軽い、速い。走り出した際の最初の印象がこれだった。軽量化して240kg前後になってはいるものの、普段乗っているスポーツスター(平均車重は約260kg)と比べると、238kgという車重はハーレーのラインナップ中でも軽量の部類に入る。それに加えて、シャープで切れ味鋭い水冷Vツインエンジン「レボリューションX」が生むスタートダッシュの良さとクイックな挙動が、目指したとおりのスポーツバイク仕様であることを体感させる。
割と混雑気味の東京都内を駆け抜けていく。3速パーシャルで時速60kmを軽く超えていく挙動は、はっきり言ってハーレーの他モデルにはないもの。というのも、エボリューションエンジンやミルウォーキーエイトといったパワフルなエンジンが生む爆発力で推進させるのとは違って、軽量モデルをシャープに走らせるという低燃費仕様だからだ。ストリート750を初めて試乗した際も感じたことだが、改めてこれまでのハーレーダビッドソンにはないパフォーマンスを有している。
跨った際のポジションは好みが分かれそうだ。身長174cmの筆者だと、765mmというシート高は決して高い方に入らず、足は膝が曲がってのベタ足。それでいてステップ位置が思いのほか高い設定のため、膝そのものが90度近く曲がるほど高くまで上がる。おかげでその膝がフューエルタンクに描かれた「HARLEY DAVIDSON」のロゴを隠してしまっており、ここは少々残念なところ。
ドラッグ仕様のハンドルバーも思っていた以上に幅広なので、ライディングコントロールをタイトなものにはしていない。むしろ、専用のバーエンドミラーのおかげでサイドの張り出しが気になり、狭いところを通り抜けるのにかなり気を使う。メーカー生産モデルであるがゆえの幅広バーなのだとは思うが、ここは左右1cmずつ切り落とすぐらいのことをした方が、ストリートバイクらしさ、XLCRらしさが出るように思える。
エンジンをはじめ、鉄製パーツが多様されているスポーツスターよりもコンパクトで軽量に仕上げられているストリートロッドだが、普段(スポーツスターで)慣れた市街地を走ってみるも、思うほどスポーティな印象が薄かった。特にコーナリングでぐいっとバンクさせてみたが、イメージしていたよりもやや外に膨らむ印象。
「思っている以上にホイールベースが長いのでは?」とスペックを見返してみたところ、スポーツスター・アイアン883と5mmしか差がなかった。レイク角がタイトになり、よりバンクしやすいモデルになったイメージが強かったストリートロッドだが、それでもまだクルーザー色が色濃く残っているようだ。ボディそのものが軽量なだけに、少々もったいなく思える。
その流れで言うと、ストリートバイクという点から見るならば160mmというリアタイヤの幅も狭くしたいところ。ロードスターでさえ150mmで、私のように旋回性を高めるため130mmという細いタイヤを選ぶライダーは割と多い。ホイールベースに並んでこのストリートロッドの旋回性を抑えているのがリアタイヤ幅と思うと、むしろ「タイヤを交換するだけでパフォーマンスアップする」と好意的に捉えるべきか、とも。
信号待ちの際に気になったのが、左右の車体バランスだ。無意識のうちに、かなり左側に傾けて足を着いていることに気づいた。この原因は、車体右側に設置された2in1エキゾーストにある。要はこのマフラーそのものがかなり重いのだ。ただ、実際に走り出すと「バイクが右寄りに走っていく」ということはないので、走行時のバランスは保たれている模様。「とすると、マフラーを交換したらこのバランス自体が変わる?」という思いがよぎった。これはマフラーだけに限らず、タイヤを変えた際にも起こり得ることだろう。実際にカスタムされる方がショップやディーラーなどと相談してみていただきたい。