エイプハンガーにスピードスクリーン&ガンファイターシートと、チョッパーでありながらカフェレーサーの要素が組み合わさったハイブリッドなファクトリーカスタムモデル、アイアン1200。1976年 XLCHに採用されたレインボーグラフィックを再現した70’sスタイルは、ハーレーダビッドソンの歴史を知らない人にさえ強烈な印象を与え、新たな人気モデルとしての地位を確立した。
Before / Afterで見比べるとご覧の通り、スタイルそのものに大きな変化はないものの、グラフィックに対する印象は完全に一変。カスタムのベースモデルとしては興味深い真っ黒なボディに対して1990年代のテクノカルチャーにインスパイアされた蛍光イエローを含むデザインによって、アイアン1200本来の味付けは吹き飛んだ。
「エンジンそのものに乗るバイクという乗り物は、力の象徴」というGraphersRock岩屋民穂氏のイメージから、独特のカラーリングを用いつつボディ全体にはヒョウをイメージした動物的な模様が描かれ、それでいてアイアン1200の英字スペックをデジタルフォントで刻むというモダンアートまでもが組み込まれている。今の40代から上の年齢層が見れば懐かしくもあり、またニュージェネレーションにとっては真新しいデザインとして映る、これまでのハーレーダビッドソンでは描かれなかったグラフィックだ。
ハーレーフリークなら気付いたであろう、ハンドルまわりのカスタムも見逃せない。アイアン1200のアイコンとも言えるエイプハンガーとスピードスクリーンを取り外し、ドラッグバーにアイアン883に見られるオーソドックスなスポーツスターフェイスを手に入れ、レーシーなマシンへと生まれ変わっている。70’sのデザインを一変させたのと同様に、“力の象徴”にふさわしいスピード感溢れるスタイルとなっているところが心憎い。
“この世に一台だけのハーレーダビッドソン”として、これまでにないデザインが落とし込まれたアイアン1200。カスタムというアプローチにおいて深い歴史を持つハーレーに新たな息吹が与えられた──という結果を生み出したわけだが、この完成されたアイアン1200はこれからどこに向かって走っていくのか、このプロジェクトに携わったふたりのキーマン──GraphersRock 岩屋氏とGlanz 高取氏それぞれに話を聞いた。