアワード車両を中心にショーの様子を紹介していきたいが、まず最初はベスト・オブ・チョッパーとなったインフィニティのマシン。驚くほどにスリムなフォルムの中にクラシカルな要素とハイテックな装備が混在する力作である。ちなみにこのマシンはバイブズピックも獲得。
ショベルヘッドをベースに様々な技巧が凝らされたこのマシン。20年代調の純正レタリングが施されたタンクはワンオフで製作したもので容量は2.5リットルほどとのことだが、MESINGERレーサーシート下にサブタンクを備え、容量を確保。ガソリンは電磁ポンプでキャブに送り込まれる構造となっている。クラシカルなスタイルの中にハイテクな装備が散りばめられた秀作だ。
厳格なるジャッジペーパーによる投票の結果、2位を獲得したのは東京からエントリーを果たしたフェイテック。ショーの会場映えする鮮やかなカラーリングと秀逸なメタルワークの技術が光る。このマシンはクラブハーレーピックも獲得。
モトガジェッド製メーターが埋め込まれたタンクやフィンが刻まれたオイルタンクなど外装はすべてフェイテックによるワンオフ。シートはアトリエチェリー製。2インチオープンとなったプライマリーまわりはハイテックとクラシカルなムードが混在する。
ビルダーズチョイスで3位を獲得したのは山梨からエントリーのカルガ商店。パンヘッドをベースに右オフセットで配置されたヘッドライトやシートメタルの技術を分かりやすく伝えるテールカウルなどで個性が演出されている。
バージンハーレーピックを獲得したのは熊本からエントリーのローカルサイクルスが製作したEVOスポーツベースのチョッパー。タンクのマウント位置やマフラーの造形などシンプルな中にも技巧とセンスが光る。このマシンはカスタムフロントピックも獲得。
バージンハーレーピックを受賞したビルダーの永池さん。熊本をはじめ、今回の台風10号で九州地方は甚大な被害を受けたと思うが、荒天の中でも搬入車を走らせ、出展。苦労が報われる結果となった。おめでとうございます！
チョッパージャーナルピックは京都からエントリーしたホットチョップのアーリーショベルチョッパー。ホットロッドショーやジョインツにもエントリーし、ジョインツではベスト・ショベルを獲得したこの車両だが、圧倒的な技巧の数々が受賞の理由。エンジンやレバーにまで施された彫金の美しさには脱帽だ。
イビサモトファクトリーのローライダーSTはベスト・クラブスタイルとウィズハーレーピックを獲得。外装をカーボンに変更し、ハイテックなムードが高められている。
旧車がアワードの対象となる『グレートヴィンテージ』は山口県からエントリーのバドロータスによるナックルチョッパーが受賞。今回の台風により道中が通行止め、会場入りまでかなり苦労したとのことだが、それも報われる結果となった。
ショースポンサーのスリーマイルズからのピックを受賞したのは地元、神戸からエントリーされたシウンクラフトワークスの1952年式パンヘッドベースのチョッパー。相変わらず丁寧な仕事ぶりが伺える佇まいを見せる。
『ザ・ロングフォーク』とプライマリーマガジンピックを獲得したのは滋賀県からエントリーの２%er。ヤマハSRにこだわり、カスタムはもちろんオリジナルパーツを数多くリリースする同店は東南アジアのカスタムシーンでも絶大な人気を誇る。
ヤンシーマガジンからのピックを獲得したのは東京からエントリーを果たしたウラウズモーターサイクル。アーリーショベルとスイングアームフレームという純正セットアップの中で巧く個性を演出する。
『スーパーVツイン』アワードは兵庫県加古川市からエントリーのラッキーズサイクルサプライによるFLTRミルウォーキーエイト。135キュービックインチを誇るモンスターマシンである。
『クレイジーバガー』アワードを獲得したのはバーディーバガースタイルのTR。大径ホイールとド派手なペイントワーク、各部ディテールも圧巻である。
ショーのエントラントゲート前で極上のチョッパーを披露するのは京都のラックモーターサイクル。海外からも高い注目を集める人気ショップである。
世界から注目を集めるカスタムワークスゾンはショベルチョッパーとMATTモーターサイクルのメーカーカスタムをニューオーダーで披露。クオリティの高さは、やはりワールドクラスである。
地元、神戸のエースモーターサイクルはシンプルなトライアンフカスタムを披露。さり気なさの中にセンスが光る。
シンプルだからこそ絶妙なバランスが際立つショベルチョッパーを披露するのは福岡のMC CATS。荒天の中、神戸までエントリーする情熱には脱帽デス。
得意のクラブスタイルのみならずオールドなパンチョッパーも披露したお馴染みのRTB。複数台のエントリーと華やかなショーガールでイベントを盛り上げます。
岡山県倉敷市からエントリーのフラッグスタッフは４速フレームのショベルチョッパーを披露。リジッドならずともシンプルかつ美しいスタイルを作れる好例だ。
