ストリートボブは、ダイナファミリー時代から多大な人気を誇る名機であり、それはソフテイルフレームとなった今も変わることはない。高くセットされたエイプハンガーバーはワイルドなライディングポジションをもたらし、それでいながらもアグレッシブな走りをも楽しむことができる。2021年モデルでは1868ccという大排気量で、ハーレー史上最強の完成度だと名高いミルウォーキーエイト114エンジンが搭載され、フューエルタンクには大きくナンバーワンマークが描かれた新たなグラフィックを採用。走りの質を引き上げるとともに、人の目を惹きつける魅力にさらに磨きがかかられた。そのストリートボブ114を紹介してゆく。
ツインショックシャシーとビッグツインエンジンの組み合わせで、スポーティかつ強烈なライディングプレジャーを得られるダイナファミリーを源流とするストリートボブ114。戦後モデルを連想させるオーソドックスなスタイルをベースとしつつ、高くセットされたハンドルや短くチョップされたフェンダーなどでチョッパースタイルを構築し、ダイナファミリーの中でも屈指の人気を誇るファクトリーカスタムチョッパーだった。
そのダイナファミリーは2018年からソフテイルファミリーに統合されたことはご周知のとおりであり、ストリートボブもまたソフテイルフレームとなりその姿を変えた。ダイナファミリーモデルの終了及びソフテイルモデルへの移行は、当時大きなトピックとして扱われたが、いざそうなってみると、意外にすんなりとマーケットに受け入れられ、ストリートボブは引き続き高い人気を誇るモデルとしてラインナップされている。むしろ新型ソフテイルフレームとミルウォーキーエイトエンジンを得たことで、走りの性能や限界点が引き上げられており、ダイナモデルのオーナーには、是非ソフテイル化された現行モデルにも機会を作って乗ってもらいたいと思っている。
2021年1月、新型コロナウイルス感染症の折、ハーレーダビッドソンの2021モデル発表はインターネットを通じて世界同時配信とされた。その中で注目を浴びたのは、ストリートボブに新たにミルウォーキーエイト114エンジンが採用され、ストリートボブ114となったことだった。従来モデルでも十分なポテンシャルを持していたストリートボブがどのように進化したのだろうか。その中身に触れてゆく。
4月初旬、メディア媒体向けに開催されたJAIA輸入二輪車試乗会・展示会にもストリートボブ114は持ち込まれていたのだが、やはり注目度が高いことを示すかのように、試乗枠はすべて埋まっていた。私も試乗会に参加したもののストリートボブ114には試乗することができなかったため、今回改めてテストを行うことを楽しみにしていた。
まずスタイリングから確認してゆくと、基本構成的には大きな変更はないものの、これまでの艶消し系のカラーリングが施され割とトーンを抑えたダーク調スタイルだったものから一転し、でかでかと「1」のグラフィックが描かれたバハオレンジがイメージカラーとなっており、新しいストリートボブ114のキャラクターを伝えてくる。オレンジのほか、ブラック、ホワイト、グリーンが用意されているが、どれもグラフィックは共通とされている。
車両に跨り、ハンドルバーに手を伸ばす。エイプハンガーバーは相変わらずかなり高い位置にセットされており、一般的なモーターサイクルとは異なる乗車姿勢となるが、これもひとつのストリートボブ114の魅力だ。マットでもグロスでもないザラザラした質感のブラックカラーが施されたハンドルバー越しに見る過ぎ去り行く世界は、ゆったりとしたクルーズをしても非常に心地よいものだ。しかしスロットルを一度開けば、別次元とも言える走りが待ち受けている。
2021年モデルのストリートボブ114に搭載されているミルウォーキーエイト114エンジンは、排気量1868ccで最大トルク155Nmを3250回転で発生させる。文字で書き起こしてもなかなか伝わりにくいことなのだが、これは強烈な数値だ。ハーレーの現行モデルで幅広く採用されるようになったエンジンではあるが、何度乗っても快活な走りを得られる最高の仕上がりだ。前述したようにハンドルバーは遠い、よって後ろから蹴飛ばさせるようなトルクに耐えるためには、フィジカル面でのポテンシャルも求められると考えて良い。
