2年前の2016年5月、何の前触れもなく鮮烈デビューを果たしたXL1200CXロードスター。かつてスポーツスターファミリーにはXL1200SやスタンダードなXL883、XL883Rなど車高が高く走行性能を最大限に生かすスポーツライド向けのモデルがラインナップされていたが、それも昔の話。2015年に”最後のスポーツモデル”と言われたXL883Rがカタログ落ちしてから、スポーツスターファミリーのモデルはいずれも最低地上高が低いローダウンモデルで占められるようになった。
「ハーレーダビッドソンはスポーツスターでスポーツライドを楽しませる気がないのか」。そんな声がチラホラと聞こえ出した矢先のロードスター デビューだっただけに、スポーツスターフリークは大いに色めき立った。それも、XL883R以上に”攻めたモデル”としてドロップされたのだから、ハーレーのみならず他メーカーバイクに乗るライダーも注目するモデルとなった。
欧米で話題を集める「カフェレーサー」ブームに乗り込むモデルとして開発されたロードスター、ダブルディスクブレーキングシステムにミッドコントロールステップといった かつてのXL883Rに見られた仕様を踏襲しつつ、フロント19/リア18インチというサイズを実現したオリジナルホイールにシングルカートリッジ式倒立フロントフォークと、これまでにないフットワークを特別に付与されていたのだ。さらに、カフェスタイルを彷彿させる垂れ下がったコンチ型のバーハンドルにガンファイターシート、ショートカットされたリアフェンダーなど、フォーティーエイトやアイアン883といった既存モデルとは大きくかけ離れたキャラクターモデルとなっている。
ビキニカウルこそ備わっていないが、全体的にブラックアウトしたボディやマシンコンセプトなどから、思い出されるのは1977年に登場したハーレー初のカフェレーサーモデル XLCR だ。無駄のないボディラインに同径ホイールサイズ、そして高められたスポーツ走行性能と、XLCRをインスパイアしたモデルであることに疑いの余地はない。スポーツスターの冠である「XL」の血脈であることも、説得力を高める。専用のセパレートハンドルにバックステップキットが開発されているのも、ロードスターの個性を強めんとする狙いだろう。
「ここはあくまでスタートラインだよ」と、乗り手を刺激してくるようなロードスター。”スポーツバイクとして”という明確なテーマ性を有しているからか、見れば見るほど「ハンドルはこんな感じにしたい」「ステップを思い切ってバック仕様に」「マフラーはメガホン型が似合いそうだ」といったイメージがどんどん湧いてくる。ブレない世界観という点も、ロードスターの魅力と言えよう。
ハーレーダビッドソンのなかで唯一といっていいスポーツバイクに仕上げられたロードスター、それでは実際に試乗した感想を、忌憚なき感想でまとめていこう。