今回のテーマはホイールカスタムだ。ホイールは1本10万円以上するモノも珍しくないため、他のパーツほど気軽に交換できるわけではない。しかし、タンクやハンドルなどの手ごろなパーツではなく、ホイールにまでこだわって愛車のイメージを変えるのが通というもの。見た目だけではなく、走りにも大きな影響を及ぼすため、走って違いが実感できるのも楽しい。スポークホイールやキャストホイール、はたまたディッシュホイールなど、愛車のイメージに合わせて好みのホイールを選んで欲しい。ただし、スポーツスターのホイールは年式によって仕様変更が何度も行われており、年式による違いを知った上でホイール選びを行う必要がある。それではスポーツスターのホイール選びのイロハをご紹介しよう。
社外のカスタムホイールを紹介する前に、まずはホイールの種類について紹介しよう。スポーツスターに限らず、バイクに採用されているホイールには2種類ある。スポークホイールとキャストホイールだ。ホイールにはリム(タイヤを取り付ける外周部分)、ハブ(ローターやアクスルシャフトが取り付けられる中心部分)、両者を繋ぐスポークの3つで構成されている。スポークホイールは3つの構成部品が別々になっており、それを組み上げている。一方、キャストホイールは3つの構成部位が鋳造(=Casting、型に金属を流し込み、成型する手法)で一体となって作られたホイールを指す。オフロードバイクなどでは、地面からの衝撃を柔らかく吸収してくれるスポークホイールが好まれるが、舗装路を走る場合はチューブレスタイヤが使用できるキャストホイールのメリットが重視される。
また、ホイールの重量はスポークよりキャストホイールの方が軽いため、足回りの軽快さを求める場合はキャストホイールが選ばれることが多い。ただ、スポークホイールの持つクラシカルなルックスも捨てがたい魅力を持つ。重量が重く、タイヤチューブを履かせる必要はあるものの、もともと車重のあるハーレーの場合、ホイールの重さをそれほど気にする必要はないとの声もある。
エボリューションモデル(1986年以降)のスポーツスターに採用されているホイールはフロントが21インチと19インチ、リアは16インチのホイールのみだ。21インチホイールはXL1200C、XL883Cなど一部モデルに採用されており、直進安定性に優れるものの、スポーツライドを前提とするのであればフロント19インチの方が軽快感に勝っている。また、XL1200C、XL883Cはリアホイールにも特殊なディッシュホイールが採用されており、見た目は美しいが、重く横風に弱いという欠点がある。
年式による適合などは次に紹介するとして、まずはスポーツスター用のホイールの見た目の違いから。キャストホイールは年式によって、シルバーやブラックのカラーなどカラーリングが異なる。各年式・モデルごとに仕様変更も多いため、そこはディーラーなどでカタログを参照して欲しい。
どの年式も40穴のリムを採用。年式によって見た目に大きな変化はないが、1994年式まではスチール製のハブを採用、1995年以降はアルミ製のハブが採用されている。スチールハブは錆が出やすく、簡単に磨けないため少々手入れが面倒だが、ハブ形状が美しいためスチールハブを愛するユーザーも少なくない。
スポーツスターのキャストホイールは9本キャストと13本キャストの2種類がある。9本、13本とはスポーク部分の本数の違いで、1995年式までのキャストホイールは9本キャストが、1996年以降は13本キャストが採用されてきた。9本キャストの方が1kgほど軽量で見た目もシンプルなため、9本キャストの人気は高い。
スポーツスターはブレーキやホイールベアリング、アクスルシャフト径に仕様変更が行われており、年式違いのホイールを手に入れると、そのままでは取り付けられないことになる。ここで紹介する年式による仕様変更はホイールカスタムの際はよくチェックしておこう。フロントとリアで仕様変更の年式に違いがあるため、別々に紹介する。
アクスルシャフト径は3/4インチ。ホイールベアリングにニードルテーパーベアリングが採用されていた。このベアリングは定期的にグリスアップが必要で、長期間メンテナンスを怠るとベアリングが焼きつくなどのトラブルを引き起こすことがある。ただ、定期的なグリスアップを行っていればベアリングの耐久性は非常に高い。
アクスルシャフト径は3/4インチ。ホイールベアリングにシールタイプのボールベアリングが採用された。このベアリングは定期的なグリスアップの必要はない。新しいベアリングは従来のモノより外径が広く、ブレーキにも仕様変更があったため、ベアリングやローターを取り付けるハブ部分に変更が加えられた。1999年式以前と2000~2007年式のホイールにそのままでは互換性はなく、取り付けには加工が必要。
アクスルシャフト径が25mmと2007年式以前より太くなった。これはホイールベアリングが従来のインチ規格からミリ規格に変更されたことが理由。そのため、2008年式モデルのオーナーは2007年式以前のホイールをそのまま履かせることはできない。2007年式以前のホイールを履かせる場合はベアリングの打ち換え作業が必要。
アクスルシャフト径は3/4インチ。ホイールベアリングにニードルテーパーベアリングが採用されていた。このベアリングは定期的にグリスアップが必要で、長期間メンテナンスを怠るとベアリングが焼きつくなどのトラブルを引き起こすことがある。ただ、定期的なグリスアップを行っていればベアリングの耐久性は非常に高い。
フロントホイールの「2000~2007年式」に同じ。2004年式からリアタイヤがそれまでの130mmから150mmへと太くなっている。そのため、スイングアームやフェンダーなどは変わっているものの、ホイール品番は2000~2003年式モデルと同じ。2004年式のリアホイールは2005年以降ではなく、2000~2003年式と共通なのはあまり知られていない。
