神戸市西区に店を構えて2年目に突入するルードロッド。ご覧のマシンはニューオーダーに出展された同店の最新作で2009年式、すなわちラバーマウントフレームが採用されたXL883Rがベースマシンとして選択されている。ソリッドマウントエンジンのスポーツスターに比べるとひとまわり大柄な車体ゆえに、カスタムのベースとしては敬遠されがちな高年式のXLモデルだが、ルードロッドを率いるカスタムビルダー榊和道は臆することなくラバーマウントフレームに挑んだ。
実は昨年、彼はソリッドマウントのXLをベースに、フレームまで手を入れた意欲作をニューオーダーに出展している。同じXLのカスタムなら次はラバーマウント。ネクストステージへの挑戦である。
「ソリッドマウントエンジンのEVOスポーツに比べると、高年式のラバーマウントモデルのカスタムってまだまだ少ないと思っていたし、今回は可能な限り手数を減らしコストを抑えるのもコンセプトだった。フレームには一切手を入れず元来の走行性能を活かして、どこまでスタイリッシュに仕上げられるのか。それに挑戦したのがこのバイクです」
榊はストック車両を入念に観察し、車体に取り付けられているパーツやそのマウント方法に注目した。フレームに手を入れずとも、外装をコンパクトに仕上げてステップやマフラーなどパーツのマウント方法を見直せば、タイトに仕上げられるという目算をはじき出した。
「例えばステップひとつとってもストックは外へ飛び出し過ぎている。操作に支障のない範囲で車体側にオフセットすることで随分すっきり見えます。今回は車体に付く全パーツをそんな観点で見直しました」
リアエンドのリジッドバーと薄いシートからなるローアングルの着座位置。肩幅程度のハンドルバーもタイトなポジションを助長する。スロットルを数回あおりガソリンを送ってセルボタンをワンプッシュ。ラバーマウントされた4カムユニットがフレームの内側で「ブルブル」と身震いしながらアイドルを始めた。サンダーヘッダーが奏でる排気音はかなりの威勢だ。スロットルを開けクラッチをミートすると同時に後方から「ドン」と押し出されるように発進。リジッド化されたリアエンドゆえに乗り心地はかなりハードだが、スロットルと後輪が直結しているかのようなダイレクトなレスポンスはリジッドならではのワイルドな乗り味だ。
高速に乗り入れて流れに乗り、追い越し車線へ。「883㏄の排気量には少々トゥーマッチでは?」と想像していたS&SのEキャブだったが、入念なジェティングのたまものだろう、神経質なスロットルワークを強いられる事なく大口径の米国産キャブレターらしいワイルドなライドフィールが堪能できた。車体もひとまわりコンパクトになっているので、ストリートでは必要にして十分なポテンシャルだといえる。リアエンドがリジッドゆえに乗り味は正直ハードだが、そんなネガを帳消しにするスマートなフォルムとダイレクトなライドフィールがこのマシンの醍醐味だ。
「日常の作業は修理が大半だしカスタムもパーツ交換やライトなものがほとんどです。でも密かに暖めている自分自身のプロジェクトがあって、営業時間外にコツコツと進めているのですが終わりは全く見えません(笑)」
関西圏で高年式のハーレーに乗るアナタには、ぜひ覚えておいて欲しい新進気鋭のハーレーショップである。