VIRGIN HARLEY |  松島 隆司(エムシーエフ株式会社代表)インタビュー

松島 隆司(エムシーエフ株式会社代表)

  • 掲載日/ 2005年03月20日【インタビュー】

ハーレーインタビューの画像

「駐車場法」という法律
この法律ではバイクは法の対象外なんです

今回ご紹介させていただくのはエムシーエフ株式会社 代表取締役 松村隆司さんだ。バイクパークやバイクガレージの「SHELLO」を運営・販売している会社と言えばお分かりになる方は多いだろう。Virgin Harleyでハーレーの盗難について記事を製作する機会が増え、盗難の現状について知りたいと思い今回松村さんにお時間をいただいた。松村さんはご自分が愛車の盗難に遭い、それがきっかけで「シェロー(SHELLO)」の開発を行った方だ、盗難に遭った1ハーレー乗りとして、盗難を防ぐサービスの提供者として、2つの立場からハーレーの盗難について語っていただいた。是非じっくりと読んで皆さんの愛車のセキュリティについて考えてほしい。

Interview

まさか自分がやられるなんて
思ってもみなかった

ー松村さんが「シェローバイクパーク」、「ロッカーシェロー」を運営・販売するエムシーエフ株式会社(以下、エムシーエフ)を創業されたのは愛車のハーレーが盗難されたことがきっかけとお聞きしましたが。

松村●エムシーエフはもともとコンピュータの販売会社でした。当時はハーレーは趣味で乗っていただけでバイク業界とはまったく関係のない会社を経営していました。自分のファットボーイが盗難されたことをきっかけにコンピュータの販売はやめて、今の仕事をはじめたんですよ。

ーどういう状況でファットボーイは盗まれたのですか?

松村●当時の会社のオフィスの地下には駐輪場がありまして、いつもそこにファットボーイを停めていました。盗難には自分なりに気を使ってはいたつもりでした。バイクカバーはもちろんU字ロック、ワイヤーロックも2本かけていましたから。ある日お客さんと飲みに行くことになって、一晩ファットボーイを置きっ放しにしてしまったら、翌日にはファットボーイはもう無くなっていました。

ー相当にショックだったのでは?

松村●カバーが剥がされて、ワイヤーが切られて転がっていたのを、翌朝見つけたのですが、最初は「何でワイヤーを切ったんだっけ?」と自分が切ったと思ってしまいました。盗難だとは思えませんでしたね。最初は何が起こったのかわかりませんでしたが、盗まれた、と気づいたときには近所中を探し回りましたよ。今思えばプロに盗まれたわけですから、近所にあるわけはないのですが、探せばどこかにあるんじゃないか、と思いたかったんですね。

ー自分のファットボーイが盗まれるかもしれない、と意識されたことはあったのでしょうか?

松村●ハーレーは盗難に気をつけなければいけない、とは聞いていましたし、自分では盗難対策はかなりやっていたつもりでしたから、まさか自分がやられるなんて思ってもみなかったですね。

ー盗まれたあとは警察には届けましたか?

松村●近くの警察署にすぐに届けました。でも盗難届を提出したら「まぁ、まず出てこないですね」と言われて。「出てこないですね」って何だよ、と非常に気分が悪い対応を受けました。警察は現場検証に来てくれるわけでもなく、自転車の盗難と同じような感覚でファットボーイの盗難が処理していくんです。「こんな対応はおかしいだろう」と思いまして、自分で二輪協会に出向いて盗難についていろいろと調べてみました。そうしたら当時、バイクの盗難は24万台もあって。日本でバイクの盗難はこれほど多いのか、と驚きましたよ。

ー盗難されたあと、ハーレーを降りようとは思わなかったのでしょうか。

松村●幸いにも盗難保険に入っていたので、新しいハーレーを購入しましたが、手数料だとか余計なお金はかかって口惜しい思いでした。ですから、新しいハーレーが届いたときは「二度と盗まれたくない」と思い、そのとき初めてバイク駐車場という存在を知りました。あんな思いは二度としたくなかったのでバイク駐車場を借りて、なんとか盗難は安心できるようになりました。

ー家の近くにバイク駐車場があったんですね。

松村●近いと言っても10キロほどは離れていましたよ。バイク駐車場まで何キロも離れたところまで原付で走って、それでやっとハーレーに乗れるわけです。駐車場を借りて安心はできましたけれど、そうしたら駐車場まで遠いことが気になったんですね。もっと気軽に乗りたいなぁ、と思ってしまったんです。思い立ったらすぐ動き出したくなる性質なので、バイクBOXを買って近くに置けないかなと考え始めました。

ー今の「BOX SHELLO」のような商品は当時あったのですか?

