アメリカ・タコマ(ワシントン州)で開催されたプレスカンファレンスで目の当たりにした新生「ミルウォーキーエイト(Milwaukee-Eight)」エンジン。ベーシックとなるのはボア×ストローク100×111.1mmとなるMilwaukee-Eight107。
現地アメリカのプレスカンファレンスで
掴んだミルウォーキーエイト(Milwaukee-Eight)の詳細!!
1909年のFirst V-TWINを皮切りに、Fヘッド(1911~29年)、フラットヘッド(1929~72年)、ナックルヘッド(1936~47年)、パンヘッド(1948~65年)、ショベルヘッド(1966~84年)、エボリューション(1984~99年)、ツインカム(1999年~)と連綿と受け継がれてきたハーレーダビッドソン・ビッグツインの伝統。9代目となる「ミルウォーキーエイト(Milwaukee-Eight)」の登場は速報でお伝えしたとおりだが、その詳細を突きとめるべく、雑誌VIRGIN HARLEY編集長の青木タカオがアメリカ・タコマ(ワシントン州)にて開催されたプレスカンファレンスに参加してきた。
排気量は107ci(1,745cc)で、CVOには114ci(1,868cc)が設定されるのは速報の通りだが、ボア×ストロークはそれぞれに異なり、Milwaukee-Eight 107はボア×ストロークを100×111.1mm、114は102×114.3mmとなる。107→114化のスクリーミンイーグル排気量アップキットもリリースされるが、これはボアアップキットとなるため、同じ114ciを手に入れてもCVOとはエンジンフィーリングが違ってくる。
さて、現地技術説明会で明らかになったことを惜しみなく紹介していこう。まず、ウルトラリミテッド/ローやロードグライドウルトラといったロワーフェアリング装着車には、従来通りツインクールドエンジンを採用するが、シリンダーヘッドまわりが非ツインクールドとは別モノだ。
非ツインクールドの排気バルブまわりには冷却のためのオイルラインが存在し、ツインクールドにこのオイルラインはなくウォーターラインのみ。「非ツインクールドは油冷エンジンとも言える構造を持っている」とエンジン設計担当者も認めているが、部分的にオイルを噴射するような機構は持っていない。
また、空冷エンジンならではの美しい冷却フィン、45度のバンク角、別体ミッション、プライマリーチェーンケースを持つ伝統的な構造は何ら変わっていないが、それぞれにアップデイトがおこなわれた。850rpmという低回転でのアイドリングに開発陣はこだわっており、新設計のフライホイール、オイル量向上(4qt=約3.78L→4.5qt=4.25L)、オイルポンプ強化、充電系統の一新(発電量50%増し)、デュアルスパーク化、デュアルスプレーインジェクターの噴霧角度見直しなどによって実現している。さらにノッキングを防ぐデュアルノックセンサーを追加したほか、吸気系ではエアクリーナーケースを新たにし、スロットルボディも50→55mmに拡大した。もちろんEURO4に対応し、その後に続くEURO5への対応も見据えているのは言うまでもない。
さぁ、概要がわかったらいよいよミルウォーキーエイト搭載の2017年ツーリングファミリーの試乗をスタートだ。次回からは各モデルの試乗インプレッションをお届けしよう。乞うご期待!!
