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究極のバイカーズファッション、アイアンハートの信念を探る
取材協力/有限会社ワークス  取材・写真・文/モリヤン  構成/VIRGIN HARLEY.com 編集部
掲載日/2014年11月12日

スーパーヘビーなジーンズメーカーとして知られているアイアンハート。提供するデニムは純国産。つまり海外に製造拠点を置かず、糸の選択からフィニッシュまで、すべての行程を日本国内の工場で生産しているのだ。最高のデニムを作るために一切の妥協を許さないことが、アイアンハートのポリシーなのである。

とにかくヘビーであること

デニムに求められている性能
それを突き詰めた結果がここにある

アイアンハートの代表である原木真一さんは、長くデニムを扱ってきた人である。少年の頃からバイク乗りで、ライダーとしての立場から常にデニムを考えてきた。特にジーンズの在り方には「とにかくヘビーであること」というポリシーを持っている。しかしそれはライディング用として特化させた考え方でない。あくまでもカジュアルな普段着として送り出されている。頑丈で長持ちするジーンズだからこそ、ヘビーなバイクシーンを愛するバイカーに支持されてきたということなのだ。デザインで遊ぶことはほとんどせず、基本はストレートとブーツカットというシルエット。そんなとことん頑固な製品を、提供し続けているのがアイアンハートなのである。

 

「バイク用のウエアとして考えたわけではありません。僕は10代からずっとバイクに乗り続けていますが、今まで一度もいわゆるバイク用のウエアを着たことがなくて、いつもカジュアルで耐久性のある普段着を選んできました。ライディングに特化しているウエアは、バイクを降りた時にどうしても不自然になるからイヤなんですよ。自分のライフワークの一部にバイクがあって、バイクに乗ることそのものが日常なのだから、選ぶウエアは基本的にフランクで、なおかつヘビーじゃなきゃダメだと思いますね」

 

バイクにずっと乗り続けている原木さんの考えるデニムだからこそ、過酷な使用に耐える耐久性が絶対条件となったのだ。元来デニムとは、同じコンセプトでアメリカが生み出したもの。それを最初に愛したのは、もちろんカウボーイであり、彼らはジーンズをハードに使い込んだ。その考えかたと選び方は、現代のバイク乗りにも受け継がれているのだ。

 

15オンスでもヘビーと言われるジーンズにおいて、アイアンハートの製品は最もライトなものでも19オンスである。基本は、21オンス。最高にヘビーなアイテムは25オンスというラインナップだ。素材を製造するにも、それを縫うにも、大きな苦労が伴うものなのだ。ヘビーゆえに大量生産は絶対に無理。大手メーカーなら決してやらないことだからこそ、原木さんは自分のブランドとして立ち上げて、そのクオリティを維持しようと考えた。それには信頼できる仲間が必要である。生産性が悪くても最高品質を維持することに誇りを持つメンバー。それはかつての日本人なら多くが持っていた武士道そのものである。言い換えれば職人気質。頑固で一徹なポリシーを貫き通す人間だけが成し得る特別な環境。それを維持し続けるのは大変なことだ。しかし、原木さんをサポートするブレーンはそんな人達ばかりなのである。

アイアンハート代表
原木真一氏

有限会社ワークス代表の原木真一さん。アイアンハート生みの親である。10代からのバイクフリークで現在の愛車はハーレーのストリートグライドとスポーツスター。200kmのツーリングに参加するため、片道1200kmを走る人。生粋のバイク乗りである。

ヘビーオンスデニムが生まれるまで

驚いたのは、製造機械までも
徹底的にビンテージなこと

最初に案内されたのは、岡山県の井原市にあるKUROKIである。ここは糸染めから織りまで一気に進める製造メーカーだが、この両行程を同じ会社で行うのはとても珍しいという。1本が6000メートルという糸を染め、これで2000本弱のジーンズが織れるが、1日で50メートル分しか織れない。それは、ヘビーゆえに織れる機械が限られているからだ。

 

工場内でフル稼働している織機を見て驚いた。メーカー名に「TOYODA」のロゴがある。つまりこれは、トヨタ自動車の前身であるトヨダ自動織機である。豊田佐吉氏が生み出したこの機械。聞くと今から60年以上前の製品だという。しかし、それ以前に考案されたヘビージーンズの素材は、機械もビンテージじゃないと織れないのだ。耳を劈くけたたましい音を響かせながら、超クラシカルなアナログ自動織機はヘビーなデニムを織り上げていた。その光景は、大きな感動を覚えるもの。現代のテクノロジーでは不可能な行程なのだ。

 

