本国アメリカでは今年2月に登場していた復刻版ローライダーがついに日本上陸を果たした。ショベルヘッドエンジンを積んでいた1979 FXS ローライダーよろしく、タンクグラフィックやヘッドライトバイザー、プルバックライザーなどオリジナルを意識したビジュアルを本国ウェブサイトで確認することはできたが、はたして実物はいかほどのものか、期待と不安が入り交じった想いで注目していたファンも少なくないだろう。屈指の人気を誇る名車が、ついにベールを脱いだ。
2006年、現代の交通事情に合わせてダイナモデルは大きな構造変更を行った。もちろん当時ラインナップされていたローライダーも同様にスタイリングを変えたのだが、剛性アップを目的とした49mm径のフロントフォーク採用によって前部のビジュアルは大きく変更され、2013年までラインナップされたローライダーは一部のコアなファンからは不評を買うなどした過去を持っていた。その後、本国では数年前よりラインナップ落ちし、ついに日本でも一昨年にラインナップから姿が消え、ローライダー伝説はついに終焉を迎えたかに思われた。
ところが今年2月、スポーツスター XL1200Tとともにアメリカ本国でまさかの復活。しかも、シルバー×ブラックのツートーンカラーに真っ赤なロゴを配した1979年当時のオリジナルグラフィックとともに、である。見れば、失われたヘッドライトバイザーも確認でき、多くのファンが期待に胸を踊らせた。そしてついに今秋、日本上陸をはたしたのである。
カラーバリエーションはビビッドブラック/モノトーン×2色/ツートーン×2色と、計5モデル用意された。ヘッドライトバイザーや、ややロゴが大きくなったタンクグラフィックに加え、本国発表時の2in1エキゾーストのままで販売されることに。また近年はテールランプ一体型ウインカーを採用するモデルが増えているなか、あえて従来の四角いテールランプを用いたリアエンドとしたあたり、オリジナル ローライダーへのリスペクトを感じ取ることができる。LOW RIDERとその名が刻まれたバッテリーケースもファンの心をくすぐるポイントと言えよう。
オートバイとしてもアップグレードを果たした。まずグリップだが、まるで国産バイクかと思うほど従来のインチサイズより細い仕様とされる。アメリカ人と比べて手のひらが小さい平均的な日本人にとっては朗報と言える変更だ。またプルバックライザーは可変式とされ、ライザーそのものを変えずともここを動かすだけでハンドルポジションを手前に持ってくることが可能。そしてシートは取り外し可能なバックレストが備わり、着座位置を前にしたい人はこれを活用できる。ステップ位置は従来よりも前めに持ってこられ、どのハンドルポジションや着座位置にも適した場所に来ている。さらにフロントブレーキがダブルディスク化され、制動能力が大幅にアップした。
エンジンはこれまでどおりのツインカム96なのだが、根本が見直された構造変更により、とにかく扱いやすく軽やかになった。ポジションが改善されるだけでこうも乗りやすくなるのかと新鮮な驚きを覚えるほど。ややタイトなコーナーに飛び込んでも、コントローラブルな仕様に加えてブレーキングも向上しているので、とてもアメリカンとは思えないほどスポーティにクリアしていってくれる。2015年版ローライダーは、オートバイとしても正常進化をはたしていた。
フロントフェンダーをクラシカルなものに変えて、エアクリーナーをスクエアタイプにする。これだけで1979年の姿が復刻した現代版ローライダーが出来上がるだろう。気になる方は、ぜひ試乗してみるベシ!