スポーツスターの始祖モデルKとともに生み出されたサイドバルブエンジンのレーシングマシン、KRTT。大柄なタンクに分厚いサドルシートを持ちつつも、軽量化を狙った無駄のないディテールの数々は、1950年代レーシングモデルの代表格。
そんな独特のスタイルを現行ラバーマウント スポーツスターに取り入れようと、希少なKRTTを持つ大阪のトランプサイクルがカスタムプロジェクトを立ち上げた。それも、誰もが実現できるボルトオンカスタム用キット開発を前提とする前代未聞の内容で、だ。試行錯誤の末に完成した一台を前に、トランプ代表の長岡 守氏は語る。
「今はちっちゃいタンクにちっちゃいシートが流行りやけど、絶妙に鈍臭いKRTTのスタイルは今のスポーツスターに似合うと前々から思っていました。50’s ハーレーレーサーはみんなあの形やし、そんなKRTTやからこそストリートの匂いを感じるんです」
オリジナルのKRTTと現スポーツスターとを見比べると、大柄なエンジンにフレーム、そして突き出たサイドカバーと、骨格そのものの違いが残酷なまでに浮き彫りとなる。“無駄を削ぎ落とす”というカスタムの概念に則り、XL1200X フォーティーエイトやXL1200V セブンティーツーに見られるコンパクトなスタイルが主流となりつつある今、あえてマッシブなパーツを取り入れたところに、新境地を見出そうとするトランプの野望が垣間見える。それも、100年以上におよぶハーレーダビッドソンの歴史に対するリスペクトの気持ちがあればこそ、だ。
鈍重そうに見えるKRTTスタイルのこの一台だが、オートバイとして不可欠なライディング性能もしっかり追求している。トランプの代名詞たるフルチタンマフラーをはじめ、サンダンス製トラックテックホイール(F19/R18)にライトスプロケットなど、軽量パーツを取り入れてバランスよくシェイプ。「やっぱりバイクはヒラヒラと走れないと」という長岡氏の持論なくして、この完成度たりえなかっただろう。
「そのままディーラーのショールームに展示しても、ノーマルモデルとして見られるような一台にしたかった。まだまだ進化の余地はありますが、トランプからの新しい提案として面白いスポーツスターができたと思っています」
タンクにサドルシート、前後フェンダーなど、すべてオリジナルのボルトオンパーツとして販売していくそう。誰もが手に入れられる新しいスポーツスター カスタムスタイル、新しいストリートシーンの象徴となりえるか、期待に胸が膨らむ。