スポーツスターの中で、もっとも男性的でダークなイメージを持っているXL883N アイアン。ブラックデニム塗装が施されたエンジンやホイールなど、ゴージャス路線のハーレーとはまったくイメージを異にする独特の世界観を支持するファンが多いモデルでもある。今や、本来不変のトラディショナルホイールサイズだった前輪19インチ・後輪16インチという組み合わせは、このアイアンと兄弟車であるXL883Rしか残されていない。言い変えれば、アイアンこそ、元々あったベーシックスポーツスターの本流を逸脱しないモデルであるかもしれないのだ。
スポーツスターは、カスタムにおいて変幻自在。旧タイプではそんな車種だったことを、ハーレーダビッドソン シティ中野の松本 泰輔店長は現在も実践している貴重な人物ではないだろうか。アメリカンスポーツのイメージ。クルマで言えばACコブラやダッジチャレンジャーなど、独特のスポーツ性を持った乗り物がアメリカにはあった。そんなイメージで作られたのがこのカスタムアイアンのような気がする。
左右をへこませ、シェイプされたガソリンタンクを抱えるようにライディングする。セパレートハンドルを握りしめて都会を駆け抜ける姿は、まさにアメリカンスポーツそのものだ。近年のマッスルカーとはまた違う、クラシカルなアメリカンスポーツ。そんなイメージを現代のスポーツスターで作り上げるには、このアイアンをベースにするしか方法がないのかもしれない。
唯一クロームの輝きを放っていたマフラーさえも艶消しのブラックに塗ってしまうセンス。ハーレーダビッドソン シティ中野は、都会的遊び心にあふれているのである。