デビューが2006年と比較的新しい分類とされるストリートグライド。登場から一度もカタログ落ちすることなくラインナップを飾り、先の『PROJECT RUSHMORE』でも高剛性フレームに新型フロントフォーク、新型ブレーキシステムを備えてリバイバルされた。本国ではスタンダードなFLHXとともに誇らしく並ぶFLHXS ストリートグライド スペシャル。まったく新しいツアラーモデルの楽しみ方を提案する同モデルの人気に迫ってみよう。
デビュー10周年を迎えたストリートグライドだが、まるで何十年もラインナップに並んでいるかのような風格すら漂わせる。思い起こされるのは、ヤッコカウルのツアラーながらトップケースを持たないFLHT エレクトラグライド スタンダード(1995)。このFLHTはどちらかと言えば、ただウルトラからトップケースを外したモデルという印象が強く、ストリートグライドは似て非なるモデルとされている。
ストリートグライドはその名のとおり、ストリートシーンを疾走するところをイメージされたモデルで、他のツーリングモデルとの違いを端的に述べると、無駄が削ぎ落されたローダウン仕様であること。ウルトラと比べると、フェアリングやフェンダーから装飾部品が取り外されたシンプルなものとされ、美しいカスタムスタイルの代名詞である“ロー&ロング”にならって車高も低くされている。なかなか日本では馴染みがないツアラー仕様でのストリートライディングというのは、アメリカでは比較的ポピュラーなシーンとして見られているのだ。
無駄がないシンプルなスタイルは、カスタムベースに最適なモデルである証拠。ここ数年、フロントホイールを30インチ以上にする新しいバガーカスタムがアメリカで流行っているが、ストリートでとことん派手に目立つカスタムが楽しいのもこのストリートグライドだろう。本モデルはスペシャル仕様ということでピンストライプが入っているが、フルペイントで自分色に変えてしまうのもまた一興。ヤッコカウルにサドルケース、大容量のフューエルタンクとペイント可能な面積は多いのだから。
走り出すと、なんともしっくりと馴染むオーソドックスなポジションに安心感を抱く。ハンドル位置がやや前めな印象だが、若干体を前屈させて乗るスポーツバイクだと思えば違和感は消える。シートおよびステップのポジションもニュートラルで、2015年モデルとして登場したウルトラローほどではないが、足着き性も不安がないレベル。フレーム剛性とフロントフォーク性能が大幅にアップしており、グリップも細身のものとされるのでこの巨体ながら実にコントローラブル。もはや“ツアラーは重くて取り回しづらい”という印象は過去の遺物となりつつあるようだ。
“ストリートシーンにおけるハーレーダビッドソン”と言われると、チョッパーやフリスコ、クラブ系スタイルを思い浮かべる人は少なくない。だが、このストリートグライドで夜の街を疾走するというのは、これまでにない快感をオーナーにもたらしてくれるものである。もちろんツーリングやワインディングに持ち込んでもライディングプレジャーを感じる走りを十分味わえる。新しいアメリカのモーターサイクルカルチャーに触れたいあなたに、オススメしたいモデルと言える。