今回のテーマは「ハーレーというメーカーについて」、「なぜハーレーはツインカムエンジンに進化したのか」、「ハーレー正規販売店はカスタムショップとどう違うのか」の3つだ。ハーレーの取り扱いをはじめて30年以上の歴史があり、黎明期から現在のハーレー乗りまでを見続けてきた老舗の「顔」である小塚さんに、この3つのテーマにお答え頂いた。
小塚●そうですね。街でハーレーを見かけることがそう珍しいことではなくなってきていますよね。実際10年前にくらべてハーレーの国内入荷数は5倍くらいになっているんです。昔は、国内にあるハーレーがそもそも少なかったので、ハーレーが欲しい人は店頭に置いてあるものを買う、もしくは希望のものを手に入れる為に入荷を待つことも珍しくなかったですね。
小塚●若いお客さんも多いですが、昔からハーレーが欲しくて我慢していたけれど、ご年配になって少し余裕ができたので買いにこられる方も多いですね。
小塚●ハーレーは昔のモデルの雰囲気を非常に大事にし続けているメーカーですので、現行モデルを見ても、何十年も前の憧れが再燃しちゃうんですよね。もちろん品質などは格段に向上してますし、変わらない「ハーレーらしさ」がある、だから若い方から年配の方まで幅広い年齢層に支持されるんですよ。 ハーレーは「こだわり」だとか「雰囲気」に関しては決して妥協しないメーカーというのがその理由でしょうね。フルモデルチェンジした際に現行車と旧式のものを並べても、じっくり見ないと違いがわからないくらいなんです。
小塚●昔に比べ、世の道路事情も変わってきていますよね。道路が整備され、日本でも高速の2人乗りが実現間近になっていて、高速巡航する機会が今後どんどん増えてきますよね。そのためハーレーも時代に合わせ進化の必要があったのですが、昔からのお客さんが求めるものも大事にしなければいけません。その「伝統」と「品質」を考え抜いて生み出されたのが「ツインカムエンジン」なんですよ。
小塚●エボリューションが出たばかりの頃も同じ様な状況でした。ハーレーを愛する方は古いモノを大事にし、新しいものをなかなか認めないところがあります。もちろん、そういったお客さんに支持されているバイクというのは、とても誇らしいことです。しかし、多くの人に「安全に」、「気持ちよく」ハーレーを愛していただくために、この「ツインカムエンジン」がどうしても必要だったんです。
小塚●まずトルクが上がり高速巡航しやすくなっています。さらにエンジンの精度も上がっています。ですからオイルにじみの頻度が格段に少なくなり、熱の伝導性がよくなってオーバーヒートもしづらくなっています。だから定期点検に「ツインカム」のハーレーが入ってきても修理箇所の数が断然少なくなっていますよ。乗り味に関しても15年間「エボリューション」でやってきたハーレーが打ち出すエンジンですから、よく考えられていますね。ハーレーの独特の「乗り味」は変わらず感じられます。
小塚●そうですね。メーカーであるハーレーがいいモノを造ってくれましたから、その新しい良さを研究し、お客様に説明することは、私達「正規ディーラー」の役割だと思っています。その努力が少しずつ認められてきたのは非常に嬉しいですね。
小塚●古いものを認め、大事に思っていただけるのは非常にありがたいことですよ。要するにお客さんが何を求めているのか、に尽きるんですが「ビンテージ」の良さを求めているのか、「安全に気持ちよく」を求めているのか、それによって我々もお勧めする年式は変わってきます。旧車を求める人はこれからもきっといらっしゃいます。ただ、トラブルなく長距離走行ができる品質を求める声が多くなっていますので、そういった方へのハーレーからの回答が「ツインカム」なんです。
小塚●今、新車を買われているお客さんは、初めてハーレーに乗る人・初めてバイクに乗る人が多くなっています。そういった方たちに「エボリューションの振動はこういうものなんです」、「旧車のエンジンのかけ方は…」って説明しても、なかなかイメージしづらいものですからね。
それでも、どんどんハーレーが好きになって、旧車をご自分でメンテナンスしたいと思う人もいます。でも、やはり新しいお客さんは「高品質な」モノを求めていますし、私たちもそれに答えていく必要があります。何度も言うようですが、ハーレーは伝統を大事にしていますが、昔のままのバイクを当時のラインで生産し続けるメーカーではありません。常にお客様の方を見て、皆さんの求める品質や要望に応えていくメーカーです。だからこそ、品質は向上しつつも変わらない良さがあるんです。そういうメーカーの製品に乗っているから、お客様はご自分のハーレーに誇りを持っていただけるんだと思います。
小塚●それもハーレーの良さですね。国産メーカーさんではカタログ落ちした車種のパーツは10年も持っていませんね。ハーレーだと、ショベルヘッドなどの旧車修理をディーラーに持ち込まれても対応できます。探せばきっと、お好みのパーツが見つかるはずです。逆にパーツが多すぎて悩んでしまう人もいるくらいです。そういうバイクを販売できることは本当に嬉しいですね。ビンテージから最新式まで対応できるディーラーネットワークを持つメーカーは他にありませんよ。
小塚●そういった自負は各ディーラーすべてが持っているでしょうね。私達はハーレー・ビューエルを愛していますので、多くの人に楽しんでいただけるよう、お客さんからの声を大事にし、それを確実にメーカーに伝えます。そういう積み重ねが「ハーレー文化」を育ててきたんだと思います。
小塚●もちろん応えてくれています。例えばスポーツスターは、確実に日本からの要望が反映されて日本人でも乗りやすくなっています。アメリカも日本を意識して、よりいいハーレーを造ってくれています。
小塚●エピソードというほどのものではありませんが、ハーレーを販売した後でもお店に来てくれること、それが一番嬉しいんですよね。車のお店でもバイクのお店でも、きっとそうだと思うんですが、販売したあとに、お客さんが楽しんでくれているのかな、ということが、お店の一番心配することなんです。だから、私達が販売したハーレーに乗って、お店に遊びにきていただけると本当に嬉しいんです。中にはツーリングの帰りにお土産を買ってきてくれるお客様もいらっしゃるんです。そういった、お店とお客さんとの絆が感じられる瞬間があることが幸せですね。
小塚●ハーレーはただのバイクではなくて、乗っている人のライフスタイルを広げてくれるモノですね。しかも自分だけではなく、周りの人も巻き込んで変えてくれる魔法のような乗り物ですよ。バイク大国のこの日本で、外国製品であるハーレーがこれほど多くの方に認められているのは本当にスゴイことなんです。たぶん「乗り物」であるところを越えた「何か」が評価されているんだと思います。
小塚●これからハーレーに乗られる人は充分にハーレーを楽しんで欲しいですよね。楽しみ方はいくらでもありますから。毎日の通勤で楽しむ、新しいカスタムにチャレンジして楽しむ、車庫で眺めているだけでも楽しい乗り物ですから。自分なりの楽しさを是非見つけて欲しいですね。
新しいモノは何かと批判の対象になりがちだが、自信を持って「ツインカム」を送り出したメーカーと、自信を持ってそれを紹介する「正規販売店」、この堅固なタッグがハーレー文化を守り進化させていっている。「正規販売店」の「正規」という文字にはハーレー文化を担う責任も含まれているのかもしれない。小塚さんのお話からは、それほどの責任感を感じることができた。(ターミー)