松村●ありませんでした。某物置メーカーさんなど、いろんな業者さんに相談してみましたよ。各社に断られてしまう中、ある北海道の業者さんだけが「松村さんのハーレーのために作りましょう!」と声をかけてくださって。でも、いざ作るとなっても、向こうにはバイクBOXのノウハウはありませんでしたので、試行錯誤でしたね。「横幅は狭くていい」、「バイクを立てておけるようにして欲しい」など相談して何とかBOXは目処が立ちました。それが「SHELLO」の第1号です。その製作と並行しながらBOXを置いてもらえそうな近くの車駐車場を当たってみました。

ー結果はいかがでしたか。

松村●「車の駐車場にはバイクは置くことができません」と言うんです。車庫証明が取れる駐車場を運営するためには「駐車場法」という法律に則って駐車場を管理する必要があります。その駐車場法をよくよく調べてみると駐車場法で定められている「自動車」とは「大型自動二輪車(側車付きのものを除く)及び普通自動二輪車(側車付きのものを除く)以外のものをいう」と書いてあるんです。国は駐車場に関してはバイクのことは考えずに政策を作っているんですよ。

ーでも二輪だと自転車の駐車場などには原付は停まっていますね。「自転車の駐車場に停めろ」ということなのでしょうか。

松村●自転車には「駐輪法」という法律があり、駐輪場が作られていますが、実はその法律でもバイクは対象外なんですよ。厳密にいうと原付だけは「駐輪法」の対象になるんですけれども。要するに日本の駐車場に関する法律では「原付以外のバイクは法の対象外」なわけですよ。このことは知っていましたか? 私はこれを知ったときは本当に驚きましたし、口惜しかったですね。

ーもうBOXは発注していたのに、バイク駐車ができないことがわかったんですね。

松村●そう。そんなこと言われても、と途方に暮れてしまいたんですが、たまたま近くの駐車場の地主さんが「置いてもいいよ」と言ってくれて。もちろん車と同じ駐車料金を払っていましたが、やっと2台目のファットボーイを家の近くに置くことができました。

ー思い出の詰まった最初のSHELLOは今も手元においてあるのでしょうか。

松村●作ってすぐの頃に雑誌に取り上げられまして、それを見た方が「どうしても欲しい」と言ってくださったので、その方にお譲りをしてもう手元にはないんですよ。

ーどんな方が購入されたのですか?

松村●福岡県のスポーツスターにお乗りの方でしたね。自分でトラックを運転してお持ちしたのでよく覚えていますよ。ご自宅にSHELLOを置こうとされていて、SHELLO用のスペースを用意してくれていました。初めてのお客さんでしたし、忘れられないですね。設置のときは皆さん嬉しそうな顔をされますし、感謝の言葉をいただけるので、未だに私が設置にお邪魔することもあります。自分の販売した商品で喜んでもらえる、気持ちいいですよ。

バイクBOXに入った車両を
盗むのは非常に面倒

ーハーレーの盗難についてお聞きします。現在のハーレーの盗難の多さについてはどう思われますか?

松村●自分が盗まれた側の人間なのでよくわかりますが、何百万円もするバイクを盗まれたら悲しいなんてもんじゃないですよ。ハーレーの盗難についての記事やホームページをたまに見ますが、一生懸命働いて、やっと買うことができたハーレーを盗まれた、そんな方のお話も読みました。何とも言葉にできないです。ハーレーはただのバイクではないですから、一緒に走った思い出も詰まっていく、そんな特別な乗り物です。それが一晩で消えてしまう、なんてひどい話です。

ー最近は原付などの盗難よりも大型二輪などのような高級車の窃盗が増えているようですね。

松村●今、日本には1300万台くらいバイクが登録されています。その中で原付を除くバイクは300万台くらい、大型二輪となるともっと少なく100万台強しか登録されていません。プロの窃盗団のターゲットになるのは、その100万台強の大型二輪なんですね。一番趣味性の強い、何者にも変えられないバイクが一番狙われるんですよ。

