VIRGIN HARLEY |  FXDWG ワイドグライド試乗インプレ

FXDWG ワイドグライドの画像
HARLEY-DAVIDSON FXDWG Wide Glide(2014)

FXDWG ワイドグライド

時代を経て大型化したワイドグライド
四半世紀におよぶ人気の高さに迫る

ワイドグライドの名が冠されたモデルが登場したのは1980年、長いテレスコピックフォークに21インチホイールという、FLベースのチョッパーカスタムに見られたスタイルを取り入れたショベルヘッドエンジンのモデル FXWG ワイドグライドから。以降、2007年までラインナップの顔として君臨し、一時的なブランクを経て2010年に復活、現在のスタイルへとブラッシュアップされた。2007年モデルと見比べるとかなりマッシブな印象が強まっているが、歴代ワイドグライドの名を継ぐ者としての特徴を随所に見せつける。今回改めて、四半世紀におよぶ人気モデルの新しい魅力に迫ってみよう。

FXDWG ワイドグライドの特徴

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ダイナ本来の概念で捉えてはいけない
アンタッチャブルなファクトリーチョッパー

現在のワイドグライドは、2年のカタログ落ち期間を経て復活したブランニューモデルである。2006年のダイナ全モデルの大型化(フレーム&スイングアーム剛性アップ、フロントフォーク39mm→49mm化、ミッション5速→6速化、全モデルフューエルインジェクション化など)にともない、同年と翌2007年はワイドグライドも全体的に大きくなった。2010年に再びデビューした同モデルは、2007年までのものと比べるとフューエルタンクが丸みを帯び、前後ホイールやエンジン腰下、フェンダーストラットなどがブラックアウトされるなど、ダークで引き締まったスタイルを手に入れた。カラーバリエーションは年々変更されているが、基本的なダークスタイルはそのままに進化している。

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やはり特徴的なのはチョッパーライクなそのスタイルだ。FXDB ストリートボブもカテゴリー的には近しいモデルではあるが、21インチという大きなフロントホイールにレイク角34度と前方に突き出たテレスコピックフォークが象るそのスタイルは、他モデルにはない強い個性として人々の目に突き刺さる。そして初代FXWGより受け継ぐフレイムスが描かれたデザインが、そのキャラクターを一層際立たせる。ウルトラやヘリテイジのような古き良き時代のハーレーを物語るスタイルとして扱われるべきモデルと言えよう。

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180mmリアタイヤを履くダイナモデルはワイドグライドとFXDF ファットボブだけ。「ビッグツインモデルにスポーツスターの走行性能を掛け合わせたもの」がダイナ誕生の由来であり、パワフルかつスポーティな走りに重きを置けばリアタイヤはあまり太くない方が良い。しかし、初代FXWG ワイドグライドが1970年代のカスタムスタイルを取り入れたファクトリーカスタムモデルとして生み出された背景を思うと、他のダイナモデルと同じように見るのはナンセンスというもの。ボディそのものが大型化したビッグクルーザーで、スポーツモデルとしての側面も忘れてはいない。だが、チョッパーカスタムとしての系譜こそがアイデンティティーであるワイドグライドは、ダイナのなかではアンタッチャブルな存在としてカンパニーから認められているのである。

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それゆえか、他モデルにない特徴的なパーツも多いのがワイドグライドだ。スラッシュカット型のトミーガンエギゾーストにチョップドリアフェンダー、短めのシッシーバー、スパルトテールランプとスタイルを重視するモデルとしてのパーツが数多く用いられている。ちなみに米H-Dウェブサイトを見てみると、2014年ラインナップにある同モデルのテールランプは、FXDB ストリートボブなどに採用されているウインカー一体型となっている。もしかしたら2015年モデルはその仕様に変わって上陸してくるかもしれない。

FXDWG ワイドグライドの試乗インプレッション

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その名のとおりワイドなグライド
オーナーへの要求が高い巨躯

2006年の大型化により、それ以前と比べるとダイナは一層ビッグクルーザーとしての印象を強めたファミリーである。スポーツスター(現行ラバーマウント)と乗り比べてもその違いは一目瞭然、ソフテイルとの違いはフレームだけでは? と思えるほどである。昔を知るハーレーオーナーのなかには違和感を覚える方もいることだろうが、現在のダイナに見えるのは、“モーターサイクルとしての進化”という点でカンパニーが取り入れたスタイルという事実だ。

ワイドグライドは、そんな大型化したダイナをより一層大きく感じさせるモデルだと言えよう。それは見た目の印象だけでなく、数値にも表れている。レイク角34度という設定により49mmフロントフォークは前方に突き出され、ホイールベースはなんと1,730mmに。この数値は全モデルラインナップ中でもっとも長いものである。近しいスタイルのFXSB ブレイクアウトでさえ1,710mmだ。わずか2cmの差とはいえ、実際にまたがった際のフロントビューワーはかなりの迫力。同じチョッパースタイルをウリにするFXDB ストリートボブでさえダイナとしての存在意義を保とうとしていることを考えると、ワイドグライドはファミリーというカテゴリーすら逸脱した存在だと言えよう。

