「ウチでは10年前からやっている定番の形。このブリティッシュ・ダートレーサー風のスタイルが一番飽きが来ない。今回はラバーマウントのスポーツスターでカスタムしたことに意義があるかな」
暇さえあれば“走り”に出掛け、そこから得た経験をカスタムにフィードバックするブラットスタイル代表の高嶺剛。全国のカスタムショップを見渡してみても彼ほど走るビルダーも稀だ。仕事柄も多分にあるが何よりも“好き”というシンプルな動機に拠る所が大きい。
ブラットのオハコとも言えるフォルムに仕上げた2004年式XL883は、言わばライトカスタム。特別なことは何もしていないが全ての「帳尻」が絶妙なサジ加減で合わせられている。
まずノーマルタンクは幅を詰めトンネル部を加工してローマウント。シートレールもカットされ、ループパイプを溶接してスムージング。フロントフェンダーはタイヤとのクリアランスを詰めるため、マウント位置を下げて装着された。ベルトからチェーンへ換装した二次駆動にも注目したい。チェーン化で広がったベルトガードとのスペースは、ステー長をカットすることで対応している。これらパッと見では気付かない箇所の「帳尻」が天性の感覚で成されている。
走りに関してはタンクからシート、リアフェンダーへと続く流れに配慮することで乗りやすさを向上。これは高嶺が培った独自のセオリーでもある。リアはストック長ながらフロントを2インチローダウンし、オリジナルハンドルを装着。ポジションは体のどこにも無理がないご覧のフォームだ。そしてエンジンはストックで、唯一CVキャブのジェット番手を上げ吸排気を変更した程度。必要以上のパフォーマンスは求めない。それは彼自身が走るビルダーだからこそ到達した、経験に基づく持論でもある。これら「走り」と「スタイル」をバランスさせたラバーマウントのライトカスタムにも、ブラットスタイルのアプローチが光る。