ーそんな盗難を防ぐためには、どうすればいいのでしょうか。

松村●外から見てなんのバイクかわからないようにカバーは必ずかけてください。カバーは実は効果的なセキュリティアイテムですから。自宅の屋内駐車場保管の場合でもアラームは当然、ロックは3つ、4つはかけた方がいいです。路上駐車は絶対にやめてください。もし自宅敷地内に置く場所がない場合は、ウチじゃなくても結構ですからコンテナのバイク駐車場を探してください。盗難で重要なのはまず「窃盗団に見つからないこと」あとは「見つけられても盗むのに時間がかかってしまうこと」です。時間をかけないと盗めないような状態だと窃盗団も手を出しませんから。敷地内にバイクBOXで保管していて盗まれないのは盗むのが面等だからなんですよ。

ーバイクガレージはセキュリティが完備されているので安心なのはわかりますが、自宅の敷地内に置くバイクBOXはなぜ安心なのでしょうか。逆に目だってしまう気がするのですが。

松村●バイクBOXに入った車両を盗むのは非常に面倒なんですよ。バイクBOXは破壊しようと思えば破壊することもできます。でも破壊するのにはどんなに早くても5分くらいはかかります。ただ破壊するにはサンダーのような専用工具で大きな音を立てて取り掛からないと無理ですね。やっとバイクBOXを壊せても扉を開けるとセキュリティのアラームが鳴ります。そのアラームはBOX内の自由な位置に取り付けられるので、窃盗団はその場所を探して音を止めなければなりません。

やっと音を止めることができたとしても、バイクはBOXの奥にチェーンで固定されています。奥まで入って、どんなチェーンがついているのかを確認して、チェーンを切る道具を持ってこなければいけません。そこまでしないと車両を盗めないんですよ。盗む側も目標を持っています。週に何台盗むだとかを考えていますから盗むのに時間がかかり、しかも目立ってしまう、そんなリスクは侵せないですよ。

ーバイク駐車場やバイクBOXがいいのは皆さんわかっているとは思うんです。でもローンなどでそこまで余裕がない人が多いのでしょう。「余裕がない人はハーレーに乗るな」と言われると返す言葉もありませんが。

松村●頑張って働いて、ローンを払って購入して、その上盗難のことを心配しなくちゃいけないなんて本当はおかしい話ですよね。バイク駐車場を借りるにしても2万円前後の費用はかかっているのが現実です。その2万円が苦しいのは私もわかっています。下手をするとローンと同じ額ですから。そんな金額払えるか、思われるのもわかります。ですから何とかバイク駐車場の価格を抑えられないか、いつもと考えていますし。それだけのお金を払っていただく価値があるサービスを、と心がけています。今、エムシーエフという企業を経営して「SHELLO」というサービスを提供していますが、私は経営者である前に一人のハーレー乗りです。自分が「SHELLO」というサービスを始めた頃の想いを忘れずに日々サービスを考えたいといつも考えます。盗難撲滅。そのために今後もがんばっていきたいですね。

プロフィール
松村 隆司
45歳。バイクパーク、バイクガレージの「SHELLO」の運営・販売を手がけるエムシーエフ株式会社を経営。2000年式FLSTF を所有。自らの盗難の経験から「SHELLO」の開発を始め、日本の盗難撲滅に奔走し、自治体よりアドバイスを求められることまで。

Interviewer Column

ハーレー盗難、聞きたくもないし考えたくもない話題だ。しかし現実には毎月多くのハーレーが盗難されている。その被害は関東に集中しているようだが、じわじわと全国にその被害は広がっているようだ。「対岸の火事」としてこのインタビューを流してしまわず、5分でいいのでご自分の愛車の保管状態について考えて、どんな対策をすればいいのか考えてみて欲しい。ハーレーは自転車ではなく、一生付き合っていける相棒なのだから家族を守るくらいの気持ちで愛車も守ってあげて欲しい。いつ自分が被害者側に回るのかわからないのだから、万全の対策は取っておいた方がいいだろう。(ターミー)

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