フォトTOPICS(写真点数/22枚)
01107(1,745cc)はボア×ストロークを100×111.1mm、114は102×114.3mmとしたミルウォーキーエイト(Milwaukee-Eight)」エンジン。10%のピークトルク、発電量50%の向上を果たしている。
02美しい冷却フィンが刻まれているのを見れば分かるとおり、基本的には空冷エンジンだが、ミルウォーキーエイトのスタンダードとなる非ツインクールドでは、もっとも熱を持つ2本の排気バルブの間にオイルラインを設け、部分的な油冷機構を導入した。
03エンジンオイルをいずれかに噴射するような特別な装置はないものの、油冷エンジンとも言える構造になっている。このオイルラインがあるのは非ツインクールドのみで、ウォーターラインを持つツインクルードにはない。
04こちらはウォーターラインを持つツインクールド ミルウォーキーエイト。もっとも熱を持つ2本の排気バルブの間に水路を設け、冷却効果を高めている。
05ツインクールドエンジンの外観。ツインカム103時代もそうだったが、見た目は非ツインクールドとほとんど同じ。シリンダーヘッドあるいはロワーフェアリング内のラジエターへ至るウォーターホースで判別できる。写真はウルトラリミテッド。
06世界中のバイクファンが注目するミルウォーキーエイト(Milwaukee-Eight)の詳細が明らかになったアメリカ・ワシントン州タコマにて開かれた技術説明会。世界各国からメディア陣が押し寄せた。
07ハーレーダビッドソン Technical Staff Engineer Bill Pariさんが詳しい内容を教えてくれた。会心の出来映えとなったTwin-Cooled Milwaukee-Eight114を搭載するCVOリミテッドの前でニンマリ。
08ツインカムエンジンでは、そのネーミングが示すとおりカムシャフトを2本備えていたが、ミルウォーキーエイトではシングルカム化。カムチェーンも1本となり軽量化、静粛性・整備性の向上などに貢献する。
09プッシュロッドがロッカーアームを押し上げ、4本のバルブを開閉させるミルウォーキーエイト。シリンダーヘッドのボリュームは増したが、1カム化などによってエンジン単体重量は増えていない。
10完全新設計のミルウォーキーエイトエンジン。シリンダーあたり吸排気バルブを2つずつ合計4つを持ち、燃焼効率を飛躍的に向上。オートエアコンプレッションリリースというバルブを少し開けて燃焼室内の圧縮を抜く機構も追加した。
11シリンダーヘッドでは4バルブ化によって部品点数を増やしているが、吸排気バルブやバルブスプリングを軽量化するなどし、エンジン単体の重量増加を抑えている。
12ツインカムエンジン時代には50mmだったスロットルボディ径を55mmに拡大。ピークトルク10%向上、アイドリング低回転化、環境性能向上など、燃焼効率を上げることで達成した。
13エアクリーナーボックスも一新し、吸入効率をアップ。カバーには排気量を示す数値が入るほか、美しいクロームメッキが施される。
14アシスト&スリッパークラッチも新しくなり、ダイヤフラムを3本のコイルスプリングに変更。油圧のマスターシリンダーも新作で、レバー操作が軽くなっている。
15新作ピストンのボアサイズはMilwaukee-Eight107で100mm、CVO用のMilwaukee-Eight114は102mm。もちろんコンロッドも完全なる新設計とした。
16充電システムも性能を向上。発電量を従来比50%増しとし、アイドリングの低回転化に貢献。850rpmでも着実にバッテリーをチャージしてくれる。
17一次振動を75%低減するアンチバックラッシュを備えたカウンターバランサーを新たに組み入れたことは乗り心地の良さに貢献するが、これもまた低回転化に影響する。
182カムをエボリューション以前のように1カムに戻し、コンパクトになったクランクケース。クランクピンとベアリングもグレードアップされフリクションを低減した。
19バルブクリアランスは調整不要の油圧式システムを採用。これによって定期的なメンテナンスで、シリンダーヘッドをあける必要がなくなっている。
201909年から連綿と続くハーレーのVツインエンジン。1936年のナックルヘッドからOHV化され、48年のパンヘッド、66年のショベル、84年のエボリューション、そして99年にデビューしたツインカムからバトンを渡されたミルウォーキーエイト。
21アイドリング時のノイズを低減するアンチバックラッシュギアを採用した新作の6速トランスミッション。静粛性や操作フィールを飛躍的に向上している。
22雑誌VIRGIN HARLEY編集長の青木タカオがアメリカ・タコマ(ワシントン州)にて開催されたプレスカンファレンスに参加。続いてオリンピックナショナルパークを2日間で400マイル(約640km)のテストライドへ。ツーリングファミリー、CVO各モデルの試乗インプレッションも乞うご期待!