ハーレーの各ファミリーの中でも、V-RODファミリーはスタイルや機構部分で、他とは違うキャラクターを持っています。ビックツインでもスポーツスターでもない、まったく新しいジャンルのファミリーだとお考えください。それではまず、V-RODに興味を持たれた方に向けて「V-RODは他のモデルとどう違うの?」という部分をご説明いたしましょう。
まず、V-RODの最大の特徴はハーレー初の「水冷DOHCエンジン」ということです。水冷であるものの非常にコンパクトなエンジンで、ラジエーターもデザインの一つとして見えてしまいます。デザイン的にほとんど違和感がないため「水冷であること」をあまり意識することはありませんが、暑い夏の日に試乗していただければ「水冷」と「空冷」の違いはよくわかるでしょう。暑い季節にV-ROD以外のハーレーに乗ると、足元からエンジンの熱気が昇ってきます。それがV-RODにはありません。他のモデルを試乗したあとにV-RODに乗ってみると、涼しさすら感じることができるでしょう。
他の特徴としては「他のモデルにはない加速感」があります。V-RODはドコドコとした乗り味が特徴の「ロングストローク」エンジンではなく「ショートストローク」エンジンが採用されています。「ショートストローク」と難しく言うとわかりにくいですね。ただ、試乗していただければ「ああ、これがショートストロークか」というのはすぐにわかっていただけるでしょう。高回転までスムーズに吹けあがり、どこまでも加速していくこの感覚が「ショートストローク」です。他のファミリーにはない楽しさが詰まっているエンジンというわけです。その他の特徴を挙げると、以下のようなものがあります。
簡単にご紹介しましたが、V-RODはハーレーの中でも非常にキャラクターが立ったモデル。デザインの良さに惹かれ、それまでハーレーに興味がなかった方から問い合わせが多いのも特徴的です。
かつてはVRSCA、VRSCB、VRSCR、VRSCAW、VRSCDなどがありましたが、現在V-RODファミリーにはVRSCDXと2009年に登場したVRSCFという2種類のラインナップとなっています。2007年モデルではタンク容量の増加と、リアタイヤが大幅に太くなったモデルの登場に驚かされましたが、2008年モデルではさらに大きな進化を遂げています。タイヤサイズなどは2007年モデルのままですが、排気量が1131ccから1246ccにボアアップされました。
従来のエンジンのボアが5mm広がり、よりショートストロークなエンジンとなっています。2007年モデルまでのエンジンより、さらにハイパワーな走りを体感できることでしょう。他にもV-ROD以外ではABSや、急なシフトダウン時のリアタイヤのロックを防止するスリッパークラッチの採用など、パワーが上がっただけではなく車両を制御する機能も充実させています。
では次に2007年モデルから登場した240mmリアタイヤ(VRSCDXとVRSCAWに採用)とVRSCDの180mmタイヤの違いについてお話します。タイヤ幅の太さから走行性を心配する方がいらっしゃるかもしれませんが、そこはご安心ください。以前、当社のデモカーに240mmキットを装着して西日本中を走り回ったことがありますが、違和感はまったくありませんでした。180mm同様のスムーズ&快適なフィーリングは健在ですし、コーナーリング時にトラクションをかけ続ける楽しみも倍増しています。
また、2007年モデル以降の240mmタイヤはオフセットされることなく、車体の中央に配置されていますので(2006年以前のモデルに対応した240mmキットも同様です)クセのある挙動も一切ありません。試乗してみると、その非常に安定した操作性に驚かれることでしょう。ただ、ワイドタイヤは路面の凹凸の影響をどうしても受けやすいので、その点は注意が必要です。
例えば、道路に引かれたラインの段差やワダチあるいは路肩の境界など、走行中不意に車体がどちらかにふられる現象が細いタイヤと比べると発生しやすくなります。安全運転を心がけていれば気にするレベルではありませんが、高速道路でのレーンチェンジは少し慎重になりましょう。
21世紀にハーレーから発表されたV-ROD。この先100年のハーレーの舵取りをするモデルの一つなのでしょう。「変わらないハーレーらしさ」が人気のツインカムエンジンも素晴らしいですが、ポルシェと共同開発で作られた新しいハーレーであるV-ROD。どちらも核となっている「ハーレーらしさ」には変わりはありません。ぜひ、一度跨ってエンジンに灯を入れ、走ってみてください。造り手の気持ちが伝わってくると思います。デザイン的な評価をよく耳にするモデルですが、そこはやはりハーレー。当然ながら「乗って楽しいモデル」です。