最低地上高150mm、シート高785mmという数値は全ラインナップ中でも上位に位置する高さだ。当然またがった際の足つきは、小柄な人にとっては決して良いとは言い難い。身長174cmの筆者ならベタ足だった。しかし”足つきが良いか悪いか”よりも、そのポジションにロードスターのキャラクターが隠れている。
それは「尻上がりなポジション」であること。ほとんどのスポーツスターが16インチというリアホイールを備えているなか、このロードスターはクラシックスポーツスタイルの再現から特別に18インチホイールを装着している。ホイール径が大きければ当然リアが高くなり、結果ライディングポジションはどっしりと座り込むクルーザーモデルのそれとは真逆の前傾姿勢となるのだ。1970年代スポーツスターのオマージュとしつつレーシーなポジションとなっているのは、開発陣の意図するところだろう。
その前屈姿勢をさらに強めるのが、両サイドが垂れ下がったコンチ型のバーハンドルだ。カフェレーサーのマナーであるセパレートハンドルではないが、その角度によって両腕はグッと下に向く仕様となり、よりレーサースタイルのポジションとなる。ハーレーダビッドソンにクルーザーテイストを求める人にとっては違和感でしかないだろうが、ハーレー流スポーツバイクの在り方だと大らかな心で受け止めることが求められるモデルである。
アイアン883などと同じく、ちょうど両足を降ろしたところに来るミッドコントロールステップだが、このロードスターのそれはアイアン883以上に外に出っ張った仕様となっている。これは「出っ張らせることでバンクセンサーと路面を早めに設置させたい(ハーレーダビッドソンモーターカンパニー開発陣談)」とのこと。「そこまで無理して倒し込まなくても、きちんとバイクを操ってあげて」というメッセージでもあるわけだ。
小気味良いエンジンフィーリングとともに走り出したロードスターは、ほどよいスロットルワークで都心を駆け抜けていく。1,202ccというリッターオーバーの排気量エンジンなだけに、高回転域で回してやるのがベストなモデルだと考えると、ストップ&ゴーが多い都心部でその本領を発揮させてやるのはなかなかに難しい。かといって、ただ高速道路をまっすぐ走らせるだけではそのフットワークが活かされない。
やはりロードスターの主戦場は、ハイウェイやワインディングロードとなろう。やはりロードスターはフルフェイスで攻めてこそのマシンだ。コーナーに飛び込む際はしっかりとコースを見極め、その流れに適したスピードで飛び込みつつステップワークでバイクをバンクさせ、立ち上がりと同時にスロットルを開けてスピーディにクリアしていく。ばっちり決まれば言い表せない快感が得られる、ハーレーらしからぬバイクと言えよう。
そんな楽しさを持つマシンでありながら、何とも寸止めされているような気分になる仕上がりでもある。ミッドコントロールステップをはじめ、19/18というホイールサイズながら鉄製なのでやや重ったるく感じたり、「リアタイヤも150mmではなく130mmまで細くしていたら旋回性が上がったのに」「エボリューションエンジンのセッティング(チューニング)がもう少し細やかな設定になっていれば」という感想が頭をもたげる。
それらすべてを含めて、やりすぎない、攻めすぎないよう組み上げられているのか?と思わされたりした。もちろん好意的に受け止めての感想で、実際にロードスターのオーナーとなったら「もっと攻めた走りができるバイクにしたい!」と、さまざまなカスタムプランに挑戦することだろう。そう、カスタムという楽しみ方を前面に押し出してくるハーレーダビッドソンらしいモデルだとも言えるわけだ。
めいっぱいカスタムしたとて、他メーカーのスポーツバイクには一歩届かないところが限度とも言えるロードスター。その一線を超えたいのならそのまま乗り換えてしまえばいい。しかしこの一歩手前、”寸止めの美学”こそハーレーダビッドソンたる証と言えるものなのだ。