2008年6月24日、騒音規制に関する新しい 法改正案 が発表され、現在パブリックコメントが募集されている。2006年12月末にも騒音規制に関する法改正案が発表され、二輪業界で物議を醸したことを覚えている方も多いと思う。前回の法改正案は二輪業界の実情に合っていない部分があり、法改正は見送られることとなったが、今回の法改正案は恐らくそれを踏まえた上で出てきた案だ。国が発表する文面だけにわかりにくい部分があるので、これまでの流れと、今回の改正案について紹介することにしよう。
過去2つの法改正案を紹介する前に、現在の騒音規制値とその計測方法を紹介しよう。バイク騒音の測定は「近接排気騒音」、「定常走行騒音」、「加速走行騒音」の3種類がある。それぞれの測定方法を説明すると
1971年の騒音規制開始後に何度か法改正が行われ規制値は厳しくなってきているものの、現在までの騒音規制はこの3種類の騒音測定方法で行われてきた(近接排気騒音は1986年から採用)。
この定められた規制値を守り、メーカーは新車を開発し販売を行っていたのだが、ハーレーやBMWなどの輸入車や、国内4大メーカー(以下、4大メーカー)の逆輸入車については、上記の騒音規制とは違った形で規制をクリアすることができた。それが「型式指定制度」と「並行輸入自動車審査制度」の違いだ。まず、それぞれの特徴について紹介しよう。
2006年末に発表された騒音規制に関する法改正案で問題になったのは、並行輸入自動車審査制度の型式指定制度のズレだ。型式指定制度では「近接排気騒音(以下、近接)」、「定常走行騒音(以下、定常)」、「加速走行騒音(以下、加速)」の3つの規制値をクリアする必要があったが、並行輸入自動車審査制度では自動車検査場に定常、加速の測定環境がないため、この2つの測定は行われず、近接のみの検査で騒音規制はクリアすることができた。2006年の法改正案ではここを問題視し、並行輸入自動車審査を受ける車両についても定常と加速の検査に対応させようというもの。1台ずつ3つの規制に対応しているか検査することも制度上は可能であったが、定常と加速を測定できる場所が限られているため、現実的には不可能。また、騒音規制は排気音だけの問題ではなく、エンジン音やメカノイズも含めた数値のため、定常と加速の検査も行うとなると、日本市場のためだけに規制に対応させる改良を施す必要がある。過去にそういった理由で新車の導入が見送られた車両があり、今回の法改正案が施行されると、国内で発売できない輸入車や逆輸入車が続出すると大騒ぎになった。ここで注意したいのは、日本の規制に通らない車両が環境に悪いというわけではないこと。ヨーロッパなど、独自の環境・騒音規制にはクリアしている車両でも、日本の規制にクリアしないものがあるのだ。こういった問題があったため、2006年末の法改正案は見送りとなった。
2008年6月24日に発表された 法改正案 では、以前の法改正案が、より現実に則したものとなっている。並行輸入自動車審査での騒音規制の問題では、海外のヨーロッパの指定機関の基準値をクリアし、証明書を提出できる車両については走行、加速騒音の検査は従来通り行わず、新規登録ができることとなった。要は、騒音規制については、ヨーロッパの規制に対応し新車販売できる車両については日本での登録を認めるというもの(ただし、日本独自の排気ガス規制に対応させる必要はある)。輸入車も逆輸入車も、指定機関での証明書を提出できれば、これまで通りの登録が可能なのだ(排気ガス規制については別。それは次回解説する)。
リプレイスマフラーについても触れておくと、単純な音量に関する数値は下記となっている。
これ以外にも、指定機関によって消音対策やマフラー構造が確認されたもの以外は新規登録や車検に通らなくなる案に触れられている。具体的には
以上のいずれかに該当するマフラーは認められないようになるかもしれない。この法改正案は、2008年中に公布され、2010年4月に施行予定となっている。リプレイスマフラーは性能や音質を大きく変えてくれるものではあるが、最近の世論を考えると、ライダーだけが環境や騒音規制を無視するわけにはいかない。今回の法改正案はかなり現実に則したものとなっているため、2年後には新たなマフラー規制がはじまると思っていいだろう。