今回は、横浜市にあるハーレー正規ディーラー『丸富オート販売』に勤務している小山ゆかりさんを紹介する。「どうしてもハーレーに囲まれて仕事がしたくて」と、1年前に『丸富オート販売』に転職した女性ライダーだ。彼女は大型自動二輪免許を持ってはいるものの、まだ自分のハーレーは持っていない。だが当然ながら、勤務先がハーレーショップだということもあり、仕事でハーレーに乗る機会が多く、各車種の乗り味については非常に詳しい。今回のインタビューでは小山さんにとってのハーレー、女性ライダーにとってのハーレーについてお話していただいた。女性のバイク乗り、特に大型二輪にのる女性はまだまだ珍しいが、女性がバイク乗ることは実は特別なことではない、それをこのインタビューで感じていただければと思う。
小山●いえ、実は車が好きだったんです。バイクに乗り始めたのは遅くて、4年くらい前からですね。当時、ハーレー乗りの友人がいて、時々後ろに乗せてもらってて。エンジン音を聞いてかっこいい！…と。それで、跨らせてもらって、すごいって、アッという間に洗脳されてしまいました（笑）。 本当に「こんなバイクがあったんだ！！」と思いましたね。それまで私が持ってたバイクのイメージとは全然違って、その後すぐに中型免許を取りに行ってしまうくらい、衝撃的な出会いでした。でも、免許を取るときは苦労をしましたよ。最初はバイクが重くて仕方ありませんでした。教習は本当に大変だった。ただ「仲間と一緒に走りたい、バイクに乗りたい！」って、その思いがあったから、頑張れたんだと思います。
小山●本当に大変なのは最初だけなんですよ。バイクって腕力で乗るものではないですよね。基本的な乗り方をきちんと教えてもらい、練習すれば、コツがわかってきて段々乗りこなせるようになります。「155.6cm」しかない私でも、試乗車のヘリテイジでショップツーリングに行ける程になりましたから。
小山●さすがに最初は重く感じましたね。周りからは「全然乗れてない、乗れてない（笑）」とからかわれましたが、なんとか走ることはできました（笑）。それで自信がついたってわけじゃないですけど、ハーレーを買うときには『FXSTC(ソフテイルカスタム)』を買いたいですね。私が尊敬している藤井という方が乗っている『FXSTC』を見て、私はハーレーに目覚めちゃったから。
小山●免許を持っていない人に話しかけられることがありますね。「免許はどうやったら取れるんですか？」なんてね。『女性でバイクに乗りたいと思っているけど「自分には無理だ」と、あきらめている人はいっぱいいるんだな』とこういう時に気づかされますね。だから「『155.6cm』の自分でも乗れているから、大丈夫ですよ」って応えていますね。そんな出会いから新しい女性のライダーが増えたらいいなぁ、と思います。
小山●「バイクが重い」、「足が着かない」。女性がバイクに乗る際の最大の不安はこの２つですね。バイクの重さは走り出すと平気、倒しても起こすのにはコツがあったり、また足つきが心配であれば車高を下げたり、とその不安を解決する方法は実はたくさんあるんです。そういった不安は、ショップのスタッフに任せておけばなんでもアドバイスしてくれるので、それほど気にすることはありませんね。
小山●それも多いですね。私の家もそうでした。「バイクに乗りたい」と両親に伝えたとき、母は賛成してくれましたが、父は反対していましたね。
小山●秘策ほどのものではないですよ。「バイクに乗りたい」ってことを何度も説明しました。最終的には「そこまで言うなら、決意は固いな」と認めてくれました。こればかりは何度も説得するしかないですね。
小山●確かに事実はそうなんですよね。ただ、女性のそういった不安を経験したことがない人から、そう言われても不安はなかなか消えないんですよ。私は女性ですので、そういった不安を実際に経験しています。その不安を理解した上で具体的に解決方法を話し合うことができるんですね。相手の気持ちを理解できる、それが女性スタッフの強みですから。
小山●ツーリングすることはよくあります。実は私、女性だけのバイクチーム「シオン」を運営してますから。まだできて1年ほどのチームなんですけどね。メンバーは17人いるんです。女性のチームってあまり聞かなくないですか？ 女性のバイク乗りがまだまだ少ないですから。「シオン」が、そういったまだまだ少数派の方が知り合える場になれば、と思っています。
小山●そういう方もいますが、まだまだバイクに慣れておらず、一人だと走るのが少し怖いので、誰かと一緒に走りたいという方も多いですね。男性と違って、女性のバイク乗りが集まってみんなで走ることって難しいんですよ。でも、たくさんの人と走るのも楽しいですよね。それを是非女性にもわかって欲しい、それが「シオン」の設立目的なんです。
小山●男性の方が速く走る人が多い気がしますね。女性はスピードを出して走る人よりは、どちらかというとのんびりと景色を楽しみながら走る人の方が多いかも。男性は、ほとんど休憩をせずに走るのが好きな人が多い気がするんですよ。休憩してもコーヒーを飲んでタバコを吸って「はい、休憩終わり」っていう人が周りにいませんか（笑）。
きっと、そういう人は、走ることが一番好きなんですよ。私はその気持ちもよくわかるんですが、女性はたぶん、休憩時間も、バイクに乗っているときと同じように楽しんでいるんですね。休憩時間もツーリングのうちに入っているんですよ。もちろん、みんながそうというわけじゃないですよ。私なんかは男性と一緒に走り回って、それに慣れてしまったので休憩はあまりしないですからね。
小山●手の届くところにありますから、夢の乗り物ではありませんね。自分に取ってのハーレー…何と言えばいいんでしょうか。もう自分でも「馬鹿かな」って思うくらいハーレーが好きですよ！
「もっとたくさんの人たちにハーレーの良さを伝えたい」小山さんはインタビュー中に何度もそう言っていた。お店にいる間も、お店に来られるお客さん全員に挨拶をしていた。何気ない部分ではあるが、そういったところに小山さんの人柄が垣間見えた気がする。女性スタッフだから女性ライダーの気持ちが理解できる、それだけが小山さんの素晴らしいところではない。「ハーレーの良さをもっと広めたい」その熱意があるため、お客さんの立場に立ってモノを考えることもできるのだ。それができているからこそ、実際に多くのお客さんからの信頼を得ているのだろう。（ターミー）
