2017年式ツーリングファミリーでは、新型エンジン「ミルウォーキーエイト」を全モデルで搭載するが、いずれも107キュービックインチ=排気量1,745ccがスタンダード。最上級機種「CVO(Custom Vechicle Operations=カスタム・ビークル・オペレーションズ)」にのみ114ci=1,868ccが積まれ、その強力な心臓部はFLHTKSE、そしてFLHXSEだけのものとなっている。
その両雄において、絶対的王者として君臨し続けるのが、このCVOリミテッド。ベースモデルはそのネーミングからも分かるとおり、FLHTK ウルトラリミテッドで、もはや贅の限りを尽くしたフルドレッサー仕立て。これ以上はない至極の1台を、アメリカ・ワシントン州オリンピック半島でじっくり乗り込んできた。
上級モデルとなると、いったいどんな装備を持っているのか、ややこしくなってくる。まずは装備内容を見ていこう。前後連動式のABSブレーキや電子制御スロットルによるオートクルーズコントロール、49mmのインナーチューブ径を持つSHOWA製デュアルベンディングバルブフロントフォーク、スリッパークラッチ、セキュリティシステム&スマートサイレンなどはツーリングファミリー全機種で採用済み。
ベースとなるウルトラリミテッドには6.5インチタッチパネル式のカラーディスプレイが備わり、さらに6段階調整機構付きのグリップヒーターを持つ。そしてCVOリミテッドになると、ヒーテッドシートやLED内照式ハンドコントロールスイッチ、ハイウエイペグなどが加わり、車体カラーも専用グラフィックとなる。前後ホイールはミラークロームかコントラストクロームで仕上げられ、ブレーキ系統もキャリパーやローターをグレードアップ。ペグやペダル類、カバー類もドレスアップパーツを惜しみなく用いて、隅々までカスタムが施されているのだ。
そのライドフィールはやはり極上の一言に尽きる。そもそもアメリカという広大な国で生まれ育ったハーレーダビッドソンというモーターサイクルは、ロングライドを得意とし、いつの時代も旅の相棒としてライダーたちに選ばれてきた。ときには大陸横断という最短でも4,000kmという想像を絶する長い距離を走り抜く屈強さと、グランドツアラーとしての資質を持っていなければならない。
それはどういうことかというと、大きな荷物を積み込めるラゲッジスペースやお尻が痛くならない座り心地の良いシート、快適なライディングポジションや効果の大きい風よけなどといった装備面だけでなく、いつまでも走り続けていられる大らかなフィーリング、そして飽きのこない面白味を持っていなければならない。
その究極にあるのが、このCVOリミテッドと言える。ゴージャスな装いはもちろん見る者の視線を釘付けにし、乗り手の所有欲をいっそうのこと満たしてくれるが、何よりも素晴らしいのが長時間、長距離の移動をそつなくこなすというツアラーに求められる絶対的な性能。それは鼓動感に満ちあふれるVツインエンジンが決定づけ、ノーズダイブなどまずしない安定感のある車体がもたらしている。