取材日はあいにくの雨。それでも彼女はバイクでやって来た。開口一番、「私、雨とか気にならないんですよ」、と満面の笑顔で荒天を笑い飛ばしたのである。
TOMOKIさんのバイク歴は高校の通学で使っていたカブから始まった。「初めてのバイクでしたからとにかく楽しくて、どこまででも行けそうで。嬉しくてずーっと走り回っていました」。
そんな高校時代に彼女は1年間カリフォルニアへ留学した。そしてそこで、彼女がハーレーに惹かれるキッカケとなる出来事が起こったのである。
「ホストファミリーとご飯を食べにいった時、バイカーの集団に会ったんです。そのバイクを眺めてたらメンバーのひとりが『バイク好きなの?』って訊いてきて。『うん、好き!』って言ったら後ろに私を乗せて夜のダウンタウンを走ってくれたんです」
その時に味わった疾走感や鼓動感は彼女に「いつかハーレー」という夢を抱かせた。その後大学に入り、ほぼ毎日休みなくバイトをこなして4か月で30万円を貯金。知り合いが手放したエリミネーター250を購入した。そして、車体と運転に慣れるためのレクチャーを施してくれたのは彼女のお父さんだった。V45マグナ乗りのお父さんは、彼女を後ろに従えて峠をガンガンに走るというスパルタ教育を実施した。TOMOKIさんは最初の頃はとてもついていけなかったものの、練習の成果もあっていつの日かすっかり乗りこなせるようになったと言う。バイクに乗る上で「女の子扱い・チビ扱いされるのがイヤだ」という彼女が、今やシャキシャキと華麗に走る姿にはそんなバックボーンがあったのである。
以後、エリミネーターで仲間と走ったり遠出をすることに目覚めたTOMOKIさん。社会人になって、ついに憧れのハーレー乗りとなった。当時アメリカで抱いた夢を実現させたのである。彼女が乗るダイナは、他の誰が跨がっても似合わないくらいに、彼女らしさが具現化されているようなバイクだ。また、敢えてバイカー風の格好をせずに、等身大でバイクを楽しむ姿は見ていて実に痛快。そう、たまらなくキュートなのである。