VIRGIN HARLEY |  低く構え細身でまとめた抜群のプロポーションを持つ、スポーツスターのアイアン883を試乗インプレ試乗インプレ

低く構え細身でまとめた抜群のプロポーションを持つ、スポーツスターのアイアン883を試乗インプレ

  • 掲載日/ 2020年10月30日【試乗インプレ】
  • 取材協力/HARLEY-DAVIDSON 取材・写真・文/小松 男
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HARLEY-DAVIDSON XL883N (2020)
フォーティエイトなどアクの強いメーカーカスタムモデルが台頭する一方で、着実にファン層を広げているアイアン883。ライトカスタムの雰囲気を持ちながら、オールマイティな性格を備えるシアワセバイクである。

全方向完全包囲の高い完成度
これぞ、ザ・スポーツスターというキャラ

ここ日本においては特に人気の高いシリーズとなっているスポーツスターファミリー。ハーレーダビッドソンの長い伝統を受け継ぐモデルであり、ビッグツインモデルよりも気軽にそれを味わえることや、好みに合わせたカスタマイズを楽しむことができるベースとしての魅力も持つといった点が支持される由縁である。現在はストリートというくくりとなり、水冷750エンジンモデルから空冷1200モデルのレンジとなっているが、その中の中間的存在に当たるのがアイアン883だ。総じてまとまりの良いスタイリングは、ザ・スポーツスターと言えるものであり、だからこそ長年培ってきた旨みが凝縮されているモデルとなっているに違いない。そんなアイアン883の秘めたる実力を探る。

XL883N アイアン883の特徴

伝統を今に繋げる希有なモデルであり
進化を続け養った洗練された雑味

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スポーツスターは、現在のハーレーダビッドソンのモデルラインアップ中、最も古参と言える部類だ。というのも、ビッグツイン系はミルウォーキーエイトエンジンの開発搭載が完了しているし、スポーツスターよりもさらに小さい排気量となるストリート750系が加わったのは2015年以降の事となる(後者は海外で500ccモデルもあり、実質的なエントリーモデル)。

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そのような中、スポーツスターと言えば、いまだに1986年から採用されているミッション一体型のエボリューションエンジンをベースとして搭載している。日本の元号に照らし合わせるならば、昭和、平成、令和になっても、基本的には同じエンジンを使っているということだ。実はこれは凄いことなのである。というのも、世界各国において高度成長がみられるようになった80年代から今まで、環境適応のためのレギュレーションは年々厳しくなってきている現状において、その対策を取りながら、なおも作り続けているというその姿勢は見上げたものであるし、そしてそれを今も新車で手に入れることができるということは、どれだけ幸せなことか。200馬力を軽く超えるスーパーマシンが矢継ぎ早に登場する現在において、そもそもスポーツスターは別の道を歩んできたということが分かるだろう。そのスポーツスターの中で最もベーシックな位置づけと言えるのが、今回テストを行ったアイアン883だ。

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最初のアイアン883が登場したのは2009年の事。ブラックアウトされたダークカスタムモデルの第一弾であり、スポーツスターの伝統的なシルエットを受け継いだファクトリーカスタムとして作り上げられた。当時はまだストリート系が登場していなかったこともあり、スポーツスターファミリーは10種ものモデルラインアップで固められていた。”素”のモデルであるXL883やダートトラッカースタイルのXR1200などもあり、賑やかなモデル構成だったことを思い出す。その後、タンク形状やカラーリングなど幾たびかの変更を経て、現在あるのはサスペンションやシートなどに改良が加えられた2016年からのモデルがベースとなっている。

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XL883N アイアン883の試乗インプレッション

この一台ですべてをこなすことができる
一生付き合える伴侶となることだろう

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月並みな言い方をすれば、それは一目見ただけでスポーツスターだと分かり、しかもブラックアウトされ引き締まったボディラインは、素直に恰好良いと思えるものだった。以前存在したXL883は、どこかしら野暮ったさが残る印象を持ち、それに手を加えていくことで、洗練された雰囲気を生み出すといったようなものであり、”カスタマイズの過程を楽しむ”ものであると言われればそれまでだが、手を加えなければ今一つ格好良さが表現できていなかった。それがアイアン883ではまったくもって払拭されている。シャープでありながらワイルド、デザインのまとまりが良すぎて、カスタムしようにもどこに手を出すか悩むほどだ。まず見た目からして花丸の太鼓判を捺させてもらおう。

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アイアン883に跨り、スタンドを払う。低重心であることもあり、車体の重さを感じさせない。セルスイッチを押すと、瞬く間に目を覚ますエボリューションエンジンは、ラバーマウントでありながらも、しっかりとした鼓動感を得られ、ライダーを路上へと誘う。温まるまでは回転数が高めなので、やや気を使ってクラッチを繋ぐと、持ち前の低回転トルクにものを言わせて、ドンドンと前へと押し出してくれる。まずハンドル、ステップ、シートの位置関係が良いこと、そして細身でありフロント19インチ、リア16インチというタイヤサイズ、アクスルシャフトの設置位置が絶妙なことから、思いのままに操ることができる。ワインディングを攻めるような走りをすれば、ステップバーの先に備えられたバンクセンサーが接地するが、それもまったく気にならない程、素直なハンドリングであり、流しても、飛ばしても楽しめる。というのが、アイアン883を走らせて感じたことだ。

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スロットルをワイドオープンし回転を引き上げると、6000回転弱のところで、レブリミットに当たる。ただ高回転まで使って気持ちいいものではなく、これは低回転のトルクが美味しいエンジンだ。3速、2300~2500回転付近で時速60キロ、この前後あたりが本当に心地が良いポイントであり、すなわち常用域が一番美味しくなるようにセッティングされているのである。これぞ現代のスタンダードスポーツスターだ。

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以前XL1200Sを所有していたことがある私は、スポーツスターと言えば、1200ccエンジンの方がパワーがあり、より完成されているものだと考えていたが、今回アイアン883に乗り、その考えは改まった。1200はもちろん良いのだが、今となってはむしろ速いとも感じられず、トルクが出る付近ではノイズが多くがさつなフィーリングも見受けられる。対して883は以前よりもしっかりとしたトルクを感じさせてくれるうえ、上質な感触を得られる。ましてやアイアン883のようにバランスの良い車体のモデルに搭載されているとあれば、それを余すことなく楽しむことができる。私はこのバイクをテストし、人生最後の一台としてアイアン883を手に入れても良いかもしれないと本気で考えるようになった。それほどまでに良いのだ。

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もし所有し自分仕様にしてよいとしたら、数センチでよいのでサスペンションのストローク量を増やすこと、たまにはタンデムもするだろうからシートはダブルに、リアタイヤは17インチが良いな……などと妄想が膨らんでゆく。スポーツスターはいつになっても私の心を魅了してやまない罪なモデルだと本当に思う。

XL883N アイアン883の詳細写真

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883cc空冷エボリューションエンジンを搭載。80年代から続く超長寿エンジンだが、各部パーツの精度や、制御コンピュータの性能が向上していることもあり、フィーリングがとても良くなっている。今一度テイスティングしていただきたい。

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ハロゲンバルブを使用する丸型ヘッドライトケースと、バイザーという、とてもトラディショナルな構成。トレンドの波に乗り、ネオクラシックモデルが溢れる中にあって、昔から続く本物を貫き通すスタイルだと言えるのは、SR400かこのアイアン883か。

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ブラックの9本スポークタイプをベースに、マシニング加工が施されたホイールはアイアン883のスタイリングポイントの一つ。フロントタイヤは、100/90B19サイズ。オンロードモデルにしては大径だが細身なので、コントローラブル。

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トータル的にブラックアウトされたアイアン883、エキゾーストシステムも黒くされた。歯切れの良いサウンドは健在であり、心地よいクルージングをもたらしてくれる。

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プリロード調整機構を備えるリアサスペンションを左右2本設置。動きは良く、路面状況を的確にインフォメーションする。ストローク量が少なめなので、プリロードのセッティングを行い好みに近づけたい。

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短めに収められたチョップフェンダーに、ターンシグナルを内蔵するテールライトがセットされる。リアセクションは特に引き締まった印象を受ける。

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ステップはミッドコントロール位置とされている。リラックスしたライディングポジションをもたらすうえに、コーナー時のステップ入力もしやすい。ステップバー先端のセンサーは簡単に接地するが不安はない。

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シンプルなシングルメーターを設置。速度計を周囲に配置し、中央の液晶部分は、左側スイッチボックスに備わるボタンを操作することで、シフト/回転計→オドメーター→トリップA→トリップB→時計と表示を変えることができる。

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タックロールタイプのシングルシート。シート高は760mmと低く抑えられており、多くのライダーが安心感を持ち扱いやすく感じることだろう。座り心地も良い。

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燃料タンク容量は12.5リットル。見た目と使い勝手が両立された絶妙なタンクだ。ボディカラーは写真のブラックデニムのほかに、バラクーダシルバーデニム、リバーロックグレー、スコーチドオレンジ/シルバーフラックスがある。

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幅が狭く、低めにセットされた定番のスポーツスターハンドルバー。自然に手を伸ばした位置にあり、リラックスした乗車姿勢をとれる。メーターステーをはじめ、昔に比べると各所強化され、振動による破損などもない。

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リアタイヤは150/80B16サイズ。フロントと比べ割と小径なものがセットされ、ワインディングではリアから曲がってゆく印象を受けた。バランスが良く未舗装路であっても安心してライディングを楽しめた。

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2004年モデル以降、エンジンをラバーマウントするスポーツスター。走行中の振動は軽減され、アイドリング中は鼓動感を得られるという、味のあるチューニングが施されている。

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