ハーレー用のオイルには一般的に、「20W50」と「シングル50」があります。稀に「50番のエンジンオイルは、ツインカムエンジンに使えますか?」という質問を受けることがあります。あまりよく知られていませんが、実は使えます。「シングル50」は一般的にショベルヘッド用のエンジンオイルと思われていますが、エボリューション、スポーツスター(V-ROD以外)にも、暖かい季節なら使えます。これは外気の最低気温によって決まります。20W50の“W”はウインターの略で、4℃~38℃に適しています。「シングル50」は外気温度が、16℃以上で使います。マニュアルに、不適切と書いてあるのは、10℃以下の季節では使えませんということで、16℃以上なら、なんら問題はありません。
ハーレーのエンジンは空冷です(V-ROD以外)。そして油冷でもあります。走ることによって風があたり、エンジンが冷えます。都内のように走ってすぐ信号、また走って信号という慢性的な渋滞の状況では、オーバーヒートは常につきものです。1時間で10kmくらいしか移動できないこともざらにあります。夏場、エンジンは特に過熱します。ここで、シングル50番の硬いオイルを使うと、オーバーヒートになるまでの時間がかなり違います。オイルは潤滑と思われがちですが、エンジンの過熱を防ぐ役目もあり、そのためにハーレーは(V-ROD以外)ドライサンプ方式という、オイルタンク別体式をとっています。エンジンが、過熱したオイルをオイルタンクへ一時戻して、冷やしてからエンジンへまた送る方式です。
春先から(V-ROD以外)が50番がおすすめです。街中を走る方にはとても好評です。オーバーヒート対策にとてもいいのです。50番を使ったときに、気をつけなければいけないのは、気温です。10℃以下の気温では使えません。冬場4℃位のときにオイルを見ると、水飴のようになっています。オイル交換後、あまり走行していなくても、冬前には必ず交換しましょう。渋滞なんてあまり無い地域の人は、年間を通して20W50で問題ありません。
この他に、HD社のシンスリーというオイルがあります。これはエンジンオイルの他、トランスやクラッチオイルとして使える、優れたオイルです。ジャマーサイクルがハーレーのエンジンを使って世界最高速度に挑戦していた1978年ころ、450km/hを越えると、エンジンが焼き付を起こしていました。そこの問題点はニトロで燃焼させているため、ある高温域に達すると、オイルが逃げて潤滑の役目を果たせなくなるというものでした。いろいろなことを試した結果、ある化学合成の種類のエンジンオイルを使うことによって、焼き付かなくなり、1990年、時速515km/hという二輪車の世界最高記録が生まれました。エンジンは72年式のショベル2基がけの二輪車です。この記録はいまだに破られていません。70年当時は1銘柄だったその種のオイルも、近年ではフェラーリ社やポルシェ社等の中でも300km/hをオーバーするクラスの車種にはメーカーがこの種のオイルを指定しています。当時でも高価だったこの同じ考えを持った化学合成オイルがハーレー用にも出ています。それがシンスリーです。オイルにこだわりのある方や、チューンナップされたハーレーやV-ROD等には特におすすめです。