EICMA一般公開日の前2日間はプレスデイ。その初日となる11月5日(火)にハーレーダビッドソンはプレスカンファレンスを開催。ストリートファイターの「BRONX/ブロンクス」と、アドベンチャーモデルの「PAN AMERICA/パン・アメリカ」を発表した。
ハーレーダビッドソンは、イタリア・ミラノで開催されていたEICMA2019(ミラノ国際モーターサイクルショー)において2台のニューモデルを発表した。これらの車両は、ハーレーダビッドソンが2018年8月に、2022年までの短期的世界戦略を発表した「More Roads to Harley-Davidson」に組み込まれていたモデルだ。新たに開発した水冷60度V型2気筒DOHC4バルブエンジン「Revolution Max」を搭載し、アドベンチャーとストリートファイターという、これまでハーレーがアプローチしてこなかった新たなジャンルへ飛び込む足がかりとなるモデルである。
また電動アシスト自転車「E-Bicycle」のコンセプトモデルも展示された。詳細などは発表されなかったが、フレーム形状が異なる3モデルを発表。正式な価格はアナウンスされていない。
「BRONX/ブロンクス」は排気量975ccの水冷60度V型2気筒DOHC4バルブエンジン「Revolution Max」を搭載。写真で見るよりも実車は筋肉質でマッチョな雰囲気。H-D社はストリートファイターと称していたが、個人的にはネイキッドスポーツバイク的だと感じた。おそらくスポーツスターに変わる、H-Dミドルクラスの次世代スタンダードモデルになるだろう。しかし、いまだコンセプトモデルであるため、エンジンのスペック以外の詳細は未定。現場でも、車両に跨がることはできなかった。
こちらは「PAN AMERICA/パン・アメリカ」。H-D社初のアドベンチャーモデルである。欧州におけるアドベンチャーモデルはドル箱で、H-Dが推し進めるアメリカ以外の市場での販売力強化において、このカテゴリーに挑むことはごく自然なことだと考える。同時に、新たなカテゴリーに挑むことで変化/進化するH-Dの姿をアピールすることも重要。「Revolution Max」エンジンは、外観こそ「BRONX」に酷似しているが、排気量は1250cc。フロントカウルやタンク周りをスクエアにデザインし、ボリューム感を持たせたオリジナルなスタイルだ。
電動アシスト自転車のコンセプトモデル「E-Bicycle」は、ブースの最前面に展示。電化を進めるH-D社の姿勢を強くアピールした。よく見ると、フレームが異なる3モデルを展示。多くのe-bikeがMTBスタイルを強調するのに対し、「E-Bicycle」はごく自然で、それだけシティユースを意識していると思われる。コンセプトモデルゆえ詳細は発表されていないが、リアハブには「enviolo」の文字があり、調べると自転車やe-bike用の自動変速器を製作するオランダのメーカーで、スクーターにも使用される無段階変速機/CVT技術を使用している。「E-Bicycle」にもその変速器が使用されていると想像する。
プレスデイには巨大なスクリーンの前にステージがあり、そこに「BRONX」と「PAN AMERICA」が展示されていたが、一般公開日にはそのステージは撤去され、2台の新型車の展示方法も変更。“STYLING PROTOTYPE”と注意書きが書かれた巨大なクリアケースの中に、外装を外した車体と外装つきの車体をそれぞれ展示した。このストリップ車両で、「BRONX」はエンジンをフレームの一部として積極的に使用し、そのことでステアリングヘッドを支えるフロントフレームと、スイングアームを含めたリア周りを支えるリアフレームに別れるフレーム構造であることが分かる。
こちらは「PAN AMERICA」の展示。「BRONX」同様、フロントフレームとリアフレームに別れる形状だが、フロントフレーム形状が異なって見える。また前後サスペンションにはSHOWA製の電子制御サスペンション/EERA(イーラ)が装着されている。展示されていた完成車両ではそのシステムが見えなかったが、電子制御サスペンション装着を検討していることが理解できた。であれば、同じくSHOWAが開発を進める、減速時に自動的に車高を下げて停車時に足つき性を向上し、スタート後にはサスペンションのダンパーユニットをポンプとして使用して指定の車高に戻すことができる「EERA HEIGHTFLEX(イーラ・ハイト・フレックス)」の装着も検討していると想像する。
2モデルの“STYLING PROTOTYPE”の近くに展示されていた新型エンジン「Revolution Max」。排出ガスや騒音を抑えながら、ハイパフォーマンスと高い耐久性、メンテナンス性などを考慮したH-D社の次世代エンジンである。
“STYLING PROTOTYPE”の展示のまわりには、アドベンチャーやストリートファイターなど、新しいジャンルに挑むH-D社の意気込みとして、そのデザインスケッチなどが数多く展示された。
「Livewire」の展示は、他モデルと一線を画していた。真っ白でクリアなスペースに、余裕を持って数台を展示。クリーンなH-Dの新しい世界を強烈にアピールした。もちろん来場者の注目度も高い。
その「Livewire」展示の反対側では、車体を固定した状態での「Livewire」体験会も行っていた。後輪を空転させ、モーターが回転するフィーリングとアクセルに対する反応を体験できるこのブースは大人気。ブース全体に甲高いモーター音が響き渡り、多くの来場者の関心を引いていた。
意外だったのが電動バランスバイク。いわゆるペダルのない子供用自転車のEV版。最初は足で漕ぐ推進力を電動でアシストすると思っていたら、説明員に“電動だよ“と訂正された。2輪車に乗り始めたときからH-Dブランドに触れさせる息の長いブランディング。
世界中のH-Dディーラーが製作したカスタムマシンのコンテスト「Battle of the Kings/バトル・オブ・ザ・キングス」の優勝者もここEICMAで発表。勝利を手にしたのは米国カリフォルニアにあるディーラー「LAIDLAW’S HARLEY-DAVIDSON」が製作したスポーツグライドベースの「FXGTS Coast Glide」。
ツーリングファミリーはつねに多くのファンで溢れていた。欧州のバイクファンにも人気が高いことを証明している。