冬に積雪が多い地方の方、長期間出張でハーレーに乗れない方…。さまざまな事情で長く愛車に乗れない方から保管についてご質問をいただくことは珍しくありません。当店では冬の間、車両をお預かりするサービスを行っています。今回は「車両の長期保管」の疑問・ノウハウについてご説明いたします。
「しばらくハーレーに乗らなかったからバッテリーが上がってしまった…」。たまに聞く話ですね。バイクではイグニッションをOFFにしていても、レギュレターやセキュリティーシステムなどで少しずつ電流を消費しています。そのため、消費電力を抑えるためにバッテリーケーブルを外し、電流が流れないように対策するのは効果的です。しかし、冬季の車両保管のように何ヶ月もエンジンをかけない際は、これだけでは不十分です。実はバッテリーはケーブルを外していても、微量ながら自己放電しています。そのため、バッテリーケーブルを外しても、長期間放置しているとバッテリーが上がってしまうのです。
これを防ぐためにはバッテリーを充電機につないでおくことで解決します。バッテリーを取り外し充電機につないでおく、最近では充電器の配線を直接バイクに取り付けられる専用キットも別売りでありますので、それを使えば簡単にバッテリーを守ることができますね。ただ、あまりに寒い気温はバッテリーに良くないので、雪国のライダーは出来ればバッテリーを外して自分の部屋にバッテリーを持っていき、常温保管が好ましいでしょう。そして、シーズンが始まったらフル充電し取り付けるとベストですね。
タンクの錆を防ぐために最適な方法は、タンクやキャブレターのガソリンを抜き、乾燥させ防錆剤など塗っておくことなのですが、ガソリンを抜くのは危険な作業ですのでお勧めできません。やはり、タンク内側の錆予防としてガソリンを満タンにし保管するのが好ましいでしょう。ただ、ガソリンも長期間(4~6ヶ月)保管すると劣化や酸化など腐食変化し、エンジンがかかりづらいなど悪影響を及ぼす場合もあります。キャブレターやインジェクターの洗浄効果も期待できますので、ガソリンの酸化防止剤や添加剤などをあわせて使用することをお勧めします。
サイドスタンドで長期保管を行っても問題はありませんが、スペースに余裕のある方はハーレーを垂直に立てダブルパンタやハーレー専用ジャッキなどでタイヤを少し浮かせ、保管するのがいいでしょう。タイヤやサスペンションに負担もかかりません。
バッテリーの充電のために「たまにはエンジンをかけてやりましょう」という話を耳にします。年式にもよりますがツインカムは1200~2000回転で充電しますので、充電だけを考えれば間違った話ではありません。しかし、冬期間に限った話ですが、寒い時期にエンジンをかけるとエンジンの熱により水蒸気が発生し、結露します。10~20分吹かして熱くなったエンジンが寒いところに置かれると、ブローバイガスの水蒸気などがエンジン内部に結露を起こし、オイルに水分が混じって「白濁」してしまうことがあります。そのため、あまりお勧めできる作業ではありません。エンジンをかけるより、上述した「バッテリーケーブルを外す」や「バッテリーを外してしまう」ことで対応しましょう。
埃や結露防止のため、当店では冬季にお預かりしている車両には全てカバーをかけています。保管場所が室内でしたなら、湿気がたまらない室内用の風通しのいいカバーがお勧めです。通常のバイクカバーを使用される場合はたまにはカバーをめくり換気することをお勧めします。
特に難しいことはありませんが、基本が数点あります。
長期保管後は当然ながらエンジンは一発ではかかりません。なかなか始動しないからといって、ずっとセルボタンを押しっぱなしで始動させてはいけません。10秒ほどセルを押したら少し休み、数度に分けてセルボタンを押し、バッテリーが上がらないよう状態を見極めてください。ガソリンコックがオフのままなのを忘れ、セルボタンを回し「エンジンがかからない…。バッテリーが…」などのうっかりトラブルが春先には多いのでお気をつけください(笑)。
長期間の保管と言っても特に難しいことはありません。ただ、「保管の方法は完璧!」とカバーと毛布で包み込み、一度しまったら、春まで愛車は放っておくのではなく、時にはカバーを開けてハーレーを磨いたりしてください。じっくり眺めていると夏場では気が付かなかった造形の美しさに気づくなど、新たな発見があるかもしれません。乗りっぱなしではいけませんよ。大事なハーレーと生活しているのですから。