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それは当然ライドフィールにも表れていた。セルスターターを押してツインカム96エンジンに火を送ると、排気量1,584ccのパワーが目を覚まし、激しく車体を揺さぶる。ハンドルバーは肩幅よりも広いワイドな仕様なのだが、街を走っているうちにこのワイドなハンドル幅の理由が見えてきた。

エンジンおよびフレームはダイナ全モデルとも共通なわけだから、ワイドグライドのフロントフォークが寝かされているのは専用設計のトリプルツリーによるもの。右の写真はワイドグライドとストリートボブの画像を重ね合わせたものだが、フレームのネックとフロントフォークを接合するトリプルツリーの仕様が異なるため、キャスター角(フロントタイヤの設置部分から垂直にラインを引き、フロントフォークがどれだけ斜めになっているかを図る角度)がかなり大きくなっているのが分かる。ほんのわずかなオフセット量だが、これによって他モデルよりもホイールの中心部分がハンドルより遠くなり、結果的にハンドルを切る際の動きが大きくなるのである。

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FXDWG ワイドグライドとFXDB ストリートボブの画像を重ねてみると、専用設計のトリプルツリーによりワイドグライドのフロントフォークは寝かされ、ホイールの中心位置が違っているのが分かる。

ハンドル幅がワイドな理由は、スタイルはもちろんのこと、大きく動かさねばならないフロントフォークを扱いやすくするための仕様なのだろう。もしこれが幅の詰められたドラッグバーだったりすると、コントロールはかなり困難なものになる。パワフルなビッグクルーザーとして進化した重量級ダイナがベースであること、また21インチという大型ホイールを取り入れていることを考えればなおさらだ。ワイドグライド本来のスタイルを踏襲しつつも、モーターサイクルとして最低限の操作性を保とうとするカンパニーの配慮がここに伺える。

とはいえ、ツインカム96エンジンのパワーを引き出せば引き出すほど、それ相応の操作技術が求められるのもまた事実。シートの着座位置と前方に突き出したフォワードコントロールの位置関係は、推定身長180cmぐらいの大柄なアメリカ人をベースとしていることは想像に難くないので、それよりも小柄な日本人ともなると、操るのは容易ではない。ハイウェイなどの直進走行時には、スロットルを開けてその重量級の走りを楽しみたい気持ちが湧いてくるのだが、カーブやストップ&ゴーが多い日本のなかでは、不用意にスピードを上げるというのはなかなかに難しい。やはりストリートでは慎重にならざるを得ないし、ツーリングで遠出するとバイクにしがみつくことを強いられる。操作技術というよりは、最低限の体躯を求めてくるモデルと言えるかもしれない。

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ハーレーダビッドソンは“アメリカ人のためにつくられたバイク”なのだから、ノーマルの状態で日本人が「乗りづらいなぁ」と感じたとしても致し方のないところ。しかし、着座位置を前へ押しやるためにシートを交換したり、ステップ位置を手前にオフセットしたり、ハンドルをプルバックにして手前に持ってくるなどのカスタムをしてやれば、小柄な日本人でも十分乗りやすいスタイルに変えられる。やはり、日本でハーレーダビッドソンを楽しむには、日本の事情(体型や道路環境など)に合わせたカスタムを施すのが良い。

FXDWG ワイドグライド の詳細写真

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FXSB ブレイクアウトと同じ砲弾型ヘッドライト。
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かなりワイドな設計とされるハンドルバーと長めに保たれたハイライザー。
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ワイドグライドのアイデンティティーと言っていいフレイムスのデザイン。
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ツーピースのシートはタンデム走行も考慮してのもの。リアシートを取り外せばよりチョッパーライクな印象に。
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スパルトテールランプも、米H-Dウェブサイトではウインカーと一体型に。2015年は仕様が変わるか。
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レイク角34度という“寝かされた”フロントフォークと、21インチ スポークホイールはワイドグライドを象徴する部位でもある。
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パワフルな走りを生み出す排気量1,584cc ツインカム96エンジン。
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ステップ位置はフォワードコントロールとされる。ここもワイドグライドを語るうえで重要なポイント。
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FXDF ファットボブと共通のトミーガンエギゾースト。

こんな方にオススメ

FXDWGオーナーという事実が
あなたの心を激しく揺さぶる

申し上げたとおり、ワイドグライドはお世辞にも乗りやすいバイクではない。「じゃあ、ワイドグライドに乗る楽しさってなんなんだ!」と言われれば、それは“ワイドグライドに乗っている”という事実そのものだろう。他メーカーとは構造や開発に対する考え方が根本的に違うハーレーダビッドソンだが、ワイドグライドはそのなかでもアンタッチャブルなモデルであることは前述したとおり。つまり、“異端のなかの異端”は既成概念にとらわれない象徴的存在でもあるのだ。体格に恵まれているならそのまま乗ってもいいだろうし、試乗してみて「扱いづらい。でも欲しい!」と思ったなら、乗りやすいようにカスタムすればいい。付き合い方はオーナー次第だが、操れるようになったときに得も言われぬ歓びを与えてくれる――ワイドグライドには、そんな魔力があるように思える。

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