中重被服興業
山下善之氏

中重被服興業の取締役専務である山下善之さん。穏やかな風貌だが、燃えるようなハートの持ち主。青年期にはやはりバイクを乗り回して愛車は今も手元にある。「アイアンハートの試みは、他とは真逆」と言いながら、しっかりとニーズに答える肝っ玉が凄い。

場所を移して、次は倉敷市の児島にある中重被服興業に行く。ここはデニム素材をジーンズやジャケット等へと製品化する被服工場である。創業は1953年。戦後すぐに始動させた縫製業は日本の復興と共に成長した。この児島という土地は、日本で最初にジーンズを生産した場所でもあり、その流れは現在も続いているのである。

 

「縫う糸は、通常は20番くらいだけど、0番なんていう極太を使う。つまり縫えるミシンだって特殊なわけですから、持っていない工場じゃ縫えないわけです。ウチはそんなニーズに応えられる会社なんですよ。古くても頑丈な機械が現役なんです。25オンスなんて、専用のミシンじゃないと絶対に縫えません。それが3台動いています」

 

型紙からデニムを断裁し、ジーンズを1本ずつ縫っていく。完全に手作業である。アイアンハートのハードなジーンズは、男たちの頑固なポリシーを貫いた夢の結晶だ。そして、それを選ぶユーザーもまた、同じ頑固な人間たちばかりなのである。

大きなドラムに巻かれた糸。一本6000mという長さで、ここから約2000本のジーンズが生産できるという。

デニムは、糸の状態から染めていくことが特徴である。その染行程は、ロープ状にまとめられた糸を何層ものプールに潜らせる。そして徐々に深い色へと染めていく。

大型機械にて染め上げられたロープは、工場の2階へと順に引き込まれて、次の行程を待つ。2階にはロープを糸に分類する機械が待っているのだ。

幅にして4cmほどのロープが一本づつの糸へと分解されていく。そして大型のローラーに巻かれていくのだ。巨大な糸巻きの完成。その後、糸に糊をコーティングしていく。

出来上がった巨大な糸巻きは別工場に送られ、クラシカルな自動織機を使用して織る。この糸巻きで50mの長さがある。

機械にはTOYODAの文字。TOYOTAではなく、その先代であるビンテージ織機だ。ここで織られているのは両端にほつれ止めの赤耳を持つセルビッチ。ビンテージの証である。

古い織機でしか織れないセルビッチは、幅が80cmと狭いことが特徴。だから縫い合わせた時に淵に存在する赤耳が残っているのである。

生地に型紙を置いて裁断する。この方法は試作ジーンズを作るときに限り、量産品は型紙に合わせた生地を重ねて、機械で一気に裁断する。

これが実際に裁断機でカットされた生地である。しっかり赤耳が残った状態が確認できるだろう。狂いが少ない裁断技術にもノウハウがあるという。

10そしていよいよジーンズを縫っていく。縫い糸もハードで太い0番から20番を使用。ミシンは、当然頑丈な古い機械を多く使う。

11ポケットを縫う際にも、その折り方や縫い方にも拘りを持つ。アメリカのビンテージジーンズから学んだ方法。やはりそれが最も頑丈だという。

12ほとんど仕上がって、後はパッチを装着するだけの状態。すべてが手作業でフィニッシュされるジーンズは、こうして生み出されていくのだ。

13革製のパッチを、最後に縫い付けて完成。

14倉敷市の児島町にあるアイアンハートの児島ブランチ。小さな規模のショップだが、扱うデニムはすべてヘビー。現地で生産販売されているのだ。

15品揃えはそれほど豊富ではないが、定番のジーンズは各サイズ確保されている。児島は日本ジーンズ発祥の地。ジーンズストリートの入り口にこのお店はあるのだ。

1621オンス、セルビッチデニム・ストレート634S 24000円(税抜き)

1725オンス、セルビッチデニム・ストレート634-XHS 30000円(税抜き)

1819オンス、左綾セルビッチデニム・ストレート634S-19L 22000円(税抜き)

19エンジニア、ペインターパンツ810 18000円(税抜き)

20ヘリンボーン、ダブルニーロガージーンズ803 16800円(税抜き)

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SHOP INFORMATION

商品を拡散させずに
直販というスタイルにこだわる

アイアンハートの本社は東京都八王子にある。大きな倉庫のような建物の中には、ラインナップされているデニムがぎっしり。ここから発送され、小売ももちろん行う。様々なショップに商品を卸さないのは、信念を同じくする同胞を守るため。中間マージンを無くして、できるだけリーズナブルに商品を届けるためでもある。こだわり抜いた商品を、その価値を理解するユーザーに直接販売する。それがアイアンハートのポリシーだ。

IRON HEART THE WORKS

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電話/042-696-3470
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