1999年にデビューした「ツインカム88(1450cc)」以前のハーレー(エボ、ショベルなど)はエンジン内部のバルブを動かす「カムシャフト」が1本しかありませんでした。ツインカム88エンジンはこのカムシャフトをフロント側、リア側に独立した2本とし、なおかつ従来のエボリューションエンジンの80キュービックインチ(1340CC)から88キュービックインチ(1450CC)にボアアップされ、従来より高性能で信頼性の高いエンジンに生まれ変わりました。
カムシャフトが2本になった(=ツインカム)ことと排気量が88キュービックインチになったことから「ツインカム88」エンジン(以下、TC88)と呼ばれています。TC88は製品としてのクオリティの高さと、1999年式以降の高年式モデルであることから、最も信頼性が高いハーレーと言えます。
エボ以前の車両と違い、個体差が少ないモデルですから、他の国産オートバイと同様に年式や、その他のデータに準じた条件で選ぶ事ができます。さらに2007年にデビューしたツインカム96(1584cc)から2011年にはツインカム103(1689cc)がツーリングファミリーの4モデルに搭載。2014年にはツインクールドツインカム103(1689cc)が、そして2016年にはCVOにのみ搭載されていたスクリーミンイーグルツインカム110(1801cc)がSシリーズに採用されました。それでは、以下で中古車のメインとなる「TC88」をサンプルに購入時の注意点をご紹介いたします。
ツインカム88エンジンの特徴として、排気量が上がったことにより従来より力強く、スムースにまわるエンジンになったこと、ソフテイル以外はエンジンがラバーマウント化されたため「ハーレーらしい鼓動」はそのままに「不快な振動」が大いに軽減されたことが挙げられます。なおソフテイルファミリーのエンジンには他のファミリーには採用されていない「カウンターバランサー」が採用され、快適性が高められています。このソフテイルファミリーに搭載されているエンジンは「ツインカム88B」と呼ばれています。
TC88の車両を購入の際にはモデルによって「キャブレター仕様」と「インジェクション仕様」を選択することが可能です。「インジェクション」とはコンピューター制御の燃料噴射装置のことです。エンジンの回転数に合わせエンジン内部に送る混合ガスの量を調節するので「キャブレター仕様」のモデルより燃費がよく、始動性もいいモデルです。ただ、「インジェクション仕様」のモデルは自分でのセッティングの変更などの調節が難しいので、購入前にどちらのモデルがいいのか、じっくりと検討しましょう。
中古車で購入する場合、TC88の品質の高さゆえに、オーバーホールの有無など、さほど詳細まで気にする必要はありません。中古の自動車の選び方(事故の有無、タイヤの溝はあるのか等の確認)で大丈夫でしょう。年式、走行距離、価格が予算相応かどうかを検討なさってください。ただし、年式によってブレーキ等の装備グレードが変わっている場合もありますので注意してください。
あと中古車の購入の際に問題となるのがカスタム車両です。確かにカスタム車には高価なパーツがついていて、お得な車両があります。一方、ノーマル車には一から自分色に染めていく楽しみもあります。いずれを選ぶことも問題ありませんが、ノーマルパーツの有無は必ずチェックされることをオススメいたします。
それにしても今は程度が良く、走行が少ないTC88モデルが日本の市場には溢れています。TC88エンジンの魅力のひとつは、歴代のH-Dの中で最もハイパフォーマンスなエンジンだということが挙げられます。しかも、エンジンのボアアップ(排気量アップ)など数多くのチューンナップキットもラインナップされており、購入後のさらなるハイパフォーマンス化も可能です。
もちろん外装などでも純正や社外パーツが豊富に手に入ります。自分がハーレーに求める要素をしっかり相手に伝えた上で、説明に納得がいけば、TC88は今、買い手市場です。とてもいい買い物が出来るのではないでしょうか。
改造車の場合、2001年製造(H13年4月以降)のモデルは排ガス成分の検査があります。マフラー、キャブレター交換されている車両はその後の車検をどうすればいいか、よくお店の人に確認してからご購入してください。購入後の吸排気カスタムを検討されている方は、この排気ガス規制についても注意された方がいいでしょう。