2016年4月にカンパニーより突如発表されたこのロードスターというモデルに心躍ったのは、今なお現スポーツスターでロードスポーツを楽しみたいという趣向を持ったオーナーたちだろう。現物を見るまでもない、各メディアで露出されたオフィシャルフォトから、カンパニーの狙いがはっきり汲み取れるスタイルだった。
スポーツスターと言えば、「スポーツスタータンク」「フロント19 / リア16インチホイール」「ローダウンスタイル」「39mmフロントフォーク」といったディテールからなる独自のスタイルがフォーマット化されていた。ロードスターはそのスタイルこそ基本軸に則りつつも、ここに専用設計の「倒立フロントフォーク」「18インチリアホイール(前後ホイールともオリジナルデザイン)」「ダブルディスクブレーキ」「ローライズハンドルバー(コンチバー)」「前後ショック長アップ」「カフェレーサーシート」などなど、ロードスターのテーマとしてカンパニーが掲げる「カフェレーサー」らしいフォルムへと変貌を遂げている。
「ハーレーでカフェレーサー」と聞いて、1977~1979年の3年間に販売された唯一のカフェレーサーモデル「XLCR」を思い浮かべるオールドファンも少なくないだろう。日本のバイク乗りに馴染み深い「セパレートハンドル」「バックステップ」といったディテールは有していないが、当時の流行だった角張ったデザインに真っ黒なボディ、ビキニカウル、ドラッグバー、高く持ち上がったシートカウル、そしてフロント19 / リア18インチホイールと、ロードスターに通じるディテールをいくつも備えていた。見比べれば、ロードスターは現代版XLCRと言って差し支えないだろう。
もうひとつ注目したいのがエンジンだ。フォーティーエイトや1200C カスタムと同様、排気量1,201ccのエボリューションエンジンを搭載しているのだが、そのセッティングが同機種と異なる。スペック表を見ると、最大トルクは90.1Nm / 4,000rpmと、87Nm / 3,500rpmという他の1200スポーツスターエンジンの性能を大きく上回る。徹底的に性能面を追求した特別モデル、それがこのロードスターだ。
一方、その車重は259kgと他のスポーツスターとほぼ同等で、スポーツバイクという点で見ればかなり重い部類に入る。理想は200kg以下、できれば220kg台であってくれればと思うところ。もちろんそれはどだい無理な話で、クルーザーとしての要素が多分に加わった2004年以降の現行スポーツスター「ラバーマウントモデル」である以上、どれだけ軽量化しても200kgを下回ることはまずない。欧米人にとっては許容範囲でも、日本人、特に乗り慣れていないライダーにとってこのスタイルと重量はアンバランスとも言える組み合わせでもあるのだ。
カスタムという点では、リアホイールの18インチ化や倒立フロントフォーク換装、エンジンのセッティング変更、各部位の軽量化が図られたスポーツスターは過去に何台も登場している。ロードスターは「ストリートレーサー」という方向性を示唆するベースモデルとしてカンパニーが世に送り出してきた一台なわけで、スタートモデルとして見ればコンセプトがはっきりしたバイクだと言えよう。あとは、スペック表から伺い知れる課題に対してどう取り組むべきか、をオーナーが探っていくことになる。
マシンのコンセプトとメリットはわかった。それではいよいよ試乗へと移り、ロードスターに秘められた特徴を洗い出していこう。