カーボンスチールという特殊素材を用いた新設計フレームの恩恵か、ソフテイルフレーム化したローライダーの取り回しは心なしか軽やかだ。311kgあったツインカム時代と比べると、車重は300kgと11kgも軽くなっている。5kgの米2袋分と考えると、驚異的な軽量化と言える。
取り回しの軽さ、そして軽量化のポイントとなっているのがフロントディスクブレーキのシングル化だろう。ディスクとキャリパーがひとつ減ったことで、車体はもちろんハンドリングが軽くなったようだ。一方で、ツインカム以上にパワフルでスポーティな能力を発揮するミルウォーキーエイトエンジンとの相性や如何に、というところか。
そんなことを思いながら、跨ってみる。ハンドルはプルバック型ながら窮屈なポジションとはならず、ローライダーらしいシルエットとともにニュートラルなハンドリングを約束してくれる。ステップ位置はミッドコントロール型で、実際のフットポジションは印象以上に膝が高く持ち上がる。排気量1,700cc超えのソフテイルながら、まるでフリスコスタイルのような姿勢にハーレーのDNAを感じずにはいられない。
セルスタートとともに走り出す。しなやかでパワフルなミルウォーキーエイトの挙動は、先代ツインカムにはなかったスポーツバイクのようなキレの良さを味わわせてくれる。シティユースなら3速ギアで法定速度を超えかける速度域に達する。操り方次第と言えばそれまでだが、ストップ&ゴーが多い都心部で乗りこなすには慣れが必要そうだ。
ただ、この独特のアクセルワークが操れるようになれば、街中でのライディングはグッと楽しいものになる。それを実現しているのがライディングポジションだ。リアホイールのハブを中心軸とするリジッド型のソフテイルフレームに対して、高めの着座位置とすべく分厚く作り込まれたシートにやや持ち上がり気味のミッドコントロールステップ、そして気持ち絞り気味なプルバックハンドルバーの3点が、ホイールベース1,630mmという長さのローライダーを操るうえでぴったりなポジションとなっており、ステップワークで乗りこなす楽しさを体感させてくれる。
とりわけコーナリングでの操作時にその絶妙さを感じさせられる。ハンドルバーには手を添える程度で、アウトから一気にコーナーに入り込むタイミングでイン側のステップを踏んでバイクを倒し込む。ハンドリングはあくまで行き先を示してやる程度の操作で、むしろしっかりスロットルを開けてコーナーを攻めつつスピードアップを図っていく。ネイキッドなスポーツクルーザーに搭載されたミルウォーキーエイトエンジンがその性能を如何なく発揮し、味わったことがないパワフルな走破性とともに加速しつつ一気に走り抜けていける。160mmから180mmと太くなったリアタイヤがスポーツライドを阻害するかもと懸念していたが、実際はまったくの杞憂だった。
無垢な車体に備わるミルウォーキーエイトは、ハイウェイライドでもその力強さを見せつけてくる。2500回転を超えたところからさらに伸びやかにスピードアップ、それも他メーカーバイクのようにクイックでなく、あくまで太く、滑らかに。長いホイールベースと180mmリアタイヤの恩恵を受けての直進安定性と相まって、心地よいスピードライドをどこまでも堪能できる。
この走りを支えているのは、他ならぬ新ソフテイルフレームだ。シート下に専用モノショックを備えるカーボンスチール製フレームは剛性はもちろん、路面状況に応じてしなやかに衝撃を吸収する柔軟性をも持ち合わせる。シングルカートリッジ式フロントフォークの高い性能とも合わせて、かつては「サスペンションなんて備わっていないよう」と揶揄された時代のハーレーのイメージを吹き飛ばすクオリティを見せつけてくる。このローライダーなら、旅仕様に積載力をアップさせてもツーリングバイクとしてのパフォーマンスを十分発揮してくれるだろう。
すべてのニューソフテイルモデルに乗らせてもらったわけではないが、ミルウォーキーエイトエンジンを積んだネイキッドクルーザーという組み合わせのなかではもっともバランスが良いバイクとさえ思わされた。どうしても歴代ローライダーの偉大さもあって色眼鏡で見られがちだが、ことオートバイとしては実に乗りやすくライディングプレジャーに溢れた一台と言える。