2014年モデルから日本に導入されることになった3輪モデルのトライク。2016年モデルまではトライク版ウルトラと言えるFLHTCUTG トライグライドウルトラのみのラインナップであったが、2017年モデルから本国アメリカではすでに発売されていたボバーライクなFLRT フリーウィーラーが新登場。その心臓部には2017年のツーリングファミリーとCVO(FXSE除く)に採用されている新型ビッグツインエンジン、ミルウォーキーエイト107を搭載。これによりトライクファミリーは2モデルとなり、ともにエンジンはツインカム103からミルウォーキーエイト107となり、ラインナップの拡充が図られた。
日本ではバイクの免許がなくても、普通自動車マニュアル免許があれば運転することができる3輪ビークル、トライク。前1輪、後ろ2輪のスタイルは、バイクでもクルマでもない全く新しいカテゴリーと言える。新型ビッグツインエンジン、ミルウォーキーエイト107を搭載したフリーウィーラーは、このエンジンをはじめトピックスが多い2017年モデルの中でも唯一のニューモデルであり、今期の最重要モデルとなっている。フリーウィーラーはトライクファミリーのトライグライドウルトラとともに新たな市場を開拓すべく、今期からラインナップに加わることになった。
まずはこの迫力のスタイリングに目を奪われる。三つのタイヤと1,670mmというロングホイールベースが作り出すフォルムはキング・オブ・モーターサイクルと評されるハーレーダビッドソンのどのモデルと比べてもその存在感は抜きん出ている。街を走ればその注目度は絶大。トライグライドウルトラがトライク版ウルトラなら、このフリーウィーラーはトライク版ファットボーイといった印象だ。さらに言えば、サイドバルブ時代の3輪ビークル、サービカーを彷彿させるスタイリングである。
専用ナセルとLEDヘッドライトが作り出すフロントマスクは個性溢れるものだ。ハンドルはミニエイプバーが装着され、シートはステッチ仕上げのワンピースツーアップシートが取り付けられている。そしてフリーウィーラー最大の特徴は、やはりこのリアエンドであろう。左右に設置されたボブフェンダーと高さが抑えられた容量60Lのセンタートランクによるリアエンドのフォルムはまさにボバーライクなもの。センタートランク下に配された2本出しの極太マフラーは、カスタムマインド溢れるディテイルで、とてもストックマフラーとは思えない仕上がりである。
このフリーウィーラーの登場により、トライクの新たな可能性を感じずにはいられない。来期以降、フリーウィーラーをベースとしたファクトリーカスタムモデルなどが発表されれば、さらに面白いことになりそうだ。
排気量1,745ccの新型ビッグツインエンジン、ミルウォーキーエイト107を搭載したフリーウィーラーの走りは、そのスタイリング通りバイクともクルマとも違う全く異次元なものだ。特にそのハンドリングは特殊なもので、トライクは構造上バイクのように車体を傾けてコーナリングすることができないので、ハンドル操作とライダーの体重移動でコーナーを切り抜けていくことになる。これがなかなか手強い。
バイクの運転に慣れた者ほど、コーナリング中にバイクを傾けることができないことでアウト側に吹っ飛ばされてしまうのではないかという、ちょっとした恐怖感すら覚えることになるだろう。さらに「ハンドルを切る」という感覚ではなく、「ハンドルを前方へ押し込む」という感じでトライクは曲がっていく。曲がりたい方向の逆の腕でハンドルを強く押し込み、コーナーに突入していくのだが、それなりの腕力が必要になってくる。そのためフリーウィーラーにはステアリングダンパーが標準装備されている。
最初は少し戸惑うが、慣れてくるとこれが面白い。まさに異次元の乗り味なのだ。例えるなら、遊園地などによくあるゴーカートのような乗り味とでも言えばいいのだろうか? とにかくこの独自のテイストは、強烈に乗り手を高揚させるものがある。ここでひとつ留意してもらいたいのは、路面の轍や歩道などのギャップを乗り越える際、リアタイヤが左右に振られることがあるということだ。ステアリングダンパーの効果でハンドルが大きく取られるようなことはないが注意が必要だろう。
ふたつの後輪に蹴り出されるような加速もまた強烈。ツーリングファミリーのウルトラを軽く凌駕するフリーウィーラーの507kgという重量級の車体をものともせず、グイグイと加速するさまはまるで戦車のようだ。どの回転域からも過不足なく加速するミルウォーキーエイト107だが、特に2,500回転辺りからの大排気量Vツインエンジン特有の荒々しい加速に思わず笑みがこぼれてくる。残念ながらフリーウィーラーにはタコメーターが装備されていないので、正確なエンジン回転数まではわからないが、ぜひ一度この感覚を体験していただきたい。コーナリング特性を含め、あなたのバイクに対する常識が覆ることは間違いない。