何台もの XR1200 カスタムを手掛け、オリジナルパーツも揃える神奈川の PLAIN。代表の三浦氏は自分の通勤の足としてご覧のカスタム XR を乗り回し、パーツ交換の効果を自ら体感し楽しんでいる。最近でこそ扱うカスタムはビッグツイン系が多いが、実はスポーツスターをベースに走りに振ったハードなチューニングも得意で、お客の XR の中には相当に手を加えたものもある。
そんなショップの店主が楽しんでいる愛車だから、いやが上にも期待は膨らむ。「お客さんの車両に比べたら大してい
じってないよ」と三浦氏は謙遜をするが、換えているパーツ、換えていないパーツの理由を細かに聞いていくと、必ず何かしらの明確な答えがすぐに返ってくる。車両やパーツについて何度も考え、頭にインプットされている証拠だ。例えば、ハーレーへの組み合わせとしては珍しいテルミニョーニのスリップオンについて尋ねると、性能曲線的に途中で谷間が出ず乗りやすい特性であること、音量も程々で爆音ではないから市街地でも気にならないこと、またイギリスで開催されている XR1200 のワンメイクレースで多用されていることから、組み合わせとしても違和感は少ない等々、様々な角度から吟味されていることがわかる。
そんな車両をお借りし出かけた試乗先は、箱根~伊豆のワインディング。こんな仕様なら過不足なく、丁度いい変更具合だと思うんだよなあ……と試乗前に聞いていたとおり、プレインの XR1200 はストレスなく回るエンジンとレスポンスのいい車体で、右に左に気持ちよくコーナーをいなしていく。ストックの XR1200 はフロントに倒立フォークを装備するものの調整機能はなく、XR1200X に比べ車体姿勢もどちらかと言うとツーリング向けといっていい穏やかなものだった。いっぽうでプレインの XR1200 は、前後にオーリンズを装備しホイールも交換済み。エンジンはストックだが吸排気に合わせコンピューターも変更と、性能に大きな影響を及ぼすポイントにはしっかりと手が入る。なんとも贅沢な通勤仕様だ。
乗っているうちに気がついたのは、テルミニョーニが意外なほど静かなこと。ストックに対し、確かに抜けのいい音になっているが、ジェントルと言ってもいいくらいに音量を抑えており、乾いた音質で耳に優しい。加えてパワーの出かたがとてもフラットで、唐突な落ち込みや急激なパワーの立ち上がりは感じなかった。この扱いやすさは、スポーツする上では大きな武器になる。そしてストックでもっとも気になっていた中~高回転の落ち込みも、しっかり改善。4000rpm を超えた辺りから薄れるパワーの乗りが、この XR ではそのままパワーを上乗せしていき、レブリミットまで落ち込むことなく車体を力強く前に押し出していく。ストックの出足のよさを、そのまま途切れさせることなく高回転までつなげていく印象である。
車体はハンドリングの軽さが際立っていた。低速から高速に至るまで反応が軽く、ちょっとした入力で向き変えを開始する。乗り始めは少し軽すぎると思ったが、タイヤのグリップが高く接地感が薄れることはなかったので、結構いいペースで走れてしまった。ハイペース時はややリア下がりの印象があったので、もう少しリアの車高を上げてもいいかもしれない。それ以上に、立ち上がりでラインを自由に選べるハンドリングが面白く、車体を寝かせる角度も徐々に深くなっていく。スタンダードのストレスを削ぎ落とし、バランスを取り直した街乗り仕様は、攻め込む走りもできる懐深さを持っていた。
車両を戻しに行くなり開口一番感想を聞く三浦氏。普段自分で乗り回しているからこそ、他人の評価が気になった様子。確かに、試乗した XR はストックの不満点をひとつずつ削ぎ落としたようなまとまりだった。
「どうだった? これなら不満はないと思うんだけど。街乗りで交差点を曲がるときとか、軽く動いてくれるから普段使いもラクでしょ。いくらスポーツ性を求めても、普通に気遣いなく走れないと意味ないからね。あと気持ちよく乗るには、エンジンフィーリングも大切。だから、ノーマルで気になるところ、中高回転の伸びは必要だと思ったんだ。テルミニョーニがいい仕事をしていてさ、性能曲線を見ても目立つ谷間はなくて、つながりがすごくスムーズ。さすが、ヨーロッパで長い間認められてきたメーカーだけのことはある。シートカウルもそうだけど、アンダーカウルとかサーキットに必要な道具もウチで揃えてあるから、みんなもっとガンガン走ってほしいよね」