6月、今年もフランス・ビアリッツで「Wheels and Waves／ホイールス・アンド・ウェーブス(以下WW)」が開催された。当バージンハーレーでは、2015年と2017年にレポートを展開させていただいた。COVID-19の蔓延で2020年と2021年の開催は中止されたが、その後もイベント規模の拡大と比例するように、欧州のカスタムバイクシーンにおける影響力を高め、今年は開催12回目を迎えた。
WWは、ハーレーダビッドソン(以下H-D)と距離を置くことで、その存在感を高めてきた。欧州には巨大なH-Dコミュニティがあり、ユーロフェスティバルやヨーロピアンバイクラリーなどの歴史ある巨大なイベントも存在する。ブランド創立120周年のアニバーサリーを迎えた今年、ハンガリー・ブダペストで開催された記念イベントには10万人が参加し、パレードには7000台のH-Dが連なった。しかしWWは、その成熟した欧州H-Dコミュニティとは一線を画した、日本車や欧州車を中心にコミュニティを造り上げ、その盛り上がりに目をつけた2輪車メーカーが、ネオクラシックと呼ばれるレトロなスタイリングを持つ新しいモデルカテゴリーのプロモーションの場としてWWを活用。BMW R nineTやヤマハXSRシリーズといった、ネオクラシックモデルの人気の高まりとともに、欧州カスタムシーンにおいてもWWの存在感が高まったのだ。
もちろんWWがH-Dを排除しているわけではない。かつて欧州H-DはWWのスポンサーとなり、カスタムコンテスト／The Battle of Kingsの発表も、ここビアリッツで行ったほどだ。二輪車メーカーや二輪関連の用品メーカー、バイクの枠を越えたさまざまなブランドがブースを出展し、さらにはスケートボードデッキやコンサートステージ、フードトラックが軒を連ねるメイン会場「VILLAGE／ビレッジ」、カスタムバイクやビンテージバイクをアート作品とともにアートのように展示し楽しむ「ART RIDE／アートライド」、ピレネー山脈の西の端の山道を封鎖して行う、S字カーブありのストリートドラッグレース「PUNK’S PEAK／パンクスピーク」、競馬場の中のオーバルコースで行うフラットトラックレース「EL ROLLO／エルロロ」、1950年以前のハンドシフトのバイクによって争われる、約100mのオフロードを往復する「THE RACE OF THE LOADS／レース・オブ・ザ・ローズ」といったWWの各コンテンツ会場には多くのH-Dに乗る参加者や来場者を見ることができた。
ジャンルを超えて欧州のバイクファンが集まるWW。つねに変化を受け入れ、進化を続けているのだ。では、写真でWheels and Wavesを振り返ってみよう。
欧州を中心とした二輪完成車メーカーおよび二輪関連ブランド、ファッションブランドのブースが並ぶメイン会場「VILLAGE」には、ビンテージH-Dを専門にレストアやチューニングを行う「MYSTIC MECHANIC Motorcycle／ミスティック・メカニック・モーターサイクル」がブースを出展。来場者から注目を集めていた。
ビアリッツから北にバイクで1時間ほど北上した小さな街マジェスクのモトクロスコースにあるサンドコースで開催された「The Race of the Loads／レース・オブ・ザ・ローズ」。
1950年以前のハンドシフトのマシンのみが参加可能なレースで、１対１の勝ち上がり方式。スタートして150m先でUターンし、100m戻ってゴールするトータル250mのコースで争われる。
オフロードタイヤの使用は不可。したがって、スタートおよびUターン直後、しっかりと加速し車速を高められるか。舗装路では簡単な操作も、サンドコースでは難しい。
深いサンドコース、ハンドチェンジのビンテージマシンで、いかに素早くUターンするかが勝負のポイントとなる。
スケートボード界のレジェンド／スティーブ・キャバレロは、大のモーターサイクルフリークとして知られている。彼はサイドバルブのH-Dで「The Race of the Loads」に参戦したほか、ビンテージモトクロスやフラットトラックレースにも参戦した。
スペイン・サンセバスチャン郊外にある競馬場のショートトラックを使って開催されたフラットトラックレース「El Rollo／エル・ロロ」。ビンテージからモダンバイクまで5カテゴリーが用意され、もちろんH-Dのマシンも見ることができる。
サイドバルブのH-Dで「El Rollo」に参戦するのは、WWチームのボス／ジェローム・アレ。彼はビンテージのノートンやBSAも所有。ワインディングではバカっ速で、オフロードやフラットトラックのトレーニングも行っていて、毎年その腕を上げている。
ビアリッツからバイクで30分ほど走った、スペイン・オンダリビアのハイスキベル山で開催さるドラッグレースが「Punk’s Peak／パンクスピーク」。1対1の勝ち上がり式で、距離は約400m、途中にS字があり、テクニックやセッティングも勝負に大きく影響する。
ショベルスポーティーをベースにしたスプリントレースマシン。極端に低くセットしたハンドルや、小さくデザインした外装類が特徴的。
こんなチョッパーやバガーも参戦。会場を沸かせていた。
バイクとアート作品を一緒に楽しむことができる。「ART RIDE／アートライド」の会場。そこに展示されていた1946年式Nimbs製縦置き4気筒750エンジンをベースにしたカスタムマシン。マシンを製作したのはアイルランドのMEDAZA CYCLES。エンジン以外のほとんどのパーツをMEDAZAが製作している(シリンダーヘッドもMEDAZA製)。
Buell製エンジンをベースに、オリジナルフレームとオリジナル外装のスペシャルマシンを製作するMessina Motorcycles Company。板金加工、キャスティング、樹脂やファイバーによる外装製作など、あらゆる造形のテクニックを駆使し、オーナーの要望に応じた世界で1台のバイクを造り上げている。
MSH METALが製作した、全長約40cmの金属製模型。カスタムバイクを造るときと同じ金属加工技術を使い、フレームや外装を製作。エンジンはボルトやワッシャーなど金属パーツを組み合わせて製作されている。