福岡の北九州から出展のインディアンオレンジは店主、小田さんの愛車であるナックルチョッパーを披露。ちなみにこのマシンは以前のドラッグスタイルをリメイクしたとのことだが、こうした自由度もチョッパーの魅力だろう。
世界的評価を受ける広島の平和モーターサイクルはBMWベースのカスタムを披露。同店ならではの個性を感じるフィニッシュは流石だ。
大阪のリボルトは美しいフィニッシュのショベルチョッパーでエントリー。同店のYouTubeチャンネルでも紹介されているが、オーナーは女性とのこと。確かに車両は乗り手のパーソナリティが投影されているかのような佇まいを見せる。
4速フレームを素材にしたチョッパーに定評のある新進気鋭のショップ、グルーヴワークスは、やはりショベルチョッパーでニューオーダーに参加。シンプルさの中に個性が光る。
四国、愛媛からのエントリーを果たしたテイクルートによるEVOソフテイルチョッパー。こうした素材選びからも走りをスポイルしないショップの姿勢が垣間見える。
国産車ベースのチョッパーにこだわる名古屋の七伍屋輪業は得意のヤマハSRを披露。ハーレーに負けず劣らない存在感とクオリティを見せつける。
福島の老舗ショップ、Vモンスターも遠方からのエントリー組。サンダンス製ナックルルック・ロッカーカバーを装着するチョッパーを披露する。
大阪のモーターサイクルフォースは新作のロングフォークチョッパーでエントリー。あえてフロントブレーキレスとしない部分に同店の姿勢が滲み出る。
鳥取のDクラブはパウダーコートのサンプルと共にEVOソフテイルチョッパーを展示。こうしたディスプレイを眺めるのもショーの醍醐味の一つだろう。
埼玉からエントリーの車坂下モトサイクルは正規販売店を務めるサンダーモーターサイクルを展示。こうしたプロモーションとしての場もカスタムショーの存在意義だろう。
名古屋のプライドロックは美しいチョッパーと共に物販も展開。こうした場でのショッピングも観客にとって楽しみの一つだ。
愛媛のオカブーモーターサイクルはスポーツスターにXR1200エンジンをスワップした一台を披露。ダウンドラフトEFIの処理に苦心の跡が窺える。
滋賀県からエントリーのハマンズは昨年のホットロッドショーでスポットライトアワードを獲得したマシンを展示。ペイントは昨年に逝去したカミカゼピンストライピング、別所氏によるもの。
おそらく今回のニューオーダーで最遠方からのエントリーであろうショップが山形のスピードモーターサイクル。味わい深い雰囲気のアーリーショベルチョッパーを披露する。
愛媛県からエントリーのナッツモーターサイクルはTCとショベルを展示し、ショップの幅広い守備範囲を示す。こちらのショベルはシンプルさの中にディテールワークの技巧が光る。
モトディレクトのFXRはシェイキンスピードグラフィックスの清水氏がピックするベストペイントを受賞。確かに見事なフィニッシュを見せつける。
京都のグレーシアはクロームが眩いチョッパーをジョインツに引き続き展示。ノーペイントな分、随所に施された意匠の数々を分かりやすく示す。
福島県会津からエントリーのロッドスターはニューオーダーらしくロングチョッパーを展示。台風の影響を受けたゆえ、搬入日は北陸道経由で神戸入りしたとのこと。
物販ブースでのショピングも観客にとって重要な楽しみの一つ。台風の影響を受けながらも多くのショップが軒を連ね、訪れる人々を楽しませた。
入場ゲート近くでは今秋公開予定の映画、バイクライダースもブースを協賛。どんな内容となるか楽しみに待つマニアも多いだろう。
ラストはお馴染みの上条早樹ロープアートショーのステージングで訪れた観客を楽しませたニューオーダーチョッパーショー。オープニングからショーの終わりまで様々なプログラムで観客を飽きさせない趣向が凝らされる。
ニューオーダーといえばロウブロウアーティストたちが作品を展示し、オークションが開催されるバーバリアンサーカスも風物詩。これも人気のプログラムだ。
会場外にはケータリングトラックが並ぶ、プチ・フードフェス的な楽しみもニューオーダーチョッパーショーの楽しみの一つ。これも毎年恒例の光景だろう。
来年、2025年8月31日に神戸国際展示場で開催決定のニューオーダーチョッパーショーは『メカニカルをテーマやモチーフとしたオリジナル創造物の展示、販売イベント』という『メカマニギアギャラリー』と同時開催が決定。20周年と併せて盛り上がりは必至だ。
これまで19年間、神戸ニューオーダーチョッパーショーを牽引してきた主催者の清水重貴氏。「台風の影響で今回はギリギリまで開催するかどうか悩んだのですが、出展者の皆さんの声と当日の予報を信じて開催することが出来ました。大変な中、神戸まで足を運んでくださったすべての皆さんに感謝です」とのこと。もちろん参加する側として来年の盛り上がりにも期待します。
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