意外なほど足つきは良い、というのが跨がってみての印象だ。シート高は680mmと、ヘリテイジクラシックと同サイズ。スポーツグライドというから踵が浮くほどの高さかと思っていたのだが、リアに向けてシルエットが下がっていくリジッド型フレームがベースなのだ、身長174cmの筆者でも膝にゆとりを持たせつつのベタ足なのも納得だ。シートの幅がやや広くガニ股になりがちなのは、いつものハーレーだと笑って済まそう。
引き起こしてみての印象は「軽い」。317kgという重量は決して軽いうちには入らないが、歴代ソフテイルとの体感差は明確で、フェアリングやパニアケースを備えていることを思えば驚きに値する。それも、カーボンスチール製の新型フレームの恩恵であろう。
火が入れられたミルウォーキーエイトのパワフルな鼓動を感じながら走り出す。とにかくギアをひとつあげるたびに生み出されるパワーが強大で、最新版Vツインエンジンをダイレクトに体感できるのは間違いない。それでいて、新型フレームがそのパワーを持て余すことなくしなやかに受け止めてくれるので、ライディングそのものが暴れることはない。
とはいえこのサイズ感と重量、そして排気量1,745ccというビッグエンジンを積んだバイクである。シティユースでは慣れていないとなかなか安定させづらい。特に道が混雑している都心部だと、バランスを取りながらそのパワーをコントロールするのに苦労する。パワーは十分すぎるほどあるので、1速パーシャルでも大体の流れは引っ張れる。流れが良くなれば2速にあげて……という乗り方で、3速にあげるのはかなりスピーディな流れができてきたときか。やはりミルウォーキーエイトのマシンを操るには慣れが必要みたいだ。
やはり本領を発揮するのは、ハイウェイだ。3速、4速、5速……とギアをあげていくと、ミルウォーキーエイトは水を得た魚のように秘められた潜在能力を発揮し、凄まじい勢いで空気を切り裂いていく。本エンジンは6速ミッションだが、そこまでギアをあげたハイウェイクルーズとなると、ここではちょっと書けない速度域に達してしまう。5速パーシャルでも一般的な高速道路の法廷速度を軽く超えると言えば、大体は想像していただけるだろうか。
ここで気になるのが「フェアリングの効果」と「新型フレームの性能」であろう。まずフェアリングだが、速度域があがって走行風が強くなるにつれて、やはりヘルメット(頭部)への風圧は相当なものに。この時点で、フェアリング本来の機能はあまり果たされてはいない。まったく効果がないわけではないが、ハイスピードクルーズに適した構造とは言い難い。このフェアリングを5.5インチアップさせるウインドシールドがカスタムパーツとして出ているので、風防機能を重視する方はこちらをチェックされたし。
そして新型フレームの恩恵だが、想像していたより衝撃を吸収してくれる印象だ。もちろん時速100km近いスピードでハイウェイのくぼみや段差に落ち込むとかなりの衝撃をもたらすが、ある程度舗装されたストレートロードを突き進むことを前提としたロードバイクであることから、必要にして十分な性能だと言える。
1,625mmというロングホイールベースからなるロー&ロングな車体ゆえ、コーナリング性能を得意とするとはとても言えないが、それでも43mm倒立フロントフォークのしなやかな動きと18インチフロントホイールという組み合わせもあって、思っていた以上にコントローラブルな旋回性を味わわせてくれた。
フォワードコントロールステップの位置もかつてのワイドグライドやブレイクアウトほど足が突っ張らないので、こちらもコーナリング時にはグッと踏み込んでやることができる。さらに、かなりバンクさせてもステップやマフラーを擦ることはなかった。これは車高がしっかり確保されている証と言えよう。ここがミッドコントロール仕様になればコーナリング性能はグッとあがるだろうが、バンク時に擦る可能性があることを思うと、このままでも十分面白いか、とも思う。
全体的には、直線番長感が残るメガスポーツクルーザーといったところか。遠方へのロングライドを主な目的とするなら今のままでよし、ワインディングに持ち込んでロードスポーツとして楽しむなら、180mmあるリアタイヤを150mm仕様にしてみるとさらに面白くなる、と期待させてくれるモデルと言えよう。
限定モデルとして登場したダイナ・ローライダーSも、こうした二面性を楽しませてくれる希有なモデルだった。そのローライダーSの後継モデルとして見ても面白い一台と言える。