排気量1,916cc/スクリーミンイーグル 117ciツインカムエンジンが現実のものに
現ラインナップでもっとも大きなパワーを持つエンジンは、CVOとSシリーズに搭載されている排気量1,801cc/スクリーミンイーグル ツインカム110ciエンジンだが、そのエンジンだけに許されたボアアップキットがこのほど登場した。そのスケールは、排気量1,916cc/117ciというもの。
これまでも、S&S社などの社外パーツで2,000ccオーバーのボアアップキットは存在していたが、この117ciハイパフォーマンスキットの優れた点は、何といってもメーカー保証がしっかりついてくること。新車もしくは登録から60日以内の車両ならばその保証期間は3年、それよりも古いモデルがベースであっても1年の保証が付く。
ボルトオンのビッグボアシリンダーにスクリーミンイーグル製58mmスロットルボディ、スクリーミンイーグル製259Eカム、カムカバーガスケットなどでまとめられたボルトオンキット
ご覧の製品がワンセットになったボルトオンキットで、販売価格は42万円(税込)と据え置き。ボルトオンなので、完全にエンジンを分解して内燃機屋に回すという手間と時間がかからないから、それこそフレームに載せたままでの作業が可能となり、工賃も最小限に抑えられてディーラーの対応も早くなる。対応機種がCVOとSシリーズの110ciツインカムエンジンだけというのが残念なところだが、だからこそ110ciエンジンの存在意義が際立ってくるというもの。選ばれし者だけがたどり着ける領域というわけだ。
これがパフォーマンスキットを組み込んだ完成型。一見すると、117ciのプレートだけが際立つ仕上がりだが、そのパフォーマンスは飛躍的に向上している
「そんなハイパワーを手に入れても、自分の技量では扱いきれない」、「すごいとは思うけど、ちょっと縁のないパーツかな」。そう思われる方も少なくないだろう。確かに1,916ccというサイズ感だけ見ても、誰もが操り切れるものとはにわかに信じがたい。広大な国土を誇るアメリカを走破するためならわかるが、そのスケール感をそのまま日本に当てはめて、はたしてそのパワーを余すことなく使い切れるものなのだろうか。
今回、この117ciパフォーマンスキットを搭載したマシンに試乗する機会を得たので、実際に乗ってみた感想をお届けしよう。
117ciパフォーマンスキットが組み込まれた、110ciツインクールド・ツインカムエンジン搭載のFLHXSE CVO ストリートグライドが今回の試乗車
今回用意された試乗車は、FLHXSE CVO ストリートグライドだ。これはツーリングファミリーのストリートグライドと違い、フロントフェアリングにラジエターが内蔵された空水冷Vツインエンジン「ツインクールド・ツインカム110」が搭載されている。マフラーはノーマルで、スクリーミンイーグル製ハイフローエアクリーナーが標準装備され、そこに別売のH-D純正「ストリートチューナー」を用いたインジェクションチューニングを敢行、その性能を最大限に引き出している。ツーリングモデルの中でもとりわけ軽量なマシンだ。ビッグボアエンジンの性能を体感するにはうってつけのモデルと言えよう。
走り出しと同時に、すぐにその違いが体を駆け抜ける。まずスタート時の加速感が、通常のCVOモデルとまったく違うのだ。混雑している東京都心でも、2速パーシャルで回してやるだけでストレスなく走って行ってくれる。それも、レスポンスが良くなっているものだから、395キロという車体重量も気にならないほど軽快に、だ。
CVOと言えど、フルノーマルのままだとその重量も相まって、出だしはややもたついた感じになるのが、スロットルを少しひねっただけで、まるでスポーツバイクかのようなダッシュを味わわせてくれた。これがウルトラほどの超重量級モデルとなるとどう反応が変わるのか気になるところだが、少なくともツインクールド・ストリートグライドは見事に生まれ変わっていると言っていい。
その名のとおり、ストリートバイクとしてプロデュースされたストリートグライド。「この図体で街中を走ったりはしないだろう」と思われるところだが、アメリカではさらにバガースタイルへカスタムして街を駆け抜けることが新たなカルチャーとなっている。そこから生まれたストリートグライドの中低速域におけるパフォーマンスが飛躍的にアップするというのは、ハーレーの楽しみ方にさらなる幅を与えたことにつながる。
ハイウェイでの疾走感も飛躍的にアップ! その能力を余すことなく引き出し切れるかどうか……。
間違いなく本領を発揮するハイウェイライドでは、スムーズなギアチェンジと加速感がライダーの気持ちを昂ぶらせてくれる。ノーマルのCVOと比べても、ギアひとつを上げたときのスピードの伸びに違いがあるように思えるほどだ。気持ち良くスピードアップしてくれるものの、5速に上げた段階で法定速度域に達しつつあったので、結果的に6速まで上げるには至らなかった。その速度域は、まさに天井知らず。「まだまだスピードを上げられるよ」と、たっぷりの余裕まで見せつけてくるほどである。
ハーレー純正のチューニングデバイス「スクリーミンイーグル ストリートパフォーマンスチューナー」。マフラー交換とともにフルチューンをかけてやれば、その能力はさらに引き出されることに。
117ciパフォーマンスキットだけを組み込んでも、ボアアップしたエンジンに合ったセッティングに書き換えられていなければ、それは宝の持ち腐れ。今回驚くほどのパワーとライディングを体感できたのも、アップしたエンジンパワーを余すことなく引き出すためのチューニングが施されていたから。同じくメーカー保証が付くこのストリートチューナーも取り入れてやれば、私が体感したモンスターマシンをいとも簡単に手に入れることができるだろう。
日本という国を小さく感じさせてしまう禁断のパーツ、117ciパフォーマンスキット。ハーレーダビッドソンの名にふさわしいスケール感を味わうための新たな選択肢の登場である。
メーカー希望小売価格 420,000円(本体価格 388,889円)
メーカー希望小売価格 420,000円(本体価格 388,889円)
適合:2014以降CVO 110ciソフテイル及びツーリングモデル、2016以降110ciFLSS及びFLSTFBSモデル