オフセットされた6インチライザーにナロードラッグバー、ストックのミッドコントロールにオリジナルソロシートというポジションは驚くほどにタイトなものだ。マシンをまるで手足のように操れる。カスタムには不向きだと敬遠されがちなラバーマウン・スポーツスター。しかしTRAMPの手にかかれば、そんなネガな要素は微塵も感じられない。メガホンタイプのデュアルエキゾーストから吐き出されるレーサーライクな排気音に耳を傾け、大阪の中心地を駆け抜ける。ストックモーターに足周りのモディファイ。それにともなう軽量化。チューニングというレベルではないが、操作する喜びに満ちたオートバイの本質を見極めたカスタム。これが素直な感想だ。
エクステリアのポイントはSS 3.25ガロンをナロードしたフューエルタンク。そのタンクに合わせて、リアにオリジナルのライトフェンダー&スパルトテールをセット。フロントには同じくオリジナルショートフェンダーを装着している。ヘッドライトは定番の4.5インチではなく、ひと回り大きな5.5インチをチョイス。オフセットしたマウント位置にこだわり、ほどよい凝縮感を演出している。このバランス感覚がTRAMP長岡守のビルダーとしての持ち味だ。
そしてこのペイントワーク。ブラックベースにアイボリーラインをトレースし、そのアイボリーを赤のピンラインで挟み込み、ピンクのように表現。トップコートは通常の約3倍ほど吹き付けられ、グロッシーな光沢を放つ。ペイント作業はすべて自社ブースにて行い、納得のいくまで何度でも塗り直すという徹底したこだわりを貫いている。
長岡守はこのマシンを指して、ライトカスタムだとさらりと言う。しかしその陰には、様々なアプローチからの失敗や、そこから得た多くのノウハウが詰め込まれている。経験に裏打ちされたライトカスタムは、もはやライトではない。