イタリア・シチリア島にて開かれたメッツラーのクルーザー向け新作タイヤ「CRUISETEC(クルーズテック)」のメディア向け試乗会。日本から青木タカオが参加し、その乗り味を確かめた。画期的なトレッドパターン、コンパウンドレシピ、カーカスを備えたスポーツツーリングタイヤは、最新世代のVツインエンジンやシャシーを持つクルーザー・ツアラーに合わせて設計されている。
ハイパフォーマンス化に拍車の掛かる昨今のハーレーダビッドソン。高剛性のシャシーに4バルブ化された最新Vツイン「ミルウォーキーエイト」を積み、その排気量は1745ccあるいは1868ccにもなり、CVOにいたっては1923ccともはや超弩級としか言いようがない。足まわりも強化され、ソフテイルファミリーではよりスポーティなモノショック式のリアサスペンションを装備。倒立フォークを備えるモデルも珍しくなっている。
そんなパワークルーザー化した現行モデルの高性能を最大限に引き出し、余すことなく楽しめるタイヤがメッツラーの最新作「CRUISETEC(クルーズテック)」だ。ジャーナリスト向け試乗会がイタリア・シチリア島にて開催され、そのライドフィールをいち早く味わってきた。
現行スポーツスターやニュー・ソフテイル、ツーリングファミリーやストリート、ダイナの高年式車もそうだろう、近年のハーレーダビッドソンはスポーティさに磨きをかけている。
ただ真っ直ぐ走ることが得意なクルーザーでは、もはやユーザーは満足しなくなっているのだろう、エンジンはパワーアップされ、シャシーや足まわりも強化されるばかり。カスタムシーンでもハイカムや吸排気チューン、サスペンションやブレーキに手を入れるなど、走りを追求する傾向が高まった。ライダーのヘルメットはフルフェイスとなり、ワインディングでのアグレッシブなスポーツライディングを楽しむ。Vツインの味わい深い鼓動感を堪能しつつ、走りも妥協しないのである。
そんななかメッツラーは、ハイパフォーマンス化したクルーザーに相応しいハイグリップタイヤがいま求められている、と市場のリサーチで分析して新開発されたのが「CRUISETEC(クルーズテック)」だ。専用のトレッドパターン、コンパウンドレシピ、カーカスを採用し、敏捷性、バンク時の安定性、快適性、コーナリング性能を向上。停止距離を短縮し、レインにも強い。
また、リア側をデュアルコンパウンド化することで、センターだけが極端に擦り減ってしまうことを軽減。均一性のある摩耗によって、寿命まで軽快なハンドリングを維持する。
メッツラー開発チームが案内してくれたテストコースは、ヨーロッパ最大の活火山であるエトナ山の麓を駆け抜ける山岳路。石畳の市街地や高速道路も走ったが、大半はワインディングであり、つまりコーナリング性能を堪能して欲しいという彼らからのメッセージが込められていた。と同時に、旋回力への自信のあらわれでもある。
たしかに卓越したコーナリング性能を持つ。まず旋回初期での寝かし込みが、スムーズで軽やか。フロント19インチのアイアン1200はよりパタンと寝ていくし、前後16インチのファットボブでは粘っこさが消えてスッと自然に舵角がついていく。これは車体がシャープに寝ていくよう、前輪のトレッドパターンを徹底追求した結果生まれたものだ。溝を細かく刻んで、ヘビーになりがちなコーナーエントリーもクイックになっている。
バンク中は路面とのコンタクト面にしっとりとしたグリップ感がはっきりとあり、安心感が伴う。フロントの接地感が増えたこととともに駆動輪のトラクション性も優れ、ステップ裏のバンクセンサーが擦れようがお構いなく車体を深く寝かし続けられるのだ。
リアはショルダー部にソフトなコンパウンドが用いられているおかげで、しなやかに路面を掴むような感触に。ロングライフと偏摩耗の抑止に備えて、センター部や前輪とコンパウンドを分けている。均一性のある摩耗で、寿命のかぎりクセのないハンドリングを維持することを実現した。
高速道路では乗り心地の良さを感じた。微振動やノイズがなく、衝撃吸収性も良好。クルーザー向けのタイヤは、縦方向のバネがハード傾向でガッチリと硬質な乗り心地になりがちだが、クルーズテックは縦バネにもソフトさがあり、疲れにくい快適なライドフィールを実現している。
また、アクセルをワイドオープンし、ミルウォーキーエイトのビッグトルクを一気に駆動輪にかけても空転を極力抑えて加速するし、ハードブレーキをかけてもABSの介入が遅く、加減速でもタイヤの踏ん張りをハッキリと感じる。
そして、公道での試乗を終えると、最後は水がタップリまかれたクローズドコースにてウェット性能も確かめることができた。水を効率良く掃き出すトレッドパターンと最新のコンパウンド配合、そして柔軟かつ堅牢なタイヤ構造との組み合わせにより、排水性に優れており、濡れた路面もグリップを失わない。
タイヤの温まりも早く、冷間時や雨天などタフな走りにもしっかり応えてくれる頼もしさも持ち、死角は見つからない。ミルウォーキーエイト、ツインカム、水冷Vツインユーザーにオススメしたいタイヤだ。
価格:オープンプライス
【フロント】 100/90 – 19 M/C 57H TL 110/90 – 19 M/C 62H TL 120/70 B 21 M/C 68H TL Reinf 120/70 ZR 19 M/C (60W) TL 130/60 B 19 M/C 61H TL 130/70 R 18 M/C 63H TL 130/80 B 17 M/C 65H TL 130/90 B 16 M/C 73H TL Reinf 150/80 – 16 M/C 71H TL MH90 – 21 M/C 54H TL MT90 B 16 M/C 72H TL 【リア】 130/90 B 16 M/C 73H TL Reinf 150/70 B 18 M/C 76H TL Reinf 150/80 B 16 M/C 77H TL Reinf 160/70 B 17 M/C 79V TL Reinf 180/55 B 18 M/C 80H TL Reinf 180/55 ZR 18 M/C (74W) TL 180/60 R 16 M/C 80H TL Reinf 180/65 B 16 M/C 81H TL Reinf 180/70 B 16 M/C 77H TL 200/55 R 16 M/C 77H TL Reinf 200/55 R 17 M/C 78V TL 240/40 VR 18 M/C (79V) TL 260/40 VR 18 M/C (84V) TL MT90 B 16 M/C 74H TL MU85 B 16 M/C 77H TLタップリと水がまかれたクローズドコースにて、ウェット性能もテストできた。
排水性に優れる新トレッドパターンと耐候性の高いコンパウンドによって、濡れた路面にも強い。
メッツラー・モーターサイクルタイヤ開発責任者のサルヴァトーレ・ペニーズィ氏は「近年のアメリカンクルーザーユーザーはスポーティな乗り味を好み、既存のタイヤではもう満足できなくなっている」と教えてくれた。