これから紹介する、ネイさんは「ミャンマー」出身。96年にミャンマーの大学を卒業、すぐに来日し、現在まで8年間「ラッキーウイング」のスタッフとして働いている。彼の仕事への情熱はすごい。彼はペイントを得意としているが、それこそお客さんのイメージを聞きだすためならいくらでも時間を割いて微妙な色の具合まで聞いてくれる。お客さんがどんな色で、どんなデザインを求めているのか。それは、自分の中のイメージを、お客さんと同調させるために。そしてお客さんの笑顔をみたいがためにという。彼のその仕事への情熱の根源とは。
ネイ●「ラッキーウイング」に勤めはじめたのは96年からですね。最初はひたすらバイクの洗車だけをしていました。最初、洗車は大嫌いでしたが(笑)、すぐに好きになったんです。というのも、洗車は実に奥が深い。プロが洗車をすると、中古のバイクもまるで新車のように綺麗になります。今は、1台あたり3時間ほどで綺麗にできますが、新人の子に納得できるレベルまで洗車をさせると丸一日はかかるんですよ。
ネイ●そうですね。洗車だけの日が2年間続きました。でもある日、急に社長からエンジンのかからない「Kawaaski ゼファー」の修理を任されたんですよ。初めてメカニックとしての仕事をもらえたんです。不安もあったけど嬉しかったですね。その時のことは今でもはっきりと覚えてますよ。キャブをバラす仕事でしたが、試行錯誤の結果なんとかできました。その日以来、整備やカスタムペイントも徐々に担当させてもらえるようになりました。
ネイ●ぐんと仕事が面白くなりました。昨日できなかったことが、今日はできるようになること。整備やカスタムでは、そこが一番楽しいですね。経験を積んで、昔はわからなかったトラブルの原因が今は何となくわかる。日々、自分の成長を感じることができるんです。
メカニックには技術以外の知識も必要なんですよね。バイクはメーカー別でそれぞれ癖があるんです。メーカーや車種ごとの癖を知って、それに合った仕事をしているとき、自分の腕が「絶妙だ」と感じられる時は気持ちいいですね。経験を積むことで勘みたいなものが磨かれ、トラブルの答えがなんとなく見えてくるようになるんですよ、そんな時に自分の成長を、少し感じますね。
ネイ●バイクの整備をやりはじめて、バイクのことが少しわかってきた4年目くらいですかね。車の整備に興味を持ったことがあるんです。ミャンマーに戻って仕事をするとすれば、車の整備の仕事が多いんですよ。でも、車はわからない。ボンネット開けてもさっぱりわからないですから(笑)。わからないというより、知ろうと思わないのかも。バイクはこんなに知りたいのにね。バイクが好きなんでしょう、やっぱり。今は、バイクをもっと追求していきたいという気持ちが強いですね。
ネイ●この仕事を初めて以来、守っていることがあります。それが「絶対に、いい加減な仕事はしない」ということなんです。お客さんが僕を信頼してくれているという責任感と、僕自身の仕事への誇りのためにも絶対に手は抜きません。もちろん、毎日何台ものバイクの作業していると、つい手を抜いてしまいそうになります。でも、一回手を抜いてしまうと、いい加減に仕事をする癖がつく。それは絶対に私にはあってはならないことなんだと、そう自分に言い聞かせています。それに…なにより、お客さんには『おお! すごい良くなった』と喜んで欲しいですしね。
ネイ●そうですね、楽しいですよ。楽しいから、自分が手がけたハーレーには、すべて愛着があります。そのハーレーにお客さんが乗ってお店に遊びに来てくれるのもいいし、そのお客さんと一緒にどこかに遊びに行ければもっと嬉しい。お客さんが気持ちよさそうに乗っているのを見たり、自分が造ったものが調子よく動いているのを眺めたりするのは気持ちいいですよ、ほんと。これからもお客さんが無理せず気軽に乗れるハーレーを造って、それでお客さんと一緒に遊びに行けたらいいな、と思います。いやぁ、こんな話をしていると造り出したくなっちゃいましたよ。
いつだって手を抜かない。簡単なようでそれが一番難しいように思う。私自身はできているのか正直、心が痛いくらいだ。その責任感と仕事への情熱を、私自身もどこかで感じられたからこそインタビューをお願いしたいと思ったのだろう。彼のように思うバイクショップスタッフが、この先もっともっと増えるのならばと思う。きっと日本中のライダーたちが、もっと幸せになれるだろうから(ターミー)。