北海道や九州、四国などなど、憧れの地へのツーリングプランを練っているライダーも多いことだろう。ハーレーの走破性をもってすれば自走とてたやすいが、さまざまなメリットを持ち合わせた「フェリー利用」という選択肢も出てくるはず。今回、東京~徳島~新門司を結ぶ「オーシャン東九フェリー」を利用し、実際のフェリーの模様やフェリー利用ツーリングのメリット・デメリットをリアルレポートしよう。
▼目次 ・太平洋を越えて東京と西日本を結ぶオーシャン東九フェリー ・申し込みから乗船までの手順 ・バイクってどう積んでいるの? ・船内のアメニティを見てまわる ・2等洋室(8名相部屋)を見てみる ・「海を越えて」のテーマ曲がよく似合う船旅 ・フェリー旅のメリットとデメリット
太平洋を越えて東京と西日本を結ぶオーシャン東九フェリー
今回利用したのは、東京~徳島~新門司を結ぶ「オーシャン東九フェリー」。太平洋側をぐるっと回って四国、九州へと運んでくれる大型旅客船で、ツーリズム向けというよりは長距離トラックのドライバーが主に利用する航路だ。8年ほど前に私も一度利用したことがあり、まぁなんというか……舞鶴(京都)~小樽(北海道)間を結ぶ「新日本海フェリー」(ツーリズム系)と比べると実に“男臭い”(いい意味で)船であることに感銘を受けた。
そんな「オーシャン東九フェリー」も先ごろ大幅改修され、真新しい4隻のフェリーで運行されている。ハーレーダビッドソン高知への取材もあって、せっかくなので新しくなった「オーシャン東九フェリー」がどれほどのものか乗船してみた。
申し込みから乗船までの手順
電話予約、ウェブ予約のいずれかで予約ができる。当日予約も可能だが「空いていれば」(窓口担当者)ということで、また中継地点である徳島は当日は受け付けていない。予約は必須だ。
ウェブ予約にてカード決済を済ませていれば、受付の列に並ばずこちらのモニターでカンタン受付ができてしまう。
東京モーターサイクルショーでお馴染み「東京ビッグサイト」の隣の島にある「東京港フェリーターミナル」。普段、島への出入り口はトラックが行き来しているだけなので、この周辺を走ってまわっていても足を運んだことがない人が多いのではないだろうか。
誘導員の指示に従って、乗船バイクの列に並ぶ。
隣接するフェリーターミナル 受付センターへ。
「車両に貼るステッカー」、「乗船券」、そして復路のチケットも申し込んでいる人に渡される「往路証明書」を受け取る。この「往路証明書」、失くしてもなんとかなるが、念のため大事に保管しておこう(復路時、徳島のターミナルで「失くしちゃったテヘペロ♪」という老夫婦に、事務員が溜め息混じりで対応していた)。
ターミナルから見たフェリーと乗船待ちの車両群。自分のバイクの小ささといったら。
見えやすいところに行き先ステッカーを貼る。ヘッドライトにかぶってしまっているが、あとは乗船するだけなのでご愛嬌。
ここまで済めば、あとは乗船を待つのみ。
バイクってどう積んでいるの?
いよいよ乗船。指示に従い、ここのスロープを登っていく。
まさにドック。なかなかワクワクする瞬間だ。
船内はこんな感じ。まず奥に乗用車を積み込み、次いでバイク、そして大型トラックを積んでいく。
バイクをドッキング。バイク専用駐車場などに見られる専用重機を用いており、最後にタイダウンでしっかりホールドしてくれる。
慣れない人は怖々してしまうが、これなら絶対に倒れない(船が転覆しない限り)。
それでは船内へ進もう。
船内のアメニティを見てまわる
乗客が過ごすスペースの中心となるエントランスホール。8年前に利用したときとは比べものにならないほど綺麗になっていた(以前は相当……だった)。
エントランスホールに設置されている自販機のラインナップ。そう、前述したとおり、ツーリズムというよりは主に長距離トラックのドライバーなどが利用するフェリーなので、レストランなどという気の利いたものは存在しない。お酒を含んだドリンク類はもちろん、レトルト弁当(焼き飯、焼きそば、おにぎり、スパゲッティ、ハンバーグなどなど)にスナック、アイスと、一晩過ごすだけなら何の不便もないものが揃っている。
もちろん船内は全面禁煙。愛煙家の皆様は、専用喫煙スペースにて。
電子レンジも完備。
エントランスホール横のスペース。景色が一望できる。
このご時世にフリーWi-Fiナッシングとは……。調べてみたところ、日本海側を行く「新日本海フェリー」では一部船籍にフリーWi-Fiが設置されていた。この「オーシャン東九フェリー」の航路も、本土からそんなに離れたルートではないのでスマホも辛うじて繋がるが、それもエントランスホールに限られる(寝室等は圏外に)。さすがに不便さは否めないので、今後の改善策としてぜひフリーWi-Fiを完備していただきたい。
