前回の試乗インプレッション記事で取り上げたファットボブでは、軽快な身のこなしとシャープなハンドリングに感心するばかりであったが、ファットボーイでは印象が少し違う。もちろん、剛性を上げたシャシーとしなやかにストロークする前後サスペンションのおかげで、運動性能を従来のソフテイルより飛躍的に向上しているのは間違いないのだが、そのなかであえてフロントタイヤを160mmとワイドにし、前後17インチだったホイールを前後18インチ化するなどでヘビーなハンドリングを演出している。コーナーの進入では、車体はスムーズに寝ていかず、曲がるキッカケを与えなくてはならない。
これをH-Dカンパニーのプロダクトマネージャーに伝えると「ファットボーイとは何かを考えた結果さ」と答えて返した。つまり、直進安定性の高さを印象づけるようライドフィールに味付けをしているのだ。昔から同じエンジン、同じフレームで数多くのラインナップを展開してきただけに、こういった手法はハーレーダビッドソンはじつに上手い。
テストコースは大小様々なコーナーが続くワインディングがメインだったが、旋回を意識的にさせなければならないファットボーイを操り、カーブを1つずつクリアしていく行程は決して苦ではなく、猛獣遣いのような気持ちでとても楽しかったことを最後に付け加えておく。