アメリカ東海岸のニューヨーク・ブルックリン風の世界観をコンセプトとするカフェ『まだ名前のないカフェ』が埼玉・越谷の国道4号線沿いに誕生した。こだわりのコーヒーや本格石焼窯ピザを提供してくれるこのカフェをプロデュースしたのは、カフェに併設される カスタムハーレーの世界でも広く知られる老舗カスタムショップ『車坂下モトサイクル』だ。代表である野呂 裕二氏にお話を伺いつつ、『まだ名前のないカフェ』の様相を詳しくお届けしよう。
東京と埼玉を結ぶ国道4号線を北上し、元荒川を越えてすぐの交差点角にたたずむクラシカルな雰囲気のカフェ『まだ名前のないカフェ』。グレー × ブラックというダークなカラーリングに無骨なアルファベットだけの看板と、1950年代のアメリカにそのままありそうなデザインが魅力の外観となっている。そのお店の前は乗用車用の駐車場スペースで、バイクはお店の2階にあたる国道4号線沿いのカスタムショップ『車坂下モトサイクル』の前に停める。
間違えて乗用車用駐車スペースに入ってしまうと、再び道路に出てバイク駐輪スペースに向かわなければならないので、東京から国道4号線を使ってこられる方はそのまま『車坂下モトサイクル』に直接向かわれるようあらかじめご注意を。
こちらが『車坂下モトサイクル』前の駐輪スペース。そのままショップ内を通り抜けて1階のカフェへと降りていける。
ちょうど階段を下りた目の前に白いタイルで彩られた注文カウンターがあり、その向こうにはレンガ調のシックな空間が広がる。
カフェの正面入り口から入ったときに見える店内はこのような感じで、奥のレンガ調とは一線を画して白いタイルやウッドが心地よい癒しのスペースに。
カフェの奥にはVIPルームのような個室が。『まだ名前のないカフェ』から席の予約ができるので、この部屋をはじめ 多くの仲間と訪れる際は事前予約されるのをオススメしたい。
晴れた日には太陽の光が降り注ぐエリアも。白タイルやレンガ調の空間とは違ったコーヒーの味わいがあることだろう。
カスタムハーレーの情報に目を通している諸兄ならご存じ、バイク用鋳物パーツを手がける鋳物専科『FORK』の手によるネームプレートとオリジナルキーホルダー。ハーレー乗りだったら思わず唸ってしまう逸品が店頭に並んでいる。
カフェだから当然一杯のコーヒーにこだわりを見せる。『荻島珈琲』なるオリジナルブランドでは、コーヒー豆を名産とする中南米やアフリカの国々が輩出する豆を独自の目で選び抜き、仕入れ、そしてローストまで一気通貫で手がけて提供している。『荻島コーヒー』の珈琲哲学に基づいた苦みと酸味のバランスが取られた豆から生み出されたコーヒーの味わいは、ぜひご自身の舌で試していただきたい。
カフェでその一杯を嗜むのはもちろん、自宅で楽しむためにコーヒー豆の販売もしているので、その味わいが気に入ったら自宅で再現することも可能だ。
『まだ名前のないカフェ』が力を入れているのが、コーヒーのお供となる焼き菓子。写真にあるスコーンやクッキー、そしてつい先日よりカヌレも新メニューとして仲間入りした。『荻島コーヒー』との組み合わせを楽しむことも来店の目的となるだろう。
敷地内にある薪窯で作られる焼き立てピザのほか、日曜と月曜には本格手打ち蕎麦が振る舞われるなど、フードも質・量ともに充実している『まだ名前のないカフェ』。都内の中心街に建っていても不思議じゃないコンセプトどおりの世界観が広がるカフェをプロデュースした『車坂下モトサイクル』代表の野呂 裕二氏に改めて話を伺った。
YOKOHAMA HOTROD CUSTOM SHOW や JOINTS、NEW ORDER CHOPPER SHOWといった名だたるカスタムバイクショーに出展し、受賞とともにその名を全国に知らしめてきた『車坂下モトサイクル』。以前は埼玉・川口に居を構えていたが、コロナ禍の2021年初頭に移転を決意、全国のカフェ巡りをするほどカフェを手がけてみたいと考えていた代表の野呂氏は「カフェを併設したショップにしよう」と、国道4号線沿いにあるここ埼玉・越谷の物件を選んだ。
「全国で開催されるカスタムショーへの出展や地方出張時にも、その地域で気になるカフェに足を運んでいました。気が付いたら 700 を超えるカフェに赴いており、いろんなカフェを見て回るなかで『自分が手がけるとしたら、こんなカフェにしたい』というイメージも具体的になってきて、今回の設計に至ったんです」
選んだ物件は「大通り沿い」という希望どおりの、築47年という古い物件。約5ヶ月かけてリノベーションした『まだ名前のないカフェ』と『車坂下モトサイクル』は、朽ちていたこの建物とリノベーションがコンセプトとなったという。
「アメリカでは古い倉庫を利用したカフェがたくさん存在するんですが、それって雨が少なくて地震がないことから建物が傷みにくく、古き良き時代の雰囲気とともに活用できることが世界観につながっているんです。今回リノベーションしたこの物件も同じように使われなくなった倉庫で、ハーレーのカスタムショップたる『車坂下モトサイクル』のスタイルとも同じだし、アメリカNYブルックリン風スタイルというのがカフェのイメージとしてもぴったりハマりました」
野呂氏はそう笑顔で話してくれた。
『車坂下モトサイクル』と『まだ名前のないカフェ』をつなぐエントランスには、アンティーク&ビンテージと名付けられた空間が存在する。ここはまさに『車坂下モトサイクル』の遊び場であり、歴史を物語る場所でもある。
カスタムショーでも見かけたチョッパー・ショベルがさりげなく佇む。ショーのときよりもグッと近づいて観察することができる。
数々のカスタムショーでのアワードプレートがずらりと壁に並ぶ。『車坂下モトサイクル』の歩みを物語る一面と言っていい。
「安心してバイクを停めてもらえるカフェとして知ってもらい、メーカーや車種なんて気にせず、いろんなライダーに遊びに来てもらいたいです。またこれまでバイクとは無縁だった人にも、バイクに触れる機会になってもらえたら、とも思っています。BBQなどのイベントも企画していきますんで、楽しみにしていてください」(野呂氏)
私が取材で訪れたこの日、ハーレー乗りだけでなく他メーカーバイクに乗るライダーも多く来店していた。バイクを停められるスペースの存在は、ライダーにとっては必須であり、このうえなく安心できる要素だ。都内だと地価の高さから、なかなかバイク駐輪スペースに優先度を割いてもらうことは難しいが、東京からバイクで30分ほどのところに安心してコーヒーが楽しめるカフェがあるというのは、ライダーにとって朗報というほかない。仲間と気兼ねなく過ごせる場所として、ここ『まだ名前のないカフェ』に足を運んでみてはいかがだろうか。