セル1発で始動するミルウォーキーエイト114は、さすが排気量1868ccだけありアイドリングも力強い。冷間時のアイドリングは1000rpmあたりだが、暖まってくると900rpmほどに落ち着き、大排気量Vツインエンジン特有の鼓動感がうまく演出されている。先代ビッグツインエンジンのツインカムとは明らかに違い、ミルウォーキーエイトはノスタルジックな味わい深いエンジンにこだわって仕上げられている。しかしその走りは豪快そのものだ。車両重量379kgという超ヘビー級の車体をいとも容易く加速させていく。それでいて大排気量Vツインエンジンならではと言えるふたつのシリンダー内の荒々しい爆発を乗り手は股座に感じ取ることができるのだ。これぞハーレーダビッドソンだ、と思わず笑みがこぼれてくる。
379kgという車両重量のため、お世辞にも取り回しがいいとは言えないが、一旦走り出してしまえばその車重は安定感に変わる。ハンドリングに関しても、もちろん軽快というわけにはいかないが、適度に粘りがあり、ニーグリップとステップ荷重を心がければSHOWA製デュアルベンディングバルブ採用のフロントフォークとリアのフルアジャスタブルエマルジョンショックの恩恵もあり、ワインディングでもかなりのパフォーマンスを発揮する。690mmのシート高とプルバックハンドル、ステップボードが作り出すポジションに関しても、身長180cmの筆者にとっては程よくタイトなもので操作性は良好。ただ小柄な男性や女性の場合はハンドルやシート交換などでポジションの調整が必要になってくるだろう。
また2019年モデルのツーリングファミリーでは最新のインフォテイメントシステムが採用されている。日本語表示が可能になったApple CarPlayと連動(純正ヘッドセットなどのアクセサリーが必要)することによって、スマホのように操作することができる。ナビゲーション機能はもちろんのことハンズフリーで電話したり、お気に入りの音楽を手軽に楽しむことも可能となり、ツーリングモデルとしての使い勝手が飛躍的に向上したと言える。街乗りからロングツーリングまで幅広く使えるストリートグライドスペシャルは、今やハーレーダビッドソンの旗艦モデルであるツーリングファミリーの枠を越え、その輝きを放ち続けている。