こちらはリラクゼーションスペース。ここでもケータイが「圏外」になる。つながるのはエントランスホールだけなのだ。
「フォワードロビー」は乗客が行ける船の最前線。近年は事故や自殺防止などから、昔に比べて乗船客が行ける場所がかなり制限されている。そう、「タイタニックごっこ」は当然できない。
貴重品を預かってくれるロッカー。
ゲームコーナー。やることがなくてヒマな人がたまに遊んでいた。
乾燥機機能を備えたコインランドリーも完備。乗船と同時に洗濯物を放り込みにくる人が殺到するので、利用はナルハヤで。
フェリー旅の楽しみのひとつ、「大浴場」。波が高いときに入ると、湯船が波打ってちょっと楽しい(ちょっとだけね)。
展望デッキ。昔は船の前から後ろまでめいっぱい行き来できたが、今はここを中心に十数メートル行けるかどうか。ちょっとがっかり。
2等洋室(8名相部屋)を見てみる
「オーシャン東九フェリー」の客室は、「2名個室(3名定員)」「4名個室」「2等洋室(8名相部屋)」「withペットルーム(2名部屋)」「バリアフリールーム(2名部屋)」が設けられている。今回利用したのは、ひとり旅専用とも言える最安値の「2等洋室」だ。
上下に1名ずつ入る2名ボックスが計8つ設置された、最大16名利用の相部屋ルーム。「8名相部屋」と銘打っており、普段は各ボックス下段のみ1名で利用する。上の段は基本的に使われない。
ご覧のとおり、カプセルホテルほどのスペース。ここでもケータイは圏外。ホント、フリーWi-Fi頼みます……。
「海を越えて」のテーマ曲がよく似合う船旅
AM6時、目覚めると、海の上。これはなかなか得難い体験で爽快!
現在位置を確認すると、三重県沖だった。
Google Mapでこの位置を指し示させることってあまりないと思う。
和歌山県の最南端・潮岬を海から眺める。これまた壮観。
予定到着時刻の14時を40分上回る13時20分、徳島フェリーターミナルに着岸。重機からバイクを外し、いよいよ下船!
通常だと、東京〜徳島間の乗船時間は約18時間30分。インターネット環境があまり良いとは言えないので、船内で時間を潰すのはなかなかに大変。ともに旅する仲間がいれば談笑に興じられるし、ネットに繋がずともできるゲームなどを持ち込んでいれば退屈することはないだろう。要は、寝る以外にあまりやることがないのだ。
念のため、船酔い対策もしておくと良い。台風や嵐、大潮の日は波が高く、手に取るほど船が大きく揺れているのが分かる。船乗りでもない限りこのクラスの波に遭遇すると、結構な頻度で船酔いになる。日本海側を走る「新日本海フェリー」と違い、「オーシャン東九フェリー」は波が高い太平洋側なので、大きな揺れに見舞われる確立が高い。
そして一度酔ってしまうと、場所は洋上で逃げ場がないため、ただひたすら時間が経つのを待つほかない。読書や仕事なんてもってのほか! 自分に合った酔い止め薬などを持っておくと良いだろう。
フェリー旅のメリットとデメリット
それでは、実際に利用してみた人間として感じたメリットとデメリットを整理してみた。
【メリット】
・バイクが消耗しない(タイヤの摩耗、エンジンオイルの消耗)
・寝ているあいだに目的地近くまで運んでくれる
・決して安くはないが、総合的に見れば安上がり
【デメリット】
・ひとりだと恐ろしくヒマ
・波が高いと船酔いに遭うことも
「オーシャン東九フェリー」で言えば、東京~徳島間の料金(平成30年4~6月 / 排気量750cc以上 ※なぜ750ccが基準なのかはナゾ)は合わせて23,930円(片道)となる。高速道路利用での自走だと、[ETC料金12,390円][通常料金14,200円]という料金設定で、ここにガソリン代が加わる。容量12.5Lのスポーツスターだと、都合4回ほどの給油で約6,000円というところか。
それでもまだフェリー代金の方が上回るが、「バイクの消耗(タイヤの摩耗、エンジンオイルの消耗)」「ライダーの消耗(体力面)」を加味すると、結果的にフェリー利用が安上がりということが分かる。
注意点としては、「利用するフェリーの特性によってアメニティが変わる」「船酔いにかかると地獄」などだろうか。船での時間は有り余るので、余裕あるスケジュールを組んだうえで船での過ごし方に想像を膨らませると良い。
これだけある日本のカーフェリー。この夏、ロングツーリングを計画している人はこんな船旅を交えたプランを立ててみてはいかがだろうか。