ストリートバイクなのか、クルーザーなのか。フォーティーエイトを判断する際、見方によってはどちらにも転ぶから難しいバイクだと思わされる。アメリカ人から見れば「何が疑問なんだ?」というところかもしれないが、日本人のモーターサイクルライフに照らし合わせたとき、フォーティーエイトにはあらゆる矛盾が内包されているからだ。
走り出してまず感じるのは、排気量1,201ccのエボリューションエンジンがもたらすパワフルなライドフィールだ。日本の排ガス規制値に合わせた縛られ気味のセッティングながら、街乗り、そしてロングライドでも必要にして十分なパワーで突き進んでいってくれる。これをインジェクションチューンしてしまえば、フォーティーエイトの快適性はさらに増すことだろう。
本領発揮したリッターオーバーのマシンというのは、混雑気味な都心部で操るにはかなりパワーを持て余すところ。実際、渋滞に巻き込まれた際は1速で引っ張り続けても流れに合わせられるし、ちょっと渋滞が緩和したところで2速に入れても、そこで引っ張っているうちに次の渋滞にはまる。良い流れに乗れて3速、4速に入れるときはかなり見通しがよいストレートロードに出たときぐらいだ。
街乗りだけなら、中排気量(400cc以下)でも十分。混雑が激しい都心部ならなおさらだ。ともすれば883ccでも持て余すシーンにリッターバイクを投じるとなると、操る側–ライダー自身の技量が求められる。言うなれば「タスキに長し」なのだ。
フォーティーエイトの252kgという重量は、他メーカーのネイキッドモデルと比べても重い。710mmというシート高のおかげで重心が下がり、腰で安定させられるメリットを備えてはいるが、街乗りという観点で見ると、都心でフォーティーエイトを操り切れるまでには時間を要することだろう。
逆に重心の低さとリッターオーバーのエンジンという組み合わせは、クルーザーというフォーティーエイトのもうひとつの顔を浮かび上がらせてくる。その点で言うと、新たに投入された49mm正立フロントフォークとプレミアムライドエマルジョンサスペンションというコンビによってハイウェイライド時の安定感は一層増し、フォーティーエイトの特徴でもある直進安定性を高める結果へと結びついている。
ここで面白いのが、フォーティーエイトのフォワードコントロールというフットポジションだ。足を伸ばしきるこのステップ位置は、ロングツーリングだと足だけでなく体そのものを疲れさせ(真下に踏ん張れないから体重のすべてが臀部に集中し、臀部または腰の疲労を増してしまう)、ストリートライドにおいてもコーナリング時に車体をしっかり傾けさせられないなどデメリットの多さが目につく部位だが、ほどよい流れのハイウェイではこのステップワークがフォーティーエイトの楽しさを左右するのだ。
スロットルを捻りながら流すなかで、滑らかなコーナーやちょっとした車線変更の際、ハンドルで曲がろうとするのではなく突き出した足で進みたい方向へと荷重をかけてやる。そうすると、ジャイロ効果によってマシンが斜め前へとスムーズに切り込んでいってくれる。ここでキモになるのはスロットルコントロールで、交通の流れを滞らせないスピードを維持しつつステップワークを決めていくと、スタンダードなスポーツスターにはないフォーティーエイト独特のライドフィールに胸が高鳴る。その乗り味は、ハーレー版アメリカンマッスルカーといったところか。
2015年以前のフォーティーエイトだと、やや重めのタイヤを履いていることからフロントフォークがホイールまわりの重さにアジャストしきれず、交差点などでの右左折時にカクンと内側に切れ込んでくる悪癖があった。フォワードコントロールステップなのでライダー自身が踏ん張れず、肝を冷やしたオーナーも少なくないだろう。
そうした現象への対応として採用されたのが、高剛性の49mm正立フロントフォークで、フォーティーエイトの安定感アップに大いに貢献している部位でもある。2015年以前モデルよりもフロントまわりの重量もアップしてしまっているが、前述のショートトリップにおけるパワフルなクルージングにこのフォークの存在は欠かせない。流れにさえ乗ってしまえばフォークそのものの重さは感じないし、路面を踏み締めるその力強さがむしろ心強い。
フォーティーエイトはクルーザーとして見ようにも容量の少ないピーナッツタンクが不向きな印象を強めているし、ストリートバイクとして楽しむには排気量1,201ccはちょっと大きすぎる。しかし、ハマるシチュエーションにハマればフォーティーエイトでしか味わえないライディングが確かに存在する。そのスポットを発見したとき、「こういうシーンでフォーティーエイトを楽しむなら、こういうビジュアルが一番キマるよな」と、ライダー自身のスタイリングにも変化をもたらすことだろう。
帯に短し、タスキに長し。フォーティーエイトという異端児が輝くシーンは数少ないが、そこを発見するのもまたオーナーだけの楽しみと言えよう。