広島にあるカスタムショップ「モミアゲスピード」。このショップが作るモディファイドハーレーは、どことなくユーモラスで人間的だ。そして、躍動感あるシルエットが特徴である。お店を運営する関口兄弟が考える“オートバイとしての楽しさ”とは、まず一般道で使いやすい速さを持っていて、いつでも気構えなく乗れること。ここに紹介するライトなイメージのボバーカスタムも、そんな1台と言える。
ガソリンタンクの左サイドに大きく描かれるのは、モミアゲハンサム 11 号の証だ。今や死語かもしれぬ「ハンサム」の称号は、モミアゲスピードが作る軽快な運動性とスピード感が備わったモデルだけに与えられるもので、その 11 台目ということである。店名にもあるモミアゲは、ビルダー関口友孝さんのトレードマークでもある。モミアゲハンサムという名前そのものに、このお店の遊び心とセンスを感じる部分でもあるのだ。
さて、モミアゲハンサム 11 号のオーナーはまだ若いライダーで、今までのバイク歴がモンキーとヤマハ ビラーゴという。そこで、街での徹底的な乗りやすさを軽快なフォルムに表現するため、装備の軽量化とシンプルな配色にこだわったスタイリングとなった。
ガソリンタンクはエンジンのVバンクの間に収まってしまうようなエッグタイプで、1980年代の純正そら豆シートをモチーフとしたワンオフシートもかなりの小型。フラットフェンダーも極限まで切り詰めてタイヤ&ホイールの存在感を強調させたシルエットになっている。全体の大きさは、シングルのロードスポーツをモディファイしたかのようなボリュームとなって、実にコンパクトである。
エンジンはアンドリュースのカムとサンダンス製 FCR を組み合わせたライトチューニング。車体のシルエットだけでなく、心臓部にも手を加えてスポーツ性を上げることこそ、モミアゲハンサムのコンセプトなのだ。合わせて、ベルト駆動だった二次減速はチェーン化されて、ダイレクト感の強い走行フィーリングを生み出している。
乗り味は、「速い!」と思わず口に出る。リジットマウント時代のスポーツスターベースだからこそ、作り上げられるシンプルなモデル。メッキパーツをほとんど使わず、マッドブラックな車体に小さな赤いガソリンタンクという独特なセンスは、「モミアゲハンサム」の名にふさわしい1台と言えよう。