VIRGIN HARLEY |  XL1200T スーパーロー1200T試乗インプレ

XL1200T スーパーロー1200Tの画像
HARLEY-DAVIDSON XL1200T SuperLow 1200T(2014)

XL1200T スーパーロー1200T

長旅用にパッケージ化された
新しいスポーツスターモデル

ハーレーダビッドソンの全モデルラインナップ中でもとりわけ台数が多いスポーツスターファミリーに、新たな仲間が加わることになった。その姿を見れば一目瞭然、ロングツーリング仕様とも言える充実の装備で、XL1200T スーパーローは我々の前に姿を現した。そのパッケージ内容から、スポーツスターファミリー中でもっとも高価な一台となったわけだが、モデルそのものにカンパニーの明確な狙いがあるのも事実。そんなXL1200Tのうちなる魅力に迫ってみよう。

XL1200T スーパーロー1200Tの特徴

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日本をはじめとするアジア圏にマッチした
コンパクトサイズのツーリング仕様モデル

まず“スーパーロー”というペットネームから、本モデルが現行モデルのXL883L スーパーロー(以下 XL883L)の派生モデルであることに疑いの余地はないだろう。17リットルという大容量のフューエルタンクにフロント18インチ/リア17インチというタイヤサイズ、かなりアップライトなプルバックハンドルと、パっと見ただけでもその類似点を見つけるのは難しくない。カンパニーの発表を見ても、XL883Lの軽快なハンドリング(シャーシシステム)を採用したとの記述がある。スペックを見比べてみると、XL883Lの最低地上高 96ミリよりも1ミリ低い95ミリ(XL883N アイアンと同数値)と、スポーツスターファミリー中もっとも低いモデルであることが分かる。足つき性を気にするハーレーオーナーはかなりのものなので、ここは同モデルの大きなセールスポイントだと言える。

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今度はXL883Lとの違いに目を向けてみよう。カンパニーの狙いが明確だと言った最大のポイントは、ロングツーリング仕様というテーマでパッケージングされたその装備の数々だ。まずH-D純正パーツとしてカタログにラインナップされていたデタッチャブル(脱着式)ウインドシールドが標準装備とされ、さらに施錠可能なXL1200Tオリジナルのサドルバッグが備わる。そして「足つき性を考慮した」というリデュースドリーチ・ツーアップツーリングシートと振動軽減を目的としたミニフットボードが取り入れられている。どちらもライディング時におけるライダーへの負担軽減が目的であり、つまりは「どれだけ遠くまでツーリングをしても、これまでのどのモデルほど疲れを感じることはない」ということにつながる。また排気量1,201cc/フューエルインジェクション仕様のエボリューションエンジンが積まれており、ベースモデルこそXL883Lとしながらも、まるでビッグツイン……とりわけFLD スイッチバックをイメージしたかのようなロングツアラー スポーツスターとして開発されたのだろう。モデル名にあるXL1200Tの“T”は、間違いなく「ツーリング」「ツアラー」を指しているに違いない。

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広大な国土を持つアメリカならではの発想から生み出された一台……と評するのはカンタンだが、ここでは以前インプレッションを行ったFLHTK ウルトラリミテッドにも共通して言える点として、“日本をはじめとするアジア圏のユーザー層とのマッチング”が挙げたい。大柄なアメリカ人と違い、日本を含めたアジア圏では小柄な体格の人種が大半を占める。元々1200スポーツスターは、ラバーマウント化した際に「ダイナに近づいた」と言われることが多々あったわけだが、軽快感が魅力のスポーツスターをツアラー化させることで、価格面はもとより、さまざまな層に対してハーレーダビッドソンを身近に感じてもらおうというカンパニーの意思を感じずにはいられない。ハーレーダビッドソンに対して求める内容は千差万別で、間違いなく好みが分かれるモデルではあるが、「これがちょうど良い」「こういうのを求めていた」というオーナー層を想像するのは決して難しくない。こうした内容を踏まえ、XL1200T スーパーローのインプレッションへと進んでみよう。

