またがった際の足つきの良さはさすがのフォーティーエイト。XL1200CX ロードスターを除くスポーツスターモデルは揃ってローダウン仕様なので当然といえば当然か。シート下のサイドカバーがやや出っ張っているところが足つきにも影響するが、ここは個々人でチェックしてみて欲しい。
フラットなバーハンドルにフォワードコントロールステップという組み合わせから、またがってハンドルに手を置いた際のライディングフォームは”くの字”姿勢に。そのままイグニッションオンでエンジンに火を入れ、リッターオーバーのパワフルな鼓動とともに走り出す。剛性アップした49mmフロントフォークにキャスト化した前後ホイールというフットワークからか、スポーティでありながらズシリと地を這う重量級の走りを味わわせてくれる。
フォーク径が太くなったためトリプルツリーも専用設計のものとなり、結果フロント周りの重量は2015年以前のものより重くなっているのは事実だろう。しかしながら以前よりもしなやかに動くシングルカートリッジ式サスペンションシステムがその重さを感じさせない性能を付与している。2015年以前のフォーティーエイトだと、交差点などでの右左折時にフロントタイヤが切れ込んでくる挙動が見受けられたのだが、このバージョンアップによりそうした不安も解消された。
加速しスピードに乗ってくると、フォワードコントロールステップゆえに踏ん張れないことからライダーの体が走行風を受けて後ろにずり下がろうとしていく。そうするとハンドルにしがみつこうと手に力が入ってしまい、ハンドリングから軽快感が失われてしまう。これではせっかくのシングルカートリッジ式サスペンションも性能が半減し”宝の持ち腐れ”になる。
フォワードコントロールのまま長距離ランを敢行すると、両足を突き出したまま走ることで体重が臀部に集中し、結果給油ポイントともなる100kmを巡航した後には腰に違和感を感じてしまう。一方でこのライディングポジションこそフォーティーエイトらしさでもあるので、できればそのスタイルは崩さずにおきたいとも思う。
ツーリング仕様およびライディングの安定感を取るならステップ位置をアイアン883のようなミッドコントロール仕様にするのが得策だ。「いや、フォーティーエイトらしいスタイルは生かしたい」のであれば、ステップはそのままにライダーの体をホールドしてくれるガンファイタータイプかキングアンドクイーンタイプのシートに交換するのがいいだろう。
ECMのセッティングは以前と比べても向上しているが、ロングツーリングでの使用となると、容量7.9リッターのピーナッツタンクでは心もとないところ。ガソリンスタンドを気にしながらの旅になるのは致し方なしか。都心部を流すなら何の不安もないが、エンジン排気量は1,202ccとかなりパワフルなことから、ストリートバイクとして使うにはオーバースペックな感がある。883ccモデルと比べてもギア一段上がった際のパワーが大きいので、コンパクトに取り回すにはそこそこのテクニックを要するモデルである。
コツさえ掴めば、その独特のライディングに病みつきにもなる。オートバイとして見れば「なんでこんな仕様に?」と疑問を抱いてしまう箇所があるフォーティーエイトだが、あえてそこを楽しむことこそ、このモデルの本質を知ることに繋がるのだろう。