キリスト教において、神に背き天界を追われたその天使は、神に対抗する存在の堕天使、即ち悪魔とされた。
Lucifer
その語源を紐解くと、その実キリスト生誕以前まで遡ることになる。いにしえのラテン語において、ルシファーとは「光りを帯びしもの」と同義。
そんな意味深な名前が冠されたカスタムである。複雑なシートメタルを踏まえ、剣のように研ぎ澄まされたエクステリアは潔くブラックアウトされるが、その黒色の表情も一筋縄ではない。見る角度、光りの加減によりその表情は豹変する。
「ソリッドブラックで塗装してクリアを吹く。マットな部分はその上にさらにマスキングして艶消しクリアを吹いた。黒のみで無機質と有機的な表情を両立させたかったんです。このスポーツスターはルシファーというイメージありきのプロジェクト。ペイントだけではなくトータルで“表裏一体”というコンセプトを表現しています」
実車を目前にし感じたその雰囲気はまさに「妖艶」。カスタムビルダー岡本氏からマシンを譲り受け、テストランに望む。プッシュボタン一発で目覚めたEFIモーターのアイドルが落ち着くのを待ちファーストギアへ。
リアのショートショック、そしてオリジナルのトリプルツリーによりストックよりも3度寝かされたフロントエンドによりロワード。さらにフロント21インチ×リア18インチというセットアップである。ストックから大幅に変更されたディメンションにもかかわらず、走行時のネガなクセや挙動はない。むしろストックよりキビキビと走る感すらあり、ストッロルを全開にしたい衝動を押さえるのに苦労した。入念な足周りのセッティングもこのマシンの秘めたる特性と言える。
光りを帯びしもの
乗り手が理性を失った瞬間、ルシファーは本性を表すのかもしれない。