スイングアームのさらなる強化やハブダンパーの採用に伴い、リア側のアクスルシャフトのみ、それまでの3/4インチから1インチへと太くなった。リアホイールはフロント側とは違い、2000~2004年式と2005~2007年式には互換性はないため、年式の違うホイールを手にいれないよう注意が必要。
アクスルシャフト径が25mmと2007年式以前より太くなった。これはホイールベアリングが従来のインチ規格からミリ規格に変更されたことが理由。そのため、2008年式モデルのオーナーは2007年式以前のホイールをそのまま履かせることはできない。2007年式以前のホイールを履かせる場合はベアリングの打ち換え作業が必要。
以上が純正ホイールの年式による違いだ。社外ホイールを購入する場合もこの年式による違いに気をつけて購入して欲しい。フロントホイールはわかりやすいが、リアホイールの頻繁な仕様変更には注意が必要だ。また、社外ホイールのラインナップを見ると、リアホイールは2005年式以降のスポーツスターに対応するモノがやや少ない。そのため、2005年式以降のスポーツスターオーナーの場合は、2004年式までに対応するモノを購入し、ベアリングの打ち換えなど、少々面倒な作業が必要になってくることもあるだろう。
ここでは社外のホイールメーカーについてご紹介しよう。国内メーカーから海外メーカーまで、スポーツスター用のホイールを販売している代表的メーカーが下記の5社だ。各メーカーともデザインやリム幅、ホイールのサイズによって複数のラインナップを持っているため、ここでは個別の商品を紹介することはしない。各メーカーのホームページで年式による適合を確認しつつ、自分のバイクに取り付けた際のイメージを膨らませて欲しい。
アルミ削り出しで純正に負けない高品質な質感が評判のミスミエンジニアリング。10本スポーク、5本スポーク、スポーク部分のデザインにこだわった風神ホイールなどデザインは多様で、ホイール径、リム幅の選択肢も豊富。前後17インチのラインナップや、フロント19リア18インチのラインナップもある。
バイク用パフォーマンスパーツを手がけるACTIVEがハーレー用に立ち上げたブランド「GLIDE」にスポーツスター用ホイールがラインナップされた。2000~2008年式まで対応するホイールはフロント19、リア16インチのみのラインナップだが、純正に比べ大幅に軽量化されており走りに大きく貢献する。
バイク業界では著名なパーツメーカー、オーバーレーシングはスポーツスター用ホイールも手がけている。前後18インチサイズのみのラインナップだが、スポーク部分のデザインは複数用意されている。フロント、リアともに純正よりリム幅が広いサイズのラインナップが用意されている。
ハーレー用のホイールラインナップでは他の追随を許さない豊富なラインナップを持つメーカー。スポーツスター用だけでも12ものデザインがあり、サイズには純正サイズはもちろん、前後17インチ、前後18インチ、フロント23インチに至るまで豊富に取り揃える。ワイドタイヤ用ラインナップも多い。
フレームやフットコントロールまで幅広いラインナップを持つ、アメリカのパーツメーカー。ビレットホイールからスポークホイールまで選択肢は多い。スチールリムで前後18インチ化を考えているスポーツスター乗りは要チェックのメーカーだ。ショベルスポーツから現行モデルまで適合年式の幅は広い。
デザインは好みによって選んで欲しいが、走りに関わる部分での注意点を1つ。ホイールのサイズをどうするのか、だ。スポーツスターのホイール交換で一般的なホイールサイズは純正と同じ「F19、R16」もしくは「F21、R16」だが、英国車や国産旧車に採用されている「F19、R18」、「F18、R18」などもクラシックなルックスから人気が高い。エボリューション以前のショベルスポーツには「F19、R18」のホイールが採用されていたが、リアが18インチになるだけで思いのほか走りは軽快に変わる。さらにスポーツ性を追究したい人は小口径の「F17、R17」を選択することもできる。このサイズになるとスポーツバイクに採用されているラジアルタイヤを履かせることもできるのがポイントだ。
編集部員Tのリム。スチール製の国産旧車用のモノを流用
専用に販売されているホイール以外にも、スポーツスターに流用できるリムは探せば身近なところにもある。フロント回りごと移植すれば国産スポーツバイク用の17インチホイールを履かせることは可能だ。また、国産車用に販売されているD.I.DのスチールリムやRK EXCELのアルミリムなどでも、40穴スポーク用を手に入れればハーレー用のハブと組み合わせて使用できる。ハーレーのカスタムではワイドタイヤ化が人気ではあるが、細めのリムと組み合わせ、純正より細いタイヤを履かせることも可能なのはあまり知られていない。
ちなみに編集部員Tは国産車用のスチールリムをハーレー用のハブに組み合わせ、フロント19リア18インチ化を実現。これにYAMAHA「SR400」用の細いサイズのタイヤを履かせ、純正とは一味違うスポーツスターを楽しんでいる。国産車用のリムはハーレー用に比べ、手ごろな値段で手に入るため、ハーレー用ホイール1本の値段で、前後ホイールのサイズ変更を行うことだってできるのだ。スポークの長さは特注でオーダーすることができるので、40穴スポークであればどんなリムでもスポーツスターに履かせることはできる。ただ、注意すべきなのはリムの質感。好みにもよるが、国産車用のアルミリムはクロームパーツとの見た目の相性はよくない、という声もある。ホイールが他のパーツとうまく合うのか、ハーレー用に開発されていないホイールを使うときは質感の違いもよく考えた方がいいだろう。