ファーイースト・チョッパーズ。このカスタムショップに興味を持ったキッカケは、数年前のクールブレイカー撮影時だった。ロングフォークでありながら、そのどれもが軽快な取り回し。出展ブースから簡易撮影スタジオまでの押し引きでハンドルが切れ込むことはなく、またその挙動に不安を感じることはなかった。
EVOベースのロングフォーク。マシンから放たれる危ういスタイリング以上に、当時感じた印象を体感したいと思い取材を申し込んだ。16インチオーバーの93EVOは、ビルダー石津正朗ならではのセオリーが踏襲される。スムーズなハンドリング。これは石津が試行錯誤の上に導き出した「12センチ」というトレール量の恩恵によるもの。車体の背骨とも言えるフレーム・メインチューブに選択したクロモリ鋼の435材も然り。
「強度とネバりのあるクロモリとスチールを組み合わせることで、金属原子の炭素の流動が防げる。結果、耐久性と走行性能を両立したフレームになる」
見かけとは裏腹、ポジションは思いのほかコンパクトだ。ハンドル/フットコントロールの位置は身長169センチのボクでも写真の通り余裕がある。ハンドルの切れ角がもう少しあればUターンもイージーだろうが、それは欲張りすぎか。
前後ブレーキの制動力も秀逸。ドゥカティにも装備される伊国製レーシングブレーキの雄グリメカは、パフォーマンスパーツならではのタッチと制動力を実現する。ロングフォークの場合、フォークやフレームにも負担の掛かる高性能の制動装置は敬遠されるものだが、石津は骨格の剛性に絶対の自信を持つがゆえ、迷いなくグリメカを選択する。
「走行性能」と「長さ」。相反する要素を独自のセオリーで兼備させたカスタムバイクである。