XL1200T スーパーロー1200Tの試乗インプレッション

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間違いなく歴史の1ページに書き加えられる
新時代を見据えたスポーツスター モデル

現車を目にして、まず印象的だったのがスポーツスターらしからぬワイド感だ。ウインドシールドにサドルバッグ、そして17リットル フューエルタンクが乗っかっていれば、XL1200X フォーティーエイトやXL1200V セブンティーツーのようなコンパクトなモデルよりもひと回りは大きく感じてしまうというもの。ミニフットボードなどもこれまでのモデルにないアイテムなので、従来モデルとの違いが顕著に表れている。取材などでさまざまなハーレーオーナーに出会うが、こうしたツーリング仕様にカスタムするスポーツスターオーナーは少なくない。そういう意味で言えば、高速巡航時には883ccでは物足りない人にとって、これだけのパッケージングで1200化した意義は大きいと言える。

走り出してすぐに感じたのが、ポジションのコンパクトさ。ミニフットボードを採用したフットポジションは、XL883Lと比べて7.6センチも手前に来ており、フォワードコントロールのような突き出し型とは対極のポジショニングとなる。ツーリングシートはパッセンジャー用ポジションとの境目で大きく盛り上がっているので、臀部をしっかりとホールドする。このふたつが組み合わさると身長174センチのライダーの体はかなり固定される感じで、個人的にはやや窮屈な印象を抱いた。160センチ台の小柄な人にはちょうど良いと思えるのかも……と考えると、アメリカ人をオーナーに想定した設計とは考えにくいところではある。装備内容を考えると、前述したFLD スイッチバックに近しいモデルではあるが、「パワーはスポーツスターで十分」と考えていたオーナーは少なくないだろうし、そうした層をきちんとイメージできた一台だと思う。

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ポジションこそ窮屈ではあったが、ライディングフィールは実に快適。ハイウェイで流れに乗れば、1,201ccの排気量を持つエボリューションエンジンがその力を発揮し、心地良いクルージングを楽しませてくれる。ハンドルポジションは肩の高さぐらいで、人によっては好みが分かれるだろうが、決してロングライドで疲れが出てくるような仕様ではないだろう。フォーティーエイトやセブンティーツーなどのピーナッツタンク(容量 7.9リットル)だと、ツーリング時にはガソリンスタンドの位置が気になって仕方がないところだが、17リットルも入るフューエルタンクならそんな心配は無用。試乗インプレッションという取材名目ながら、そのまま遠くまで走りに行ってしまいたい――そんな風に思わせてくれるのが、このXL1200T スーパーローというモデルだ。

気になったのはウインドシールドの位置か。走っていると、身長174センチのライダーだとちょうどシールドの切れ目が顔の鼻あたりになるのだが、となると風をすべてさえぎってくれるわけではなく、目から上に風が吹き付けてくる。ジェットヘルメットをかぶってスピードに乗ったりすると、風がヘルメット内に吹き込んできて浮いてしまいそうな感も。ただ、機能面を優先するのであればウインドシールド自体を数センチ伸ばすという選択肢があっただろうが、そうするとFLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシックなどが持つヴィンテージハーレーらしい雰囲気が損なわれてしまう。ここはハーレー本来の雰囲気を保つためのデザインを優先したのだと受け取ろう。

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もうひとつ注目したいのが、スポーツスターでは初となるハンドアジャスタブルサスペンションという新機能だ。車体左側のサドルバッグの内側を覗き込むと、赤ん坊の握りこぶし大のハンドルが目に飛び込んでくる。これは片側のリアサスペンションのセッティングを調整するもので、ツマミをまわして「Low」にすればやわらかくなり、「Hi」にすればややハードな仕様に変更できる。これはオーナーというよりも、後ろに乗るパッセンジャーのためのもの。スポーツスターでのロングツーリングは、パッセンジャーへの負担も小さくない。それを工具なしでカンタンに調整することで軽減できるというのは朗報と言えるだろう。こうした点も含め、このXL1200Tには他のスポーツスター モデルにはないオリジナリティが備わっており、唯一無二のツアラー スポーツスターとして見ていただきたい。

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今回の試乗を通じて、カンパニーがどんなオーナー層を見据えて開発したのかが改めて明らかになった、というのが私の感想だ。フレーム剛性をアップさせてどんな人でも乗りやすいようにブラッシュアップしたツインクールド ツインカム搭載のFLHTK ウルトラリミテッドのときと同様、“大柄なアメリカ人向け”というよりは“小柄な人や女性でも乗り回せる”ハーレーダビッドソンへ進化しようとしているようだ。やはり日本を含めたアジアというマーケットをにらんでの開発と言えるし、この点についてはインドに製造工場を設けた新型水冷エンジン レボリューションX搭載のストリート500 & 750(日本市場への投入は未定)の動きともリンクしてくる。私見ではあるが、今まで以上にハーレーダビッドソンというモーターサイクルが、我々にとって身近な存在になりつつあるのは事実で、こうした進化も100年以上におよぶハーレーダビッドソンの歴史の1ページとして将来語られていくことになるだろう。XL1200T スーパーローに試乗する機会が持てた方は、ぜひそうした奥深さに想いを馳せてみて欲しい。

XL1200T スーパーロー1200T の詳細写真

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これまでオプション扱いだったデタッチャブルウインドシールドを標準装備に。
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ご覧のように、脱着の際に工具などは不要。用途に合わせて使い分けられるのも魅力だ。
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アップライトなハンドルバーはXL883Lと共通か。FLSTC ヘリテイジ ソフテイル クラシックのそれにも酷似する。
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スポーツスターモデル最大の容量17リットルというフューエルタンク。高級ガラスをあしらったというクロームクロワゾネタンクバッジもポイント。
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同モデルのオリジナルであるリデュースドリーチ・ツーアップツーリングシート。
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こちらもオリジナルであるサドルバッグは施錠も可能。ツーリング時の必須アイテムが標準装備なのは嬉しい。
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外側に向けてオープンする仕様で、バッグ上部のボタンを指で押して開けるだけなので、片手でもカンタンにできる。
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XL883L スーパーローとは色違いのホイール。フロント18インチ/リア17インチという仕様で、タイヤはミシュラン スコーチャーを採用。
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排気量1,201cc/フューエルインジェクション仕様のエボリューションエンジン。煌びやかなクローム仕様とされる。
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走行時の振動軽減を目的としたオリジナルパーツ ミニフットボード。これまでにないワイド感と厚みが印象的だ。
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エンジン左側にホーンが備わっているのはXL1200Cと共通。この特別仕様感も無視できない。
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工具なしでプリロード調整が可能なハンドアジャスタブルサスペンションを採用。パッセンジャー乗車時に調整することができるスグレモノ。

こんな方にオススメ

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ビッグツインよりも取り回しやすいモデル
旅を楽しみたい女性ライダーにオススメ!

このXL1200T スーパーロー最大の魅力は、軽快な走りが魅力のスポーツスターをベースとしたツーリング仕様である点だ。そのコンパクトなコックピットは、小柄な人、とりわけ女性ライダーをイメージしたかのようなサイズ感であるから、アクティブに「いろんなところへ走りに行きたい!」という方にはうってつけのモデルであろう。しかもパッセンジャーの乗り心地まで考慮したハンドアジャスタブルサスペンションを備えているところも、ひとりではなくふたりで旅を楽しんでほしいというカンパニーのメッセージが込められている(はず)。もちろん使い方は人それぞれで、例えばシート後部に背もたれ用シッシーバーを取り付ければパッセンジャーはより快適にツーリングを楽しめるだろうし、ソロで旅に出るならツアーケースを取り付けて積載力をアップさせるという手もある。あらゆる観点からの快適性を追求したXL1200T スーパーロー、購入されたオーナーは、納車後そのまま北海道まで走りに行けちゃうかも?

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