またがって車両を引き起こした瞬間の感想は「軽い」。2017年モデルと車重を見比べると、347kgに対して330kgと、何と17kgも軽くなっていた。スイカ一個が約5kgと言われており、つまりはスイカ3個分も軽量化されたのである。これはすごい!サドルバッグの意匠など少なからずの変更点はあるものの、基本的なスタイルが変わっていないことを考えると、新型ソフテイルフレームの恩恵に他ならない。慣れていない方には330kgという重量は決して軽くはないかもしれないが、ヘリテイジがこんなに引き起こしやすいというのは嬉しいところだ。
ソフテイルスリムと同じくシーソーペダル仕様でなくなった点には少なからずがっかり。フットボードが備わるツーリングバイクであることを考えると、ブーツを痛めないシーソーペダル化はある意味必須項目とも言える。オプション(有料)扱いではあるが、ヘリテイジを購入される方は最初のカスタムプランに必ず組み込んでいただきたい。
以前までフューエルタンクのメーターダッシュに備わっていたイグニッションスイッチはなくなり、スイッチボックス右側のセルスターターのみで始動させる。ソフテイルからツアラーモデルまですべてセキュリティフォブキーが必要なので、一見すると不安なセキュリティシステムも、このキーをしっかり保有しておけば心配はいらない。
走り出してすぐに感じたのは、ハンドルポジションとウインドスクリーンの高さだ。まずハンドルだが、2017年以前のモデルと比べると低く、そしてプルバック化されていることに気づいた。以前よりもニュートラルで腕にゆとりができるポジションになっているのだ。これなら小柄なライダーでもハンドリングしやすいだろう。
そしてウインドスクリーンの改善だ。2017年モデルだと、ちょうどまたがった目線の先にウインドスクリーンの切れ目がきてしまい、上下の風景が分割されるような違和感があった。今回このウインドスクリーンが小型化したことで切れ目が低くなり、視界を遮られるということがなくなったのだ。実際に走っていると、しっかりとウインドプロテクション効果を発揮しつつ良好な視界を確保してくれている。またスクリーンの下半分が真っ黒になっていることで、路面による太陽光の照り返しを防いでくれている。特に暑い時期に効果を発揮してくれるもので、ライダー目線での正常進化だと評価したい。
スロットルを開けてスピードに乗せていく。さすがはミルウォーキーエイトエンジン、しかも114ci仕様だ。エンジンの底から湧き上がるようなパワーが軽やかにマシンをグイグイと押し上げてくる。ギアを上げるたびに一段、また一段とパワーアップしていくのが手に取るようにわかる。
街中だと、3速ギアで過不足なく流せる。いや、むしろ持て余すほどで、2~3速で流しつつブレーキングで調整するような走り方がバランスを取りやすい。車体が軽量なので、重々しいハンドリングにならずスポーティに走り抜けられるのが楽しい。何度もツインカム仕様に乗った者としては「これがヘリテイジ?」(良い意味で)と思うほどのスポーツライディングである。
そして本領を発揮するのは、やはりハイウェイに入ってから。そう、4速で時速100kmに達してしまうので、5~6速は法定速度が時速120kmに設定されている高速道路での使用にとどまるだろう。ハーレーにかける思いは人それぞれではあるが、「ゆったりとしたクルージングを楽しみたい」と考えている未来のオーナーには、107ci(排気量1,745cc)でも過不足ないと考える。確かに「大は小を兼ねる」が、「(パワーを)持て余すのでは」と言う思いが頭をよぎったら、107ciモデルでも全然問題ないとお伝えしたい。
そして、約150kmほど走ってみて、ふと気づいた。走り終えたときの疲れが軽いことに。人間、歳をとれば疲れも溜まりやすくなるもの(年配者には“釈迦に説法”かと恐縮する次第)だが、ツインカムモデルのときほど降車時の「疲れた」感が薄いように思えた。これは間違いなく車体の軽量化とエンジンフィーリングの向上によるもので、取り回しやハンドリングに以前ほど力を割く必要がなくなり、Vツインエンジンのトルクはそのままにスポーティな吹け上がりで走り出すミルウォーキーエイトがライダーへの負担を軽減しているのだ。コンパクトになったがウインドスクリーンのプロテクション機能は十分なもので、走行風での疲れも軽い。
理想的な進化を遂げた新世紀のヘリテイジ。ここから四半世紀先の未来にいる子孫にも誇れる一台だと断言したい。