面白いことに、ハンドリングも素直であるため、コーナーが続くワインディングロードのようなステージであってもストリートボブ114は得意だ。 ホイールはフロント19インチ、リア16インチとし、細身のタイヤセットにより、バンクし始めからコーナーを抜けるまで、ごく自然なリーンを描くことができるのだが、エンジン回転数が1000前後まで落ち込んだ状態から、スロットルをラフに開けると、ドカンとしたトラクションが掛りヒヤリとすることがあるかもしれない。なので、実はヒラヒラとコーナーを駆け抜けるような走りを純粋に楽しみたいのであれば、従来のミルウォーキーエイト107エンジンの方が適しているのかもしれない。
傍から見るよりもはるかに乗りやすく、それでいながら強烈なパフォーマンスを得ていたストリートボブ114。この内容、仕様でブラックカラーなら200万円を切るというプライス設定は、なかなか魅力的だと感じるものだ。
2021年モデルのストリートボブ114に搭載されるミルウォーキーエイ114トエンジンは、ボアストローク102×114mm、排気量1868ccで、155Nmの強烈なトルクを、3250回転で発生させる。洗浄可能な高性能エアフィルターを採用している。
触媒を内蔵する2into2ショットガンマフラーはブラックアウトしたカバーが装着され、引き締まった雰囲気を助長する。アイドリングのような低回転時の歯切れの良いサウンドはなかなか良い。
680mmのシート高は、かなり低く、足つき性の問題はない。シートのクッションも良く腰をしっかりとサポートしてくれる。シートを固定するためのボルトが大きめの六角頭となったことで、タンデムシートの着脱などが容易になった。
ブラックリムのワイヤースポークホイールでビンテージスタイルでありながらもモダンなイメージをも併せ持つ足まわり。フロントブレーキは普通に走らせるには十分な制動力ではあるが、スピードが出ること、車重もそれなりにあることから、多少強化の余地がある。
ミッドコントロール位置にセットされたステップ。体重を掛ける際に適した場所にあるため、ステップワークで車体を軽快にコントロールすることができる。エイプハンガーバーとの組み合わせは良好だ。
ボディ部分をブラックとし、ベゼル部分はクローム処理されたヘッドライトケース内は、周囲に面発光LEDデイライトを配置しており、モダンテイストを表現している。
ミニエイプバーとハーレーが呼ぶハンドルバーは、手を水平に前へと伸ばした位置にセットされている。Uターンなどハンドルを切るような場面では、外側の手が離れないよう上体を寄せなくてはならないが、一般的な使用状況下においては特に意識することもない。
『ナンバーワン』グラフィックがあしらわれたフューエルタンク。ボディカラーは全4色が用意されており、タンク容量は13.2リットルと小ぶりながらも充分なサイズとなっている。
ハンドルライザーに内蔵されたインストゥルメントディスプレイ。スピード、回転数、時間、走行距離などの表示を切り替えられる他、残燃料やギアも表示。ハンドルバーと同様に、ザラザラの質感を持つブラックで仕上げられている。
シート下にはリアサスペンションがセットされている。ソフテイルフレームの強度に加えて、このリアサスペンションが良く動くおかげで、車体を自在に操ることができる。プリロードの調整も容易だ。
短くチョップされたリアフェンダーに、テール&ストップランプを兼ねるウインカーが組み合わされている。テールセクションはかなりスポーティなイメージとされており、ストリートボブ114のキャラクターを表現している。
ハーレーのアイデンティティの一つであるベルトドライブ。基本的にはメンテナンスフリーとされている。リアタイヤサイズは150/80B16と細身のサイズであり、コーナーなどで軽く車体を倒